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【ルマン24時間】フェラーリが接戦を制し2連覇…トヨタ14秒差惜敗、豊田章男氏「この悔しさをパワーに」

レスポンス / 2024年6月18日 7時30分

世界3大レースのひとつ、「ルマン24時間レース」の2024年大会(第92回大会)が現地6月15~16日決勝の日程で開催され、接戦の展開を制してフェラーリが2年連続総合優勝を飾った。小林可夢偉らのトヨタ7号車が14秒差の2位で、トヨタは2年連続の2位惜敗。


◆活況のハイパーカー・クラス、レース終盤まで多数接戦の展開に


2024年のルマン24時間レース(世界耐久選手権=WECの第4戦)、レースの総合優勝を争う最上位クラス「ハイパーカー・クラス」には9車種(ブランド)総計23台のエントリーが集まった。クラス創設当初からは状況が大きく変わってきているわけだが、これは、同クラスがLMH規定車とLMDh既定車の“共存”になって世界中の列強メーカー(ブランド)がルマンを目指せるようになった、という情勢変化を主因とする活況の現出だ。


第92回ルマン24時間レースの総合優勝戦線に“エントリー”したのは、トヨタ、フェラーリ、ポルシェ、プジョー、アルピーヌ、キャデラック、BMW、ランボルギーニ、イソッタ・フラスキーニ(Isotta Fraschini)の9ブランド。


まずポールポジションを獲得したのは#6 ポルシェ963(K.エストレ / A.ロッテラー / L.バンスール)である。各クラスの予選上位が参加して争う「ハイパーポール」というセッションで、赤旗中断からの再開後、残り少ない時間でケビン・エストレが劇的に逆転ポール獲得を決めてみせた。


注目の決勝レースは雨に翻弄されることとなり、レース中盤には4時間を超えるセーフティカー先導走行があるなど、リセットを繰り返していくような流れに。それもあって、総合優勝争いは残り3時間を切っても9番手までがトップ同一周回という多数接戦の展開を見せていた。9台の顔ぶれは、トヨタ2台、フェラーリ2台、ポルシェ4台、キャデラック1台。


“トップ9”はそのまま同一周回で24時間を戦い切るのだが(311周を走破)、最後の約2時間、ここでも雨の影響を大きく受けることとなる。そこを抜け出して、最終盤のトップを走るのは#50 フェラーリ499P(A.フオコ / M.モリーナ / N.ニールセン)。これを#7 トヨタGR010(小林可夢偉 / J-M.ロペス / N.デ・フリース)が追う。


◆逃げるフェラーリ、追うトヨタ。緊迫の最終盤トップ争い


#50 フェラーリ(ニールセン)と#7 トヨタ(ロペス)の差は、残り23分でも35秒しかない。逃げる#50 フェラーリはエネルギー残量的にゴール到達はギリギリと思われる状況で、追う#7 トヨタは、その面ではフェラーリより余裕があった。逃げるフェラーリ、追うトヨタ。差は残り14分で27秒まで縮まる。そして残り約2分、ラストラップ突入段階では19秒に(ルマンの1周は13km超)。


昨年のルマンでは、トヨタ8号車がフェラーリ51号車を相手に惜敗と呼べる内容で2位となっていた。トヨタ(TOYOTA GAZOO Racing=TGR)陣営としては、なんとしてもリベンジを果たしたいところである。しかし、#50 フェラーリが逃げ切りに成功し、#7 トヨタは14秒という(24時間レースにおける)僅差で2位に敗れるのだった。


フェラーリは前年優勝トリオの#51 フェラーリ499P(A. ピエール・グイディ/ J.カラド / A.ジョビナッツィ)も3位に入り、1-3でダブル表彰台。優勝車(#50)のアンカードライバーを務めたニクラス・ニールセンは、緊迫の攻防をこう振り返っている。「最終ラップは考えられないくらい長かった。リスクを避けつつ、“可能な限り早く”ゴールすることを意識し続けていたよ」。


◆ルマンでの勝負強さは、フェラーリ当代の特徴?


フェラーリは昨年、50年ぶりとされるルマン総合優勝戦線への復帰を果たし、即、優勝(58年ぶり)。そして今年も続けて勝ってみせたわけだが、勢いそのままに連覇、という表現は妥当ではないように思われる。むしろ際立つのは、ルマンでの説明し難い勝負強さ、ではないだろうか。


WECというシリーズにおいては、いわゆる“性能調整”(バランス・オブ・パフォーマンス=BoP)が大きな影響力をもっており、それが進化し過ぎたようにも思える今季は一戦ごとに戦況がまったく読めないくらいの変転状況になっている。そうした難しい戦況のなか、フェラーリは昨年のルマン優勝後、WECで勝てていなかった(今季第3戦スパ・フランコルシャンでは赤旗再開を巡る不運もあったが)。


昨年のルマン以来、WECでの丸1年ぶりの勝利が今年のルマン。なにか、説明不可能な勝負強さのようなものを感じさせる連覇である。フェラーリの当代耐久陣営がもつ独特の力、なのだろうか?(まったく新しいプロジェクトであることなどから、名門ならではの力、とは呼び難い)


フェラーリのルマン総合優勝は通算11回目(ポルシェ19回、アウディ13回に次ぐ歴代3位の優勝回数)。かつてフェラーリには1960~65年に6連覇という当時の最長連覇記録、現在でもポルシェの7連覇に次ぐ歴代2位の長期政権期を築いたことがあったわけだが、それ以来の王朝を2020年代中期~後期以降に構築していくのか。それが現実のものになったならば、その過程で不思議な勝負強さの正体が見えてくるのかもしれない。


