グラフィットが特定原付『NFR-01』の販売を開始…特定原付ならではの課題と対策
レスポンス / 2024年3月18日 11時30分
電動パーソナルモビリティの開発から販売までをワンストップで手掛けるグラフィットは、特定小型原動機付自転車(以下:特定原付)の電動サイクル『NFR-01Pro』を発売。クラウドファンディング「Makuake(マクアケ)」で3月14日より先行予約販売を開始した。
◆16歳以上なら免許なしでも乗れる特定原付に対応
NFR-01Proは、昨年7月1日の道交法改正によりできた新車両区分「特定原付」に適合した新たな乗り物で、このタイプで多く見かける立ち乗りする電動キックボードではなく、自転車のように着座して乗車する方式を採用した。16歳以上であれば免許がなくても乗車できるため、幅広い世代での需要が見込まれる。特にNFR-01Proは着座して使うため、免許返納したシニア世代でも安心して乗れる新たなモビリティとしても見逃せない。
この特定原付は最高速度が20km/hで、車道以外に自転車道での走行が可能。NFR-01Proではハンドルの右側にあるアクセルスロットルを回すだけで走り出し、ブレーキは自転車と同じ操作方法で前後のディスクブレーキが作動する仕組みとなっている。走行時はグリーンのランプが前後で常時点灯。左右にペダルが用意されているが、これはあくまで足載せ用として用意されたもので、漕いで加速することはできない。
また、特定原付ならではの制度として用意されたのが条件付きでの歩道走行だ。これは自転車が走行可能な歩道を走行できるというものだが、ここでは一旦停止した上で走行モードを歩道走行モードに切り替えることが必要だ。このモードに切り替えると前後のグリーンランプは点滅を開始し、最高速度は自動的に6km/hに抑えられる。NFR-01Proでは、ハンドル上にあるメータ横のスイッチで簡単に切り替えられるようになっていた。
電動サイクルで見落としがちなのが、急坂での登坂性能だ。グラフィットではこの不安を解消するために、電動バイク「GFR-01」で電動アシスト自転車のようなペダルで漕ぐ機能を設けていた。しかし、特定原付では最高速度の上限が20km/hと抑えられているため、ペダルでそれ以上まで加速することはできない。つまり、状況によっては登坂に必要なトルクが不足する可能性があったのだ。
◆パワフルなトルク特性により急坂でも十分な走りを発揮
そこでグラフィットではNFR-01Proの開発にあたり、この速度域でも十分なトルクが発生できるようモーターの出力特性を検証。オリジナル設計の高性能BMS(バッテリーマネジメントシステム)を搭載した48Vのバッテリーと、速度域20km/hに最適チューニングした低中速域高トルク型、定格出力500Wのインホイルモーターを採用し、ペダルレスでも力強い走行を実現することに成功した。その様子はマクアケのホームページでも見ることができる。
NFR-01Proは使い勝手でも様々な工夫が凝らされている。まずバッテリー充電は車体に装着したままと、パックを取り外して直接充電できる2ウェイ方式を採用。自宅の100Vコンセントが使えるため、特別なコンセントを用意する必要もない。
一方で、ペダルがないだけにバッテリーがなくなればそこで終わってしまう。そこでNFR-01Proは航続距離にもこだわり、1回の充電で40km(あくまでサーキットの平坦路での数値)の航続距離を実現。自転車としては少し遠い距離でも十分な移動距離が確保しているという。
ハンドル部分は折りたたみ式となっているため、車体を壁側ギリギリまで寄せて保管できるのもメリットだ。全長1300mmと軽自動車の車幅に収まるサイズとなっていることもあり、たとえば軽自動車のラゲッジに収納することも可能。リアシートをたためば2台を収納することもできるという。エレベーターへ持ち込む際もエレベーターが6人乗りならばそのまま積載できるため、自宅への持込もストレスなくできそうだ。
また、スマートロック機能にも対応したことで、専用のICタグまたはSuicaのNFCを使って車両のロックを解錠することができる。このアプリを使うことでNFR-01Proを仲間同士で共有することも可能だ。さらにロックを解錠すれば同時に電源が連動するのも使い勝手を考慮してのことだ。
◆ユーザーが年齢確認やナンバー登録などが自然にできる独自アプリを開発
そして、特筆すべきが愛車の遠隔管理システムへの対応だ。このシステムは4G LTEによりバッテリー残量や車両の位置情報、さらにはアプリでの鍵の解錠も可能となるものだ。しかし、この車両を利用するにあたって何よりも重要なのは、特定原付の販売ガイドラインとしてユーザーが年齢確認やナンバー登録、自賠責保険加入を遵守することにある。
とはいえ、車両を受け取ってこれを実行するかどうかはユーザーに委ねられているのが現状だ。そこでグラフィットとしてはここに遠隔管理システムを活用し、半ば強制的にユーザーが販売ガイドラインを遵守するよう仕向ける「glafit Ride Start System」を運用することとした。
具体的には、専用アプリでアカウント登録を行い、そのアプリ上で年齢確認やナンバー登録、自賠責保険加入の登録がなされない限り車両の電源が入らないようにした。その中にはシェアリングでも運用されている、交通ルールテストも含まれる。これにより、車両を運航する上での事前準備や、たとえ免許を持たない16歳以上でも、最低限の交通ルールを認識させることができるというわけだ。これは日本初の取り組みになるという。
この運用についてグラフィットの 鳴海禎造 代表取締役CEOは、「弊社では原付一種であるGFR-01の頃より、たとえ車両代金が支払われても、車両を引き渡す条件としてナンバー登録や自賠責加入を求めていた。これが一部ユーザーからは不満の声として上がっていたのは事実だし、店舗にとってもユーザーの対応待ちとなる間、車両を保管する必要があった。今回の対応はその解決を図ることができる画期的システムとなる」とした。
◆「将来は3輪構造の特定原付の開発も視野」鳴海CEO
とはいえ、懸念されることもある。それは歩道走行モードへ切り替えた際は最高速度が6km/hに抑えられるため、走行が不安定になりがちになるということだ。そこでグラフィットとしては幅広い世代に安心して利用してもらえるよう、3輪構造の特定原付の開発も視野に入れているという。まだ構想段階ではあるが鳴海CEOによれば「できるだけ実現できるよう努めたい」とした。
なお、NFR-01Proの先行予約状況は好調のようで、3月14日午前8時より先行予約を開始して以降、この発表を行った3月15日の時点で当面の目標となっていた1000万円を突破。その後も順調に積み上がっているという。グラフィットによれば、先行予約した方に対しては、早ければ今年5月頃からデリバリーがスタートできそうだという。
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