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小型トラックの概念が変わる、三菱ふそう『eキャンター』初の公道試乗で実感した「電動という武器」

レスポンス / 2024年7月29日 12時0分

世界初の量産電気小型トラックとして登場した三菱ふそうトラック・バスの『eCANTER(eキャンター)』が次世代に進化して1年あまりが経過したタイミングで、最新版に公道で試乗する機会を得た。


eCANTERにはさまざまな用途に対応した、28型式もの豊富なシャシーがラインアップされている。ホイールベースの違いにより積めるバッテリーサイズが異なり、2500mm、2800mm、3400mmのシャシーにはSサイズ(1基)、3400mm、3850mmのシャシーにはMサイズ(2基)、4750mmのシャシーにはLサイズ(3基)が搭載可能で、それぞれ容量と一充電あたりの航続距離は、Sサイズが41kWhで116km、Mサイズが83kWhで236km(いずれも標準キャブ)、Lサイズが124kWhで324km(ワイドキャブのみ)となっている。


試乗したのは、標準キャブでホイールベースが2500mmのドライバンだ。実際の使われ方に近づけるため、800kgのウエイトが積まれていた。


内外装の随所にオレンジのアクセントが配されている。インテリアでは空調の吹き出し口やステアリングホイール、シートのステッチなどが目を引く。


イグニッションをONにすると、パソコンのように起動するまでに10秒ぐらいかかるが、ファンなどが動き出してブーンという音こそ耳に入ってくるとはいえ、ディーゼルのあの音や振動を思うと、まったく別世界だ。


◆トラックなのに乗り心地もいい


出発時点でバッテリーのSOCは10段階のフルで、航続距離は113kmと表示されていた。今回はエアコンを25度でAUTOにセットした。あいにくの雨に見舞われ、それもときおりかなり雨足が激しくなる天候ではあったが、めげずにせっかくの機会を有意義な時間としたい、と走りだす。


音もなく振動もないまま走りはじめて感じるのは、スムーズなのはもちろん、アクセルレスポンスが抜群によく、蹴り出しが力強いことだ。自重もそれなりに大きく、さらに800kgのウエイトまで積んでいながら、シグナルスタートでは普通の乗用車に負けないほど瞬発力がある。


静かでなめらかでシフトチェンジの必要もなし。坂道などに駐車する際や、Pレンジボタンを押したときには電動パーキングブレーキが自動的に作動するのも助かる。


トラックなのに乗り心地もいい。もっとガツガツと来ると覚悟していたのに、思ったほどではないのは、フロントサスペンションがリジッドではなく独立懸架であることが大きいようだ。


ご参考まで、車検証によると車両重量が3100kgで、前軸重が1500kg、後軸重が1600kgと、空荷状態ではフロントが軽い。


◆市街地での低速走行に特化した加速と回生


ブレーキ回生は、ほぼコースティングとなるB0から、ワンペダルドライブができるB3まで、4段階で回生の強さを選べるようになっている。B3とB2では最大減速度は同等だが、過渡特性がだいぶ違う。


パワーメーターを確認しながら走ってみたところ、協調回生を行なっていないことがうかがえた。安定したブレーキフィールを重視してのことと思うが、積載量により重量の変動が大きいトラックでは合理的なことだ。


加速フィールは低速域での瞬発力はあるものの、車速が60km/h程度に達すると伸びなくなるのは、市街地を主体に走ることを想定しているのだからそれでよい。


せっかくなので、横浜の元町商店街に納品に行くイメージで走ってみた。アクセルワークだけで自在に車速をコントロールできるのは、狭い道を低速で走るにはもってこい。ホイールベースの短いキャブオーバーなので小回りが利くのもありがたい。


その近くにある、「港の見える丘公園」の周辺には、けっこうな急勾配の上り坂や下り坂があるのだが、ものともせず上っていく。シフトチェンジがないので駆動力が途切れることもない。坂を下りるときは、B3にするとブレーキに踏み換えなくても安定して不安なく降りることができる。高速走行域が得意でなくても、市街地やこうした登坂~降坂状況には非常に向いていることがよくわかった。


◆ドライバーのストレスをひとつでも少なくする


快適で乗りやすいことは、ドライバーの人材確保という観点でも非常に重要なことだ。たしかにこの日も、不快ではないだけでなく、トラックなのに運転していて楽しく感じられたほどだ。


また、ルームミラーの位置には広角バックカメラによる画像を確認できるモニターが標準装備される。オプションの「アクティブ・サイドガード・アシスト1.0」は、左折時や左に車線変更するときに、すりぬける二輪車や自転車などがいると、車内助手席側のフロントピラーにある三角の警報ランプの光と音で、確実に危険を知らせてくれ、いざとなると衝突被害軽減ブレーキが作動する。これがなかなかのすぐれもので、とくに雨の中だとありがたみを実感した。アテンションアシストも的確に警告を発してくれる。安全性の向上はもちろんだが、ドライバーのストレスをひとつでも減らしたいという思いが見てとれる。


出発時には113kmと表示されていた航続距離は、SOCが1目盛り減るごとに、100km、88km、75km、64kmとなり、帰着時には半分の少し下を指して、42kmと表示されていた。


川崎市の三菱ふそう本社の一角に、50kWの急速充電器が設定されており、そちらで充電を試してみる。eCANTERの最大の急速充電能力は100kWで、普通充電は6kWまで対応する。駆動用バッテリーの温度管理についても、充電性能を確保して寿命を伸ばすべく、冬季にはあらかじめあたためておけるほか、熱くなるときの冷却にも万全を期しているという。


また、テレマティクスサービス「Truckonnect(トラックコネクト)」についても、ダッシュボードに表示される残走行距離表示「eRange」や、新品と比べて残っている駆動用バッテリーの容量の表示など、EV特有の新たな機能が追加された。加えて、電力料金が安い時間帯にタイマーをセットして充電できる「充電管理システム」機能も追加された。


◆ダンプも「電動が武器」になる


試乗を終えて、ベアシャシーとダンプを見学した。リアアクスルの位置にEアクスルが配されており、その前方のディーゼル車ではプロペラシャフトがある位置に駆動用バッテリーが、エンジンの位置にはePTO(電動化された動力取り出し装置)のモーターなどが搭載されている。もちろん排気管はない。


リアは一見すると独立懸架のように見えるが、モーターを避けるように左右輪をつないだド・ディオンアクスルとなっている。トラックなので操縦性のためのチューニングではなく、ロードホールディングを優先したセッティングを施しているという。


ダンプは、昇降可能な荷台をどうするかが課題となるが、現状ではフルにEV専用に用意するのは時期尚早との考えから、既存の機構を活かしつつ、ePTOを用いて電気モーターで油圧ポンプを回して荷台を動かしている。将来的には油圧にたよらず、すべて電動になる見込みという。


ここでも電動ダンプの強みが光るのは、静かなことだ。ポンプ等の作動音こそあれ、ディーゼル車でPTOを使うときにはエンジン回転数を高める必要があるのに比べると、圧倒的に静かなのはいうまでもない。これにより工事現場でご近所さんに騒音で迷惑をかける心配もなくなる。


ドライバビリティの面でもユーティリティの面でも、電動化によりいろいろなことがより合理的になり、運用時の利便性がぐっと高まることが期待できそうだ。


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