◆トヨタ残念。クラス最後尾から挽回の7号車、一歩届かず


2018~22年に5連覇を達成したトヨタ(TGR)だが、2年ぶりの総合優勝を目指す今回のルマンは厳しい局面の連続だった。特に#7 トヨタは予選でアクシデントがあり、ハイパーカー・クラス最後尾の23番手発進になるなど、苦境が相次いだ。


そもそもルマンを目前にして、レギュラードライバーのM.コンウェイがサイクリング中に負傷して欠場という状況が#7 トヨタにはあり、昨年までコンウェイ、可夢偉と組んでいたロペスを急遽呼ぶという対応が必要だった(ロペス、コンウェイ、可夢偉は2021年のルマン優勝トリオ)。多くの関係者の協力もあって、ロペスを可夢偉、デ・フリースのチームメイトとして得られたことは良かった(ロペスは今季レクサスでLMGT3クラスに参戦中)。


2022年優勝トリオの#8 トヨタ(S.ブエミ / B.ハートレー / 平川亮)も予選11位でハイパーポールに進出できなかった。それでもレースになれば、トヨタの2台はレースペースの良さと規律あるピットワーク&戦略で、早い段階から予選上位のポルシェやフェラーリと先頭グループを形成、優勝争いに力強く踏み入ってみせた。


ただ、最終結果は2位と5位。2年連続の惜敗であった。50号車がキッチリ逃げ切った格好のフェラーリに、わずかだがトヨタは及ばなかったことになる。レースにおける結果とは、そういうものだろう。


7号車がドン底から優勝に14.221秒のところまで迫ったことは賞賛に値するし、8号車も終盤、奇しくも昨年の総合優勝争いの相手だったフェラーリ51号車との接触アクシデントという場面がありながら(フェラーリにペナルティ)、しっかり上位完走を果たした。でも、ハイパーカー戦国期のルマンにおける初制覇を成し遂げたかったTGR陣営にとっては、やはり大きな悔しさが残る敗戦だったようである。


◆チーム代表兼ドライバーの可夢偉「さらに強くなって戻って来ます」


TGRチーム代表兼7号車ドライバーの小林可夢偉(総合2位)は、以下のようにコメントしている。


「我々にとって非常に厳しいレースでした。勝てそうでしたが、いくつかのトラブルで叶いませんでした。我々の7号車にとって順調な24時間ではありませんでしたが、チーム全員が、この大変だった一週間を通して素晴らしい仕事をしてくれました」


「すべてのマニュファクチャラーが、24時間ずっと最後まで戦い続ける、信じられないようなレースでした。すべてのチームが望む勝利に、我々はあと一歩のところまで近づきました。こんな接戦での今日の結果に、来年こそはもっと強くなって帰って来るという意欲が沸いてきましたし、そのために全力を尽くします。ハードワークと応援で支えてくれた日本とドイツのTGRのみなさまに感謝します。また、モリゾウさん(豊田章男氏)にもあらためて感謝します」


「来年はさらに強くなって戻って来ます」


8号車のドライバー、平川亮も「より強くなって戻って来ます」と語っており、トヨタにとっては来年のルマンが、あらためて捲土重来を期す舞台になりそうだ。


TGRのチームオーナーである豊田章男氏(トヨタ会長)は陣営の戦いぶりを讃え、フェラーリへの祝辞とライバルたちへの感謝も語り、素晴らしいレースだったことを強調しつつ、「結果は本当に悔しい!」 との心情をコメント。さらにこう話している。


「『世界一のメカニックたち、世界一のエンジニアたち、世界一のドライバーたち』と、レース前に私からみんなに語りかけたけど、この悔しさをパワーに変えて、世界中からも、そう呼んでもらえるようなチームをもう一度目指していこう! 可夢偉代表よろしく頼みます!」


昨季のWECでは7戦6勝、ルマンだけ勝てなかったトヨタ。今季は性能調整“複雑進化”の余波もあってか、ルマン前の3戦でも1勝と、もともと厳しい状況下にあった。まずは今季残りレースでのWEC王座防衛を主眼に、来年のルマンでの3年ぶり6勝目を見据えて、前進を続けていく。


◆WEC富士戦、今季2024年は9月13~15日


ポルシェ勢はポール発進だった#6 ポルシェ963が総合4位で最上位、以下6、8、9位とシングル順位を多く占めた。見事な安定感ながら、決勝レースではワンパンチ足りなかった印象といえようか。7位は#2 キャデラックV-Series.R(E.バンバー / A.リン / A.パロウ)。


当初の設計思想にはなかったはずのリヤウイング装着となり注目されたプジョー「9X8」だったが、2周遅れの総合11&12位に終わっている(総合10位はランボルギーニ「SC63」)。


LMP2クラス、LMGT3クラスに参戦した日本人ドライバーで、クラス表彰台に登ることができた選手は残念ながらいなかった(LMP2クラスは今季WECの通常ラウンドには設定がない)。ルマン初実施のLMGT3クラス、“初代ウイナー”にはポルシェ「911GT3 R LMGT3」が輝いている。


今季のWECは全8戦の予定、ルマンで前半4戦を終了した。秋恒例の富士スピードウェイ戦(第7戦)は9月13~15日に開催される。


また、ルマンのレースウイークには来季2025年のWEC開催予定カレンダーが発表されており、ルマンは6月、富士は9月にスケジュールされている。


(*本稿における結果等は日本時間17日16時の段階の情報に基づくもの)

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