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【ジャガー Fタイプ ZPエディション 新型試乗】最後のV8、まさに「ラスト・サムライ」…中村孝仁

レスポンス / 2024年8月11日 17時0分

2025年から完全な電気自動車メーカーになると宣言しているジャガー。ブランド唯一のBEVは、今のところ2018年に発表された『I-PACE』のみである。


2025年まではあと半年足らず。果たして本当に完全電気自動車メーカーになれるのか少し心配なところはあるが、それでもICE車の生産終了は着々と進み、最後のICEスポーツカーである『Fタイプ』もファイナルモデルとして「ZPエディション」がリリースされた。まさにラスト・サムライの様相である。


◆Eタイプに由来する「ZP」の名を受け継いだ


そのZPエディション、実は『Eタイプ』に由来するモデルである。50年代のレース活動絶頂期の後、ジャガーではロードカーとしての使命を強く打ち出したEタイプを『XK150』の後継車としてリリースした。レーシングレジェンドの『Cタイプ』や『Dタイプ』と違い、XK150は純粋なロードカーである。そして名前だけDの次、即ちEを名乗るも北米市場ではXK-Eであったところにジャガーの悩みどころというか落としどころがあったようにも感じる。


果たして1961年のジュネーブショーが終わるころには250台の生産に対して500台のオーダーが入っていたというEタイプ。そして更なる宣伝効果を期待して、本来は想定していなかったはずのEタイプでのレース活動を行うべく、7台のスペシャルモデルがZPプロジェクトの元に開発された。そしてこのZPプロジェクトのマシンに乗ってEタイプに最初の優勝をもたらしたのが、F1ドライバーのグラハム・ヒルであった。


そんな伝説的なZPプロジェクトを名乗るのが、最後のICEスポーツカーである「Fタイプ ZPエディション」である。本物のEタイプZPプロジェクトカーの様にレースを目的としたモデルではないので、エンジンや足回りには手が入っていない。外装はオウルトンブルーと呼ばれる濃紺で、これがEタイプZPプロジェクトでグラハム・ヒルの車両に塗られたカラー。そしてもう一つ、クリスタルグレーというカラーリングに塗られたのは、クリスタルパレスのレースで勝利したロイ・サルバドリが乗ったマシンのカラーリングを再現したものである。


因みにこのZPエディションの生産は限定150台とのこと。このうち日本市場へは12台のクーペが導入される。


◆最後の5リットル・スーパーチャージャーV8


お借りしたのはオウルトンブルーのクーペモデルで、鮮やかなレッドの内装を持つ。さらにラウンデルと呼ぶのだそうだが、いわゆるゼッケンサークルがカッティングシートではなくちゃんと塗装されている。見た目はレーシーだが、乗っているとちょっと気恥ずかしい。それに目立つ。グリルの内側はホワイトに塗装されていて、こちらもかなりレーシーな雰囲気。


エンジン自体は5リットルスーパーチャージャー付きV8で、既存の最強Fタイプと同じものである。 足回りを含むメカニカルトレーンもすべて既存のFタイプと同じ。というわけであくまでもコスメティックチューンに終始するわけだが、これが最後のICE搭載ジャガー・スポーツとなると少なからず郷愁を感じてしまい、最後の試乗にお借りした。


グッドウッド・リバイバルなどでは馬鹿っ速いEタイプがコブラやフェラーリなどと互角以上に走り回る姿をYouTubeなどでよく見るが、もし今まさしくプロジェクトZPでFタイプをチューニングすると、ポルシェやフェラーリなどと対等に走れるのだろうか??などと想像してしまうが、オンロードではそんな心配は皆無。例によって朝目覚める時はかなりの爆音を伴って甲高い咆哮で起床するが、いったん落ち着いてしまえば実に慣れた猫に様変わりする。


センターコンソールに付くドライブモードはノーマルとダイナミック、それにレイン/アイスモードがチョイスできるが、ダイナミックをセレクトすれば当然ながら排気音などもそれらしくなるのだが、うるさくもなくまた気恥ずかしくないレベル。そして同じくセンターコンソールに付くエクゾーストマークのスイッチによって、ノーマルモードでもこのエンジンサウンドに変えることができる。


◆スポーツカーらしいシャープさとクィックさ


普通に乗っていて一番感じたのは、ステアリングの操作量が少ないということ。つまりスポーツカーらしいシャープさとクィックさを備えているので、特に車線変更時などはほとんど首を曲げて、体が少し左右に動くとステアリングが自然と切れて、敢えてハンドル操作を必要としない印象でクルマが隣の車線に移動する印象だ。それに乗り心地も悪くない。コツコツとした微振動は伝わるものの、あくまでもコツコツであってゴツゴツではない。デイリーユースで腰に負担がかかるなどということもまずない。


日本ではハイスピードと呼べるような領域までスピードを上げることはできないが、それでもスピードが上がるとリアに付くスポイラーが立ち上がる。多分100km/hを少し超えたあたりだろうか。そして80km/hあたりまで車速が落ちると自動的に元のポジションに戻る。これもセンターコンソールのスイッチで上げっ放すことも出来る。


個人的には40歳を超えてロマンスグレーが似合うようになったら、ツィードのジャケットを着てジャガーに乗るのが夢だった。しかしロマンスグレーはあえなく枯れ果て、ジャガーに乗るという夢も叶えられなかった。この当時夢想していたのはスポーツモデルではなく『XJ』を想定していたが、さらに歳を取って今の年代になるとジャガー・スポーツが良いなと思う。理由はフェラーリのような荒々しさがなく、ポルシェの様に飛ばしてナンボ的な動きでもなく、且つ乗り心地が快適でスポーツカー然としたカッコ良さがあるから。


Eタイプは無理だしFタイプは高いけど『XJS』ならもしかすると…。


■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★


中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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