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三菱ふそうの大型トラック『スーパーグレート』を新旧比較試乗、「なぜ、ここまで違う?」新型最大の魅力とは

レスポンス / 2024年8月27日 12時0分

2023年10月、三菱ふそうの大型トラック『スーパーグレート』がフルモデルチェンジを行った。2017年以来、6年ぶりだ。「ジャパンモビリティショー2023」の三菱ふそうブースに出展されていたのでご覧になった読者も多いと思う。その新型に三菱ふそうの「喜連川研究所」(栃木県さくら市)のテストコースと、周辺の一般道路、さらには東北自動車道で試乗し、実際にハンドルを握ることができた。


◆新型エンジン搭載でわかりやすく燃費数値向上


今回の新型スーパーグレートは初代スーパーグレート(1996年)と基本設計を同じくするキャブとは思えないほど外観を大きく変えてきた。目を惹くのが大きなグリルとその中央に位置するFUSOのロゴだ。これは三菱ふそうの小型トラックから大型バスに至るまで貫くデザイン上のアイデンティティであり、「ふそうブラックベルトデザイン」と呼ばれる。


内装では、新開発の「スーパーハイルーフキャブ」により室内空間に余裕が生まれた。前席後ろの休憩スペースでは身長170cmの筆者が少し頭を傾ければ立って着替えすることもできる。また、これまでのブラック内装色に加えて、ダークレッド内装色を追加して空間演出力もぐんと高めた。


さて改めて、新型スーパーグレートの開発コンセプトを深掘りすると次の3点に分類できる。(1)経済性能、(2)安全性能、(3)快適かつ優れた操作性能だ。以下、詳細にみていきたい。


まずは(1)経済性能。わかりやすく燃費数値の向上が狙いだ。2025年度に導入予定の重量車燃費基準であるJH25モード(2025年度燃費基準)への対応が行われた。従来のJH15モード(2015年度燃費基準)と比較してスーパーグレートの属する大型トラックのJH25モードでは約13.4%(バス等では14.3%)の大幅な燃費数値向上の強化が求められる。


その対応策のひとつとして新型スーパーグレートでは新型エンジン「6R30」型を搭載した。従来モデルでは「6S10」型(7.7リットル)と「6R20」型(10.7リットル)の2本立てだったが、新型では排気量を大きくした12.8リットルエンジンを加えた。いずれも直列6気筒エンジンだ。


試乗したのはスーパーグレートの「FSカーゴ」モデル(8×4低床)で搭載エンジンは6R30型の低出力版T1型。低出力とはいえ最高出力は394ps/1600回転、最大トルクは2000Nm/1100回転と十分に強力だ。ちなみに高出力版T2型で421ps/1600回転、2100Nm/1100回転と一段と力強い。なお、6R30型のポテンシャルは高く、最大530ps/2600Nmのスペックを誇る。


トランスミッションはシングルクラッチAMTの「ShiftPilot」でギヤ段は前進12段。シフト操作はステアリング左側のレバーで行う。クラッチペダルは備えずアクセルとブレーキの2ペダル操作で運転可能。補助ブレーキはそのシフトレバーを上に上げる作動する。全3段構成で、1段目と2段目はジェイクブレーキ(排気バルブの作動内容を変更し圧縮工程のピストン運動で抵抗を生み出す)として機能し、3段目ではジェイクブレーキに加えて速度に応じたギヤ段のシフトダウンが自動的に行われ、一層強い制動力が生み出せる。


さらに高めた空力効果アイテムでも燃費数値を押し上げる。キャブ上部のスーパーハイルーフ化は荷箱(カーゴ)部分への整流効果とともに空気抵抗の低減が行える。さらにボディ前部のフラットな面構成と角を落としたデザインとのコンビネーションにより空気全体の流れを滑らかにした。


◆進化した「衝突被害軽減ブレーキ」と2つの新機能


(2)安全性能については、三菱ふそうが属するダイムラートラックでは、欧州/北米、そして日本で販売する大型トラックに統一システムによる運転支援技術であるADASを組み込んできた。2019年にはスーパーグレートにも「アダプティブ・クルーズ・コントロール/ACC」と、「車線中央維持機能/LKS」、「車線逸脱防止機能/LDP」を組み合わせたADAS群「アクティブ・ドライブ・アシスト」(ADA)を搭載していた。


