ドッグフレンドリーカーとしてより相応しいのはSUVか? ステーションワゴンか?【青山尚暉のわんダフルカーライフ】
レスポンス / 2024年8月16日 10時0分
愛犬家と愛犬の愛車として人気なのが、世界的にも大流行中のSUV、そして古くからドッグフレンドリーカーの定番として君臨してきたステーションワゴンではないだろうか。
今回は、そんなSUVとステーションワゴンのドッグフレンドリーカーとしての資質を比較してみたいと思う。
◆ペットと一緒ならSUV一択?
まずはSUVについて。モータージャーナリストにしてドッグライフプロデューサーでもある筆者が考える最大のドッグフレンドリーポイントは、意外かも知れないが、最低地上高の高さや4WDによる高い走破性だと思っている。
その理由は、犬の寿命にある。犬は人間の何倍ものスピードで歳を重ね、寿命は10歳から15歳。その短い犬生の間にいかに多くの、愛犬との楽しい思い出を作ってあげるかが、飼い主の使命だと思っている。いつもお留守番も多い犬にとって、飼い主とのドライブ旅行(目的地は愛犬同伴可能な宿や飲食、観光施設)の機会は、1日中飼い主といっしょにいられる幸せな時間、体験だ。その機会を1回でも多く作ってあげるためには、1年中毛皮を着ていて、足の裏からしか発汗できない暑がりの犬がより快適な、春、秋、そして冬のドライブが最適だ。
しかし、愛犬も家族も楽しみにしていたせっかくのドライブ旅行も、荒天だから、道が荒れているから、雪が降っているから、運転が心配で、急遽、中止では、愛犬も家族もがっかり。とくに犬にとっては貴重な、限られた時間の間にそう多くはないドライブ旅行の楽しみが奪われてしまう。愛犬を亡くしたあと、もっといっぱいあちこちに連れて行ってあげたかった……、と後悔しても遅いのだ。
ところが、悪路や雨に濡れた道、雪道にも強いオールラウンダーのSUVであれば、運転の技量にもよるが、天気、路面状況を問わず、躊躇なく愛犬とのドライブ旅行に出掛けやすいのである。悪路の先にある、愛犬が喜ぶスポットや、犬によっては大好きな白銀の世界へも、SUVは、安心安全に連れていってくれる頼りがいがあるというわけだ。
◆高い車高ゆえの懸念点も…
ただし、大型犬をラゲッジルームに乗せる、という場面ではちょっと問題があるかもしれない(念のため言っておくと愛犬の特等席は、前席の飼い主と愛犬の距離が近く、お互い安心してドライブを楽しめ、エアコンの風も届く後席だ)。
それはラゲッジルームのフロア地上高。世界のSUVの平均値は約730mmで、重い荷物を出し入れするにも、決して低くはない。ジャンプ力のある若い犬ならともかく、ジャンプが苦手だったり、老犬になれば自身で飛び乗り飛び降りることは骨折などの危険もあるため、避けるべきなのである(飼い主が抱っこして乗り降りさせられる犬は別にして)。
さらに、SUVの多くは、ラゲッジルームの開口部に段差があることも多く、これもまた、飛び乗る際に足を引っかけてしまうデメリットがある。ジャンプ力のある若い犬でも、ラゲッジルームの開口部に大きな段差がないクルマを選ぶのがよりよい方法だろう。
◆ステーションワゴンも負けていない!
一方、筆者がこれまで4台乗り継いでいるステーションワゴンと言えば、そのベース車となるセダンやハッチバックタイプと変わらない最低地上高ゆえ、走破性は高くない。その代わり、SUVより低重心で、前後左右の姿勢変化が少なく、車内でどこかにつかまれない犬もより安心、快適にドライブを楽しめる安定感あるメリットもあったりする(最近のSUVなら安定感抜群の車種がほとんどだが)。
愛犬をやむなくラゲッジルームに乗せるにしても、ラゲッジルームのフロア地上高は世界平均で約600mmと低く、開口部に段差のない場合が多く、より容易かつ安全に愛犬を乗せ下ろししやすいメリットがあるのがステーションワゴンとも言えるのだ。
◆後席4:2:4分割が理想的
どうしても愛犬をラゲッジルームに乗せざるを得ない場合は、後席が4:2:4分割で、中央の2部分が倒せ、ラゲジルームと後席の間に空間ができるのが理想。であれば、愛犬は車内の様子が見え、飼い主とのアイコンタクトも可能で、なおかつラゲッジルームにエアコンの風も届きやすくなる(この点についてはSUVも同様)。もっとも、後席が4:2:4分割できる車種は欧州車に多く、国産ステ―ションワゴン、SUVでは少数派ではある。国産コンパクトSUVではトヨタ『ヤリスクロス』ぐらいのものである。
また、後席6:4分割でも、フォルクスワーゲン(VW)の『ゴルフヴァリアント』(ステーションワゴン)のように、後席アームレスト部分にスルー空間(スキー板などを通せる)ができるタイプなら、同様の効果が得られることになる。
◆必須と言える後席エアコン
付け加えれば、後席、ラゲッジルームに愛犬を乗せるなら、後席エアコン吹き出し口は必須と言っていい。ダッシュボードのエアコン吹き出し口のみだと、エアコンを効かせ、前席が涼しくても、後席やラゲッジルームへは冷風が届きにくく、車内温度の差が大きくなる(暑い)からである。理想の車内空調にこだわるなら、3ゾーンエアコン、つまり後席のエアコン吹き出し口の風量、温度設定ができるタイプの装着車が望ましい。
◆SUVとステーションワゴンを足した第3の選択肢
こうしてSUVとステーションワゴンのドッグフレンドリーカーとしての資質を見ていくと、それぞれにメリット、デメリットがあることになる。どちらが愛犬にとって理想かは、飼い主の家族構成や愛犬の犬種、サイズにもよるが、かなり悩ましい選択になるはずだ。
が、SUVとステーションワゴンのいいとこ取りをした車種が存在する。そう、ステーションワゴンをベースに車高、最低地上高を上げ、駆動方式に四輪駆動を採用した、本格SUVに比べ低全高、低重心のクロスオーバーモデルである。
車種は限定されるが、輸入車ではボルボ『V60クロスカントリー』(AWD)、VW ゴルフヴァリアントや『パサートヴァリアント』のオールトラック(4MOTION=フルタイム四輪駆動/ゴルフヴァリアントのオールトラックは現在販売されていない)などが選択肢に入る。
国産車でもスバル『レガシィツーリングワゴン』をベースにしたスバル『レガシイアウトバック』、そしてスバル『レヴォーグ』がベースの『レイバック』(いずれもシンメトリカルAWD)がある。
気になる最低地上高とラゲッジルームの開口部地上高は、アウトバックがそれぞれ213mm、690mm(実測。メーカー値は715mm)。レイバックはそれぞれ200mm、690mm。どちらも駆動方式はスバル自慢の悪路、悪天候、雪道に強いAWDであり、ラゲッジルームの開口部地上高も多くのSUVほど高くないところが、ドッグフレンドリーカーとしての資質の高さにつながっている。SUVとステーションワゴンで悩んだら、ステーションワゴン×SUVのドッグフレンドリーポイントを掛け合わせた、そうした車種を選ぶのもいいだろう。
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