人口30万人都市で水素社会の「原単位」をつくる、CJPTがスーパー耐久でFCEVの魅力アピール
レスポンス / 2024年7月27日 16時18分
水素やカーボンニュートラル燃料をはじめ、サステナブルな車両開発の実験場としても注目される「スーパー耐久」が、7月27日、28日に大分県のサーキット「オートポリス」で開催される(ENEOSスーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONE 第3戦 スーパー耐久レース in オートポリス)。
会場では、九州でおこなわれている水素社会への取り組みについて、車両展示や体験コーナーで紹介。商用車のカーボンニュートラル実現に向けトヨタ自動車らが設立したCJPTは、「BtoG」(ビジネスtoガバメント。企業と行政が一体となって街づくりをおこなう)の取り組みとして、福岡県や福岡市で実施している水素活用の実績をアピールする。
◆人口30万人都市で水素社会の「原単位」をつくる
CJPT、トヨタ、福岡市は2022年に、水素社会のまちづくり実現に向けた幅広い取り組みに関する連携協定を締結。水素エネルギーに早くから着目していた福岡市で、水素を燃料としたFCEV(燃料電池車)のゴミ収集車や給食配送車の導入を進めてきた。現在はゴミ収集車、救急車、給食配送車のほか、福岡県ではマイクロバスの試験導入もおこなっている。実際に生活の中で水素車両を活用することで、水素社会づくりに向け課題を洗い出し、実現をめざしていく。
現状の課題として挙げられるのが、水素ステーションを安定して稼働できていないことだという。CJPTの中嶋裕樹社長(トヨタ自動車副社長)は「水素価格が高いという問題もあるが、あわせてこれを解決していく“原単位”をしっかり作っていかなければいけない」と話す。水素ステーションを安定して稼働させるためには、一般ユーザーが所有する乗用車ではなく、毎日決まった用途、ルートを走行する商用車向けが望ましい。商用FCEVを普及させ、安定した水素供給インフラを作ることで、乗用FCEVにもメリットが生まれることになる。
現時点では水素の需要が少なく、ステーションの普及が鈍化している。一方で、乗用向けステーションを商用向けへとスイッチする例も増えてきているといい、生活に根ざす、街に必要なクルマをFCEVにすることで水素そのものの需要を拡大するのがCJPTのねらいだ。
日本では人口30万人規模の都市が最も多く、ここで稼働する商用車をFCEVにすべて置き換えると1日に必要な水素量は約2000kg、水素ステーション8基分にあたるという。逆に言えば、水素ステーションが8基あれば、人口30万人都市の水素インフラをまかなうことができる。
安定した稼働をするためには台数が必要となるが、CJPTとしては「年間1万台のトラックを作らせていただければ、ディーゼルのトラックとそう大きな差はなくリースで利用いただける」。これに向けて、自治体やコンビニ、大手スーパーなど様々なパートナーと連携し、実証データをさらなる開発に活かし、物流効率の向上やランニングコストの低下も踏まえ、車両価格の低減につなげる。
「今まさにこの動きが、水素アイランドである九州でおこっている。この大きな地殻変動が日本の各所で起こることによって、1万台、人口30万都市の原単位といったことが本当に実現できる。これは日本のオリジナリティが非常に高い取り組みになるのでは。1年間取り組んだ結果、実証のレベルまできた。この1万台という高いハードルに向けて(の課題は)、ここにいる皆さんとともに我々が汗をかくことだと思っている」(中嶋社長)
スーパー耐久オートポリスでは、トヨタが水素エンジンを搭載した『GRカローラ』で参戦。前戦の富士スピードウェイではブレーキのトラブルでリタイヤとなっていただけに、リベンジを図る重要な1戦となる。初参戦の2021年比で3倍に伸ばした航続距離を武器に、水素の社会実装に向けた挑戦を続ける。
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