新型では「衝突被害軽減ブレーキ」(ダイムラートラック系列では「ABA6」と呼ぶ)も進化させた。具体的には認知対象物に静止している子供(60km/hまで認知可能)を追加し、同時に制動開始位置を早めるなど、実際の交通環境で求められるシナリオを追加した。


さらに法規要件の早期導入として新機能を2点追加した。


ひとつが「アクティブ・サイドガード・アシスト2.0」。従来型の1.0では車両の左側にのみミリ波レーダーを備え左折時の巻き込みや他車との接触を抑制(衝突被害軽減ブレーキまで作動)していたが、新型の2.0では車両右側にも同様のシステムを追加し、右折時や追い越しや追い抜きの際のアシストも行う。HMIはキャビンのAピラー(前方の両側にある柱)に三角のLEDを表示/点滅させ危険度に応じて黄色/赤色+警報ブザーを発報する。


もうひとつが、「フロント・ブラインド・スポット・インフォメーション・システム」だ。車両中央と左右にあるミリ波レーダーと車両中央上部にある光学式カメラがドライバーの死角(前方向で車両前方、約0.8m~3.7m/横方向は車幅約2.5m+左右0.5mずつの約3.5mの四角いエリア)に接近した歩行者や自転車を検知してドライバーに知らせ、発進時にそれらとの接触事故を抑制する。この機能は発進時の死角を捉えることが目的なので車速15km/h以下でのみ機能する。


また、電動パーキングブレーキも新たに採用。ブレーキを踏んでDレンジに入れてアクセルを踏み込むと自動解除され、停車中はエンジンをオフ、もしくはドアを開けた時点で自動的に作動させるなど利便性も高めた。


(3)快適かつ優れた操作性能については、スーパーハイルーフキャブによる広大な頭上空間と、その前方には重量物も収納できるスーパートップシェルフ(収納庫)を備えた。


◆なぜ、ここまで違う? 喜連川テストコースで新旧比較


試乗は喜連川研究所のテストコースにおける新旧比較から始めた。従来型が6R20型エンジン(10.7リットル/394ps/2000Nm)、新型が6R30型エンジン(12.8リットル/394ps/2000Nm)でいずれもGVW(車両総重量)は約25tと同一条件で整えた。エンジンの性能差を知るためテストコースでは10%の登り勾配路面で登坂能力を確認する。勾配路面に車体全体がさしかかったところで一旦停止し、荷崩れを起さないようじんわりとした加速を試みる。


まずは従来型。ギヤ段はエコノミーモード2速からのスタート。発進時こそスムースだが、その後の増速にはアクセルペダルの踏み込み量を深めていかないと速度のノリがゆっくりだ。1500回転で2→3速へ変速、1700回転で3→4速へ変速して20km/hに達した時点で登坂路面を終えた。


下り坂(10%勾配)では6速/20km/hで下り坂に入り30km/hになった時点でジェイクブレーキを3段階目まで入れて(=シフトダウンも併用)下りていくと40km/hを越える速度までスルスル増速する。早々にサービスブレーキ(いわゆるフットブレーキ)が求められる状況だ。


新型はどうか。従来型と同じ位置て停止しているがAMTであるShiftPilotは6R30エンジン専用のプログラムが施されており登坂判定では1速が選ばれた。発進時から、というかタイヤ一転がり目から力強い。その後の増速も力強くグングン速度が伸びる。積荷の重さが20%くらい軽くなったかのようだ。1500回転で2→3速へ変速、1700回転で3→4速へ変速して27km/hあたりで登坂路面を終えた。


従来型と同じ条件で下り坂に入り30km/hになった時点でジェイクブレーキを3段階目まで入れて下りていくと35km/hを保ったまま速度をしっかり抑制する。よって、停止位置に向けゆっくりとしたサービスブレーキ操作で減速できた。


それにしてもなぜ、ここまで違うのか。もっとも大きな理由は従来型の10.7リットルから12.8リットルへと排気量を拡大したことで低速トルクがぐんと増えたことだ。カタログスペック上はどちらも同じ394ps/2000Nm(発生回転数も同じ)だが、25tにもなる重量車両のゼロ発進加速ではトルクの出方が増速具合を大きく左右する。


