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ChatGPTと衛星通信が自動車の未来を変える …ソラコムの新サービスが示す可能性

レスポンス / 2024年7月17日 11時53分

自動車産業は、EV、ADAS、SDV 、MaaSへのシフトで大きな転換期続いている。これらの技術革新には膨大な開発コストがつきまとう。


そんな中、IoTとクラウドを繋ぐベンチャー企業、ソラコムが発表した新サービスは、自動車産業にとっても大きな可能性を感じさせるものだった。発表内容を元に自動車産業への影響の可能性を考えてみよう。


◆生成AIがIoTアプリを作り、自動車産業は変わる


ソラコムが今回発表した4つの新サービスの中で、最も注目すべきは「SORACOM Flux」だ。これは、生成AIを活用してIoTアプリケーションをほとんどノーコードで、自然言語による指示のみで開発できるサービスだ。「ほとんど」というのは外部サービスとの接続設定にITエンジニア的技能が必要だが、そこを専門家にやってもらえば、あとは自然言語だけで開発可能なのだ。


自然言語(日本語)によるIoTアプリケーションの開発(SORACOM Flux)
画像入力、画像認識ML、LLM、Slack通知などのモジュールを並べて処理フローを作る(SORACOM Flux)

メディア向けの事前説明回では、SORACOM Fluxの具体的なデモンストレーションが行われた。まず、工場や倉庫などの危険エリアで、作業員がヘルメットを着用しているかどうかを自動で検知するアプリケーションが紹介された。カメラが人を検知すると生成AIが画像を分析し、ヘルメットを着用していない人がいた場合には警告を発するというものだ。


さらに、このアプリケーションを拡張し、倉庫内で倒れている人を検知して自動的に通報するシステムも示された。これらのアプリケーションは、自然言語で指示を与えるだけで、AIがそのロジックを理解し、必要なコードを自動生成するという形で構築された。


SORACOM Fluxで作成したIoTアプリのデモンストレーション

この技術を自動車産業に応用した場合、さまざまな可能性が広がるだろう。反応速度からADASや自動運転システムへの応用は現状では難しいかもしれないが、停止時に車載カメラの映像から危険な状況を検知するシステムなどはあり得る。


実際、海外ではSORACOMの既存サービスを使って、停車中のスクールバスを追い越すクルマを監視するシステムが既に稼働している。米国では停車中のスクールバスの追い越しは禁止であり、それをカメラで捉えた場合は、記録し警察に通報されあとで処罰される仕組みだ。こういった仕組みは、SORACOM Fluxがあればより簡単に構築できるようになるだろう。


SORACOM Fluxの処理イメージ

この技術は、単に開発効率を上げるだけでなく、自動車に限らず産業全体のイノベーションサイクルを加速させる可能性もある。新しいアイデアを素早く形にし、実証実験を行い、改良を重ねるといったプロセスが、従来よりもはるかに短期間で実現できるようになることは重要だ。


◆5G通信の分析も生成AIで効率化


次に注目すべきは、「SORACOM Query Intelligence」だろう。このサービスは、生成AIを統合し、自然言語でSIMの通信状況などのデータ分析をサポートする。


自動車業界では、コネクテッドカーの普及に伴い、膨大な通信データが生成されている。これらのデータは、車両の性能や顧客の使用パターン、さらには道路インフラの状況など、貴重な情報の宝庫だ。しかし、これまでこうしたデータの分析は、データサイエンティストや専門家の領域だった。


SORACOM Query Intelligenceは、この状況を変える可能性がある。例えば、「先月の東京都内における、通信が不安定だった上位10地点を地図上で示して」といった質問を、自然言語で投げかけるだけで、AIが適切なクエリを生成し、視覚化された結果を提供する。


SORACOMに蓄積された通信情報を分析するSORACOM Query Intelligence

こういったモバイル通信を安定化させる施策は、自動運転レベル4のMaaSの運営などにおいて活かされるのではないだろうか。5Gや将来の6GとSDV化によって走るコンピュータと化した自動車にとって、セルラーネットワークは生命線に等しくなる。こういった通信状況分析の効率化、高度化は重要になっていくだろう。


◆セルラーネットワーク外でもコネクテッド


3つ目は、「planNT1」である。これは、IoTプラットフォームSORACOMに衛星通信サービスを統合するものだ。


自動運転やMaaSの実現において、常時安定した通信環境の確保は不可欠である。しかし、山間部や砂漠、海上など、従来の携帯電話網では十分なカバレッジを得られない地域が多く存在する。planNT1は、こうした課題を解決し、文字通り「どこでも」つながる環境を実現する。


例えば、長距離トラック輸送を考えてみよう。山間部や僻地を通過する際にも途切れることなく通信が可能になれば、リアルタイムの車両管理や遠隔操作、さらには完全自動運転の実現に大きく近づく。また、災害時の緊急車両の運用や、海上輸送の効率化など、応用範囲は広大だ。


SORCOMが提供するSIMやeSIMで衛星通信を可能にするplanNT1

特筆すべきは、planNT1が標準的なeSIMとアンテナで利用可能な点である。これにより、既存の車載通信システムに大幅な変更を加えることなく、衛星通信機能を追加できる可能性がある。結果として、より多くの車両がシームレスな通信環境を享受できるようになり、コネクテッドカーの真価を発揮できる範囲が飛躍的に拡大するだろう。


OTA(無線通信)でSIMにサービスを追加できるSORACOMのサービスを使ってplanNT1も提供される

◆セキュアな通信環境の重要性


最後に、VPG「Type-F2」について触れておこう。これは、デバイスとクラウド間の閉域網接続・双方向通信をシンプルかつ速やかに実現するサービスである。


自動車の高度なネットワーク化が進む中、セキュリティの確保は最重要課題の一つだ。Type-F2は、外部からの不正アクセスを防ぎつつ、車両とクラウド間で大容量のデータをスムーズにやり取りできる環境を提供する。


企業に対する悪意あるネットワーク攻撃のニュースは珍しくなくなったが、今後SDV化した自動車や、MaaSネットワークなども攻撃対象になっていく。こういったサービスはますます重要性を帯びていくだろう。


◆SORACOM Fluxの利用について


SORACOM FluXは、Free版の提供が開始されている。利用するためには、まずSORACOMのサービスに無料でアカウントを作成する必要がある。Free版では、1日あたり200回のアクションと300MBのデータ転送が可能で、ChatGPT4o、Clude3.5 Haiku/Sonnet、Gemini 1.5 Flash/Proなどを利用できる。また、より軽い画像認識MLなどのモジュールも用意されている。


ただし、カメラなどのIoTデバイスを接続したりデータ通信を行うと、料金が発生する。例えば毎月300MB以内のデータ通信で月額330円だ。


より高度な機能を備えたPro版およびEnterprise版は2024年秋に提供開始予定だ。これらの有償プランでは、より多くのアクション回数やデータ転送量、さらに高度なAI機能の利用が可能になる予定である。

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