空力とエンジン性能を高める“穴”の真相~カスタムHOW TO~
レスポンス / 2024年4月23日 6時30分
ノーマルの状態でもボンネットに穴が開けられているクルマがある。とくに高性能スポーツカーには多い。チューニングカーではFRPやカーボン製ボンネットにする際に穴が開けられているボンネットにすることも多い。
そもそもダクト付きボンネットとひとくくりにしても実はいくつかの狙いがあるのだ。
1:前向きダクトで空気を取り込む
SUBARU WRX STIやS4のような進行方向にダクトが向いているパターン。これは走行風を取り込むのが狙いでWRXの場合、ダクトの直下にインタークーラーが置かれている。そこでインタークーラーを直接冷やしているのだ。
通常インタークーラーはラジエーターなどの手前に置かれることが多い。しかし、これにはデメリットもある。
まずは、インタークーラーで温められた空気がエアコンのコンデンサーを冷やし、それからラジエーターを冷やすので、ラジエーターなどの冷却効率が良くない。また、エンジンからインタークーラーが遠いので、アクセルレスポンスが悪化する可能性がある。
そこでエンジンの真上にインタークーラーを置いて、そこにダイレクトに走行風を当てているのだ。インタークーラーを抜けた空気はセンタートンネル付近から排出されるので、フロアの空力的にはあまり好ましくないが。
2:エンジンルームの熱気を抜く
アフターパーツのボンネットに多いのがエンジンルームの温度を下げようと、エンジンルームの内の空気を後方に抜くレイアウトのもの。
水温や油温が上がりやすい車種では定番のダクトだ。だが気をつけたいのはその空気の流れ道。ボンネットに穴が開いていれば空気は抜けてくれそうだが、意外とボンネットの上の空気は渦を巻いていて場所によってはそこから走行風が入ってきてしまう。
前方から入った空気とダクトから入った空気が押し合って、結局エンジンルームの中に熱気が滞留してしまうこともある。
レーシングカーでもダクトが開けられているが、その多くはフロントストラットタワー付近に大きなものが開けられていて、そのあたりは空気が抜けやすいと言われている。
3:ラジエーターを通った空気を抜く
レーシングカーに多いのがラジエーターを通った空気を抜くダクトがついているもの。これはラジエーター後方からボンネット側までダクトが伸びていて、ラジエーターを通って温められた空気をそのまま外に排出するのだ。
こうなるとラジエーターの空気は効率よく抜けるので水温を下げやすい。エンジンルーム内に熱気が回らないので、エンジンルーム内の温度も抑えやすいというメリットがある。
問題はこのレイアウトにするには、ラジエーター後方にスペースが必要。また、そこまで伸びるボンネットダクト形状が必要なので、市販車ではやや厳しい。ラジエーター後方が丸見えのため、ゴミや落ち葉などがそこに積もってしまうこともあるのだ。
このようにボンネットダクトと一口にいっても様々な種類がある。そして、そのいずれも空力的には微妙であるということ。基本的にはダクトがあるとボンネット上面を流れる空気が乱れるので、空気抵抗としては好ましくない。
ボンネット上面にはダクトはなく、フロントフェンダー後部から空気を抜くと、フロントタイヤの浮き上がりを防ぎやすいと言われているので、空力的な効果も気にするなら穴開きフェンダーにして、その穴からエンジンルーム内の熱気が抜けるようにしたほうがいいだろう。
とくに水温や油温が高いとかでなければ、ダクト付きボンネットをわざわざ装着するメリットも少ないのだ。
ダクトが空いているとそこから雨水がエンジンルームに掛かる。専用カバーなどで問題ない位置に水を排出できればいいが、それでもエンジンルームも汚れやすくなる。やはりとくに冷却的な狙いがなければダクトは無くてもいいのである。それでもかっこいいから付けるというのはそれはもちろんアリ!! 見た目もチューニングには重要な要素である。
最後にボンネットの材質について、FRPとウエットカーボン製はほとんど変わらない。ガラス繊維かカーボン繊維のシートをプラスティック樹脂で固めているので、その材質の違いだけで軽さも強度もほとんど変わらない。見た目的な違いがメリットと言った具合。
ドライカーボン製となると効果だが一段と軽く仕上げることができる。いずれにせよサーキット走行を楽しむのであれば、ボンネットピンではずれないようにしてもらいたい。純正キャッチに対応したボンネットが多いが、サーキットで高速走行となるとボンネットが開いてしまうこともある。ぜひボンピンの併用を検討してもらいたい。
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