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【ホンダ フリード 新型】シャシー責任者に聞く、乗り心地に求められた「ホンダ流の味付け」とは

レスポンス / 2024年7月24日 12時0分

発売と同時にすでに2万4000台もの受注があったという新型ホンダ『フリード』。人気の理由は日本にちょうどいいサイズや、一新したデザインにありそうだが、開発においては「走り」にもこだわっているというのがホンダらしい所。


新型はハイブリッドのe:HEVとガソリンエンジンの2種類をラインアップするが、その重量差はおよそ100kg。乗り味をどう作るかが鍵になったという。新型フリードの走り、乗り味はどのように作られたのか。シャシー開発の責任者、本田技研工業 ICE完成車開発統括部 車両開発三部 シャシー開発課アシスタントチーフエンジニアの佐々木拓郎さんにそのポイントを聞いた。


◆ハイブリッドをメインに考えた乗り心地


新型フリードのプラットフォームは先代からのキャリーオーバーだというが、それは先代の時点でしっかりと作り込まれていたからとのこと。新型の開発においては、まずは品質の熟成に努めたそうだ。


そこで最もやらなければいけなかったのは「車重に対する対応」だったという。


「どうしても(e:HEVは)車重が重くなるので、ガソリン車のままだとバネが沈んでしまいますし、同じ車高を保とうとすると当然バネが固くなるわけで、今度は跳ねてしまう。ではどう作っていくか」が課題だった。同時に車重が重くなることによって「電動パワーステアリングだけでなくブレーキの容量も足りなくなる。そこでまずは増える車重に対してどう対応するかが開発の一番の課題でした」と振り返る。


まず乗り心地に関しては「e:HEVをメインに考えた」と佐々木さん。その理由は、「現在のe:HEVの受注状況が85%くらいですし、開発目標もe:HEVは6割程度と見込んでいます」。同時に、「先代のガソリン車はしっかり感や軽快感などがきちんと作られていましたので、そこからのチューニングはやりやすいと判断し、先にe:HEVの方を決めてからガソリン車を同じように進化させ、e:HEVとの共通点を持たせるという開発の流れでした」と話す。一方、先代のガソリン車では、「若干跳ね気味でしたので、上質感を持たせたいと考えていました」という。


◆フリードならではの乗り心地の良さとは


フリードのグランドコンセプトは“こころによゆう”だ。そこからダイナミクスのコンセプトを“みんなに優しいダイナミクス”とした。「ここに込めた誰でも運転しやすい、運転に余裕を持ってもらいたいということを考えると、ぴょこぴょこ跳ねられるとちょっと疲れるので、ゆったり運転してもらうために(ガソリン車にも)上質感を持たせる方向にしました」とのことだった。


こうして乗り心地を作り上げていったのだが、乗り心地方向に振り過ぎて修正が入ったそうだ。ホンダにはダイナミック検証というものがあり、その検証メンバーはホンダ車を全部見て、「ホンダとしての味付け」を確認しているという。そのメンバーから、「“軽快感が足りない、ちょっと重すぎる”といわれて、やりすぎたかなと(笑)」。また、「“ちょっとステアリングがだるい、フリクション感が粘つく”みたいな表現をされてしまいました。上質感を狙った仕上げだったのですが、軽快感はホンダとして共通で持たせたいところですので、改めてチューニングしました」と語る。


ではフリードの乗り心地の良さとはどういうものか。「乗り心地を良くする場合、高級車だと上屋を全く動かさないようにすることもありますが、フリードクラスではなかなか難しい」としたうえで、「いっそ動くことは許容して、なるべくその動き方を自然に、上質感を持たせるように意識しました。ですからピッチもロールもそれなりにするんですが、その動きが分かりやすく、次の操作に移るときのクルマの動きも予測しやすくすることで、運転しやすくなるのではないか。そこに気を使いました」と話した。


◆ハイブリッドとガソリン、ステアリングフィールの方向性


また、今回の開発ではステアリングフィールもどういう方向が良いのか悩んだそうだ。「最初は結構重めにしていたので、軽快感がなく感じられることもあってやり直しもしました。実は最後の最後でe:HEVとガソリンにちょっと差をつけて、e:HEVの方を若干重めにして、ガソリン車の方を若干軽めにしたのです。車重から来るクルマの挙動は変えようがないので、ガソリン車の方は軽快感を強めに出そうと。最初はどちらも上質感みたいなところで進めていましたが、最後、ガソリンの方は軽快感を打ち出すことで、決して安いからガソリン車を選ぶというのではなく、両方乗ってみた結果、こっちの方が面白いよねとガソリンを選んでもらえれば良いな」とその理由を語る。


e:HEVのセッティングも聞いてみた。実際に乗るとトルコンATまではいかなくとも、CVTのリニアシフトコントロールにより、ラバーバンドフィールをかなり払拭しているのだ。佐々木さんは、「2020年モデルの『フィット』でe:HEVを積んだのですが、その開発は欧州をターゲットにしていました。欧州ではラバーバンドフィールなどでCVTは嫌われる傾向にあります。ですからそれを消すようにわざとエンジン回転数を変速しているかのように段付きにするという小技を使ってダイレクト感を出しており、その知見を入れています。本当に効率だけを求めるのであれば一定回転数でエンジンを回した方が良いんですが、ここはホンダなりのこだわりです」と明かす。


◆「AIR」と「クロスター」にシャシー領域での違いは?


ブレーキペダルを踏んだときの減速フィールも自然だ。まずe:HEVの方のブレーキフィールを作り上げた上で、ガソリン車の味を作り込んだという。


「部品の組み合わせがそのままフィーリングに出てしまうので、最初は先代モデルからそのまま踏襲して、それで良しとしていました。が、e:HEVで良いセッティングが見つかり、乗り比べるとガソリン車の方が若干初期の食いつきが大きく、特に低ミュー路で微妙にブレーキをコントロールし難いところが出てしまいましたので、ガソリン車の部品の特性、リアクションディスクラバーのゴムの硬度を変更するなどで適正化しました」


最後に今回のフリードには「AIR(エアー)」と「クロスター」と2つのボディタイプがあるが、シャシー領域で違いはあるのかを聞いてみた。


佐々木さんは「全くない」という。「(クロスターの)車高を上げたり、タイヤサイズも大きくするなどの話はありました」というが、「フリードの良さは、ボディサイズとともに、タイヤサイズは比較的スタッドレスなどに(価格面で)交換しやすいもの」とコメントし、こういったフリードの良さは守っていくことにしたそうだ。


新型フリードはストレスのない気持ちの良い運転のしやすさを重視して開発された。特に乗り心地は非常に自然で、交差点を曲がっただけでも腰高感もなく、あらゆる操作性も極めて自然だということが伝わってくる。まさに運転に不慣れな人でも安心して運転出来るクルマに仕上がっている背景に、多くの技術陣のこだわりが込められているのが伝わってきた。

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