新旧2車のエンジントルクを曲線グラフで比較すると、アイドリング回転数である500回転から発進加速を決める900回転弱までのトルク値は新型が二回りほど太い。これは燃焼圧力を高めたことや、500回転を越えたあたりから確実な過給効果が得られるよう流入空気を制御しタービン形状などの最適化を図ったことで得られた6R30ならではの特性だ。


また、排気量の拡大に伴いジェイクブレーキも強力(新型は1500Nm以上のエンジンブレーキトルクで減速)になったわけだが、そもそも排気量の拡大はJH25の燃費数値を達成するための策だった。排気量を約20%拡大しターボチャージャーの過給特性を見直して燃費数値を伸ばし、その副次的な効果としてサービスブレーキに頼らない減速度を手に入れた。こうした好循環はTCOの観点からも歓迎されるはずだ。


◆高速道路ではADASの進化を実感


続いて一般道路、そして東北自動車道を北上した。一般道路では発進/減速が繰り返されるが、増大した極低速域のトルクの効果がものすごく大きく、テストコースで確認できたように登坂路面でもスムースに増速するためGVW25tでも周囲の交通環境に合わせやすかった。


一方の減速も強力なシフトダウンを併用するジェイクブレーキのおかげで滑らかな減速が繰り返せる。乗用車のHVやBEVではアクセルペダルを放して得られる回生ブレーキが一般的で、これを機能拡張させたワンペダル操作も普及しているが、大型トラックではジェイクブレーキに代表される補助ブレーキの活用が要になる。いずれにしろ意のままの発進/減速性能は運転操作の軽減につながり、結果的にトラックドライバーの心理的な負担軽減に直結する。


高速道路では進化したADASが多いに役に立った。ACC機能とLKS&LDP機能の組み合わせであるADAの実用性が大幅に向上したからだ。ACCは前方左右に追加されたミリ波レーダーにより追従走行の精度が高まり、割り込み車両に対する減速制御も緻密になった。


LKS&LDP機能のシステム構成は従来型と同じだが、新型では車線を読み取る光学式カメラの解像度を高め認識率も向上させたこと、加えて制御アルゴリズムを改良したことで、車線維持のため自動的に介入する操舵トルクがより自然になった。イメージとしてプロドライバーがそっとステアリングをアシストしてくれるようで、ずっと車線の中央の走っていられる安心感がある。


従来型から搭載されていたが、スイッチ操作で車線の左/中央/右と任意の位置が選べる走行位置の変更機能も再確認した。車幅が約2.5mで一般的な高速道路の本線幅は3.5mだから左右に0.5mほど余裕がある。そこを変更機能により中央から左右に0.3m程度オフセットできるので、どちらかに寄せても0.2mほどの余裕は残る。例えばこの機能は、路肩で補修工事をおこなっている際、若干右にオフセットさせて走行できたりするのでありがたい。


◆高められた基本性能と運転支援技術こそ最大の魅力


今回は一般道路/高速道路含めて約120kmの試乗を行ったわけだが最終的な燃費数値として4.20km/リットルを記録した。カタログ値(JH25)が4.47km/リットルだからその約94%を達成したことになる。


動的質感も大きく向上していた。静粛性能に優れ高速道路における80km/h走行では体感値ながら従来型から30%以上、静かになっている。吸音/遮音材の効果もあるが、キャブ自体の風切り音も少ない。加えて、直進安定性能も格段に向上している。


三菱ふそうトラックバスの商品経営戦略本部に属する大中型トラックバス商品プロジェクト部・大型トラック商品プロジェクトマネージャーである伊原忠人さんによると、「キャブをはじめとした車体の空力性能向上が静粛性能を押し上げた」と説明。続けて、「新たに搭載した6R30エンジンの重量増加に対応するため前2軸のダンパーの減衰特性を変更したことで直進安定性が高まったのではないか」と語った。


高められた車両の基本性能の上に、制御レベルを向上させた運転支援技術の組み合わせこそ新型スーパーグレート最大の魅力であり、特徴だ。


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