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【ヤマハ MT-09SP 試乗】まだイケる&上達したと誰もが実感! 隠しワザに秘密あり…青木タカオ

レスポンス / 2024年10月2日 21時0分

◆足まわりがいいから走りもレベルアップ!?


コーナー進入時、ブレーキレバーを穏やかに緩めつつ、車体を倒し込んでいく。コントロール性に優れ、思い通りに操れるから、次はもっとイケる気がする。


旋回中も落ち着いていて、コーナーの出口では直列3気筒エンジンのトルクフルで高揚感の上がるサウンドを耳にしながら、強力に立ち上がっていく。


ヤマハ『MT-09SP』だ。サーキットにて開かれたメディア向け試乗会では、クラッチレバーとシフトペダルの装備と操作を省略化した新技術搭載の『MT-09 Y-AMT』に注目が集まったものの、2024年7月に新発売されたMT-09SPのスポーツ性能の高さも目を見張るものがあった。


より高性能なサスペンションとブレーキを備えるSPのおかげで、筆者の走りもレベルがワンランク上がったのではないだろうか。じつに気持ちがいい!


試乗を終えて、プロジェクトリーダーの津谷晃司さん(PF車両開発統括部SV開発部)に意気揚々と自慢しにいくと、じつはSPならではの電子制御がその走りには隠さされていることがわかる。その話は一旦置いておいて、順を追って報告しよう!!


◆ライポジが見直された新型


MT-09は今年4月に発売された新型でハンドルの角度が開き、垂れ角が増えたことでグリップ位置が下がり、フロントに荷重がかけやすくなっている。従来型では低速域から振り回せるようなモタード的なキャラクターを持ち味としていたが、ステップもリヤ寄りにし、中高速域でもアグレッシブに攻め込めるようなロードスポーツとして完成度を高めている。


※新型MT-09ではハンドル位置は下方へ約3.4cm、フットレスト位置は後方へ約3cm、かつ上方へ約1cm移した。車体への入力がしやすくなっている。


MT-09 Y-AMTとともに、SPを持ち込みサーキットで体験してもらいたかったというヤマハの意