【メルセデスベンツ Eクラス 新型試乗】「いいセダンこそいいクルマ」を再認識…島崎七生人
レスポンス / 2024年5月17日 20時0分
実生活でこのメルセデスベンツ『Eクラス』のキーを手にすることはまずないだろうから、オーナーになりすまして(?)、数日間を共にしてみた。するとデビュー早々ながら(1点+αを除いて=後述)このクルマの完成度の高さに唸らされた。
◆驚かされたのはウルトラスムーズなパワー感
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希望を伝えて試乗したのはセダンの「220d」。乗り味や走りを含め、Eクラスの基準車だろうと目したからだ。搭載するのは654Mの型式が付く直列4気筒の2リットルディーゼルターボエンジンで、これにエンジンとトランスミッション(9速AT)の間にISGを組み込んだ、いわゆるマイルドハイブリッド仕様。エンジン単体のスペックは197ps/440Nmで、これに発進時などに17kW/205Nmの電気モーターが加勢する。
で、とにかく驚かされたのはウルトラスムーズなパワー感だった。昔メルセデスベンツのディーゼルではカプセルにユニットを閉じ込める方式をとるなどしていたが、ボンネット裏の形状など見た限りではサラッとしている。が、車外でもトロロロロ……と音は低いし、何より車内にいると、いかにも遮音が行き届き、低速から高速走行時まで実に静粛性が高い。
場合によってはエンジンのごく軽微な音と振動がロードノイズをマスキングして、下手なBEVより静かに感じるほどだ。それほど回転を上げずとも十分な加速を得られるし、アクセル操作に対するツキもいい。
◆黙って実感させられる剛性の高さ
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ステアリングもごく自然な操舵感。切り込んでいくとレシオが速くなる印象があり、これをもってクルマの挙動が軽快に感じるのかもしれないが、その手前のしっとりとした操舵感の範囲で味わっているだけでも十分に思える。
ステアリングのグリップはやや太く、ここ最近の同社の定番になったダブルスポーク部のスイッチに関しては、クリック感がよりハッキリした旧来的な物理スイッチのほうがやりやすい気もするが……。
乗り味はキツイ段差を強行突破するような場面でタイヤ(前後異サイズの19インチ、ピレリP ZERO・MO)に音を上げさせない限りオットリとしているほどで、ボディ、サスペンション系の剛性の高さは黙って実感させられる。
◆上等な設えの数々に感銘
![](https://response.jp/imgs/zoom1/2008417.jpg)
そして何といっても上等な設えの数々には感銘をおぼえさせられる。ここでは書ききれないが、たとえばフラッシュサーフェスタイプのドアハンドルは、夜間にはハンドルの輪郭が照明で浮かび上がり、迫り出したハンドルを握ってみると、手に優しい断面形状に丁寧な作り込みを実感する。
例の横幅がほぼスクリーンと化したインパネも、最初はオッ!と驚かされるが、コクピットドリルで機能と使い方をマスターしていけば、使いやすさが理解できるようになりそう。前席左右に備わっていたマッサージ機能も、いくつかパターンが用意され、同乗の家内はすっかり気に入ったようだった。給油口のリッドも、端を押すとスウッと自分で立ち上がる。
それとクーペボディとは一線を画した、正統派セダンの快適な空間、着座姿勢が実に真面目に組み立てられた後席の居心地もいい。ルーフは頭上に逃げなど設けずにすっきりとした形状のまま後方まで伸ばされているし、窓も自然な形状で外の景色を眺めさせてくれる。
![](https://response.jp/imgs/zoom1/2008423.jpg)
◆フロントマスクがせっかくのフォルムに水を差していないか?
書き出しで“1点+αを除いて”と記したのは、フロントのデザイン。ランプの輪郭と、とくにボディ色が淡色の場合に浮き立つグリルまわりのマスカレードの如き黒塗りの部分は、せっかくのエレガントなフォルムに水を差していないだろうか? フード先端にマスコットが立つというエクスクルーシブの懐かしいグリルもあるようだが、そちらはそちらで照明が入っているとか? そこまで凝らなくても……とも思う。
が、骨子がしっかりと造られ、いいセダンこそいいクルマであることを再認識させてくれる試乗車だった。
![](https://response.jp/imgs/zoom1/2008427.jpg)
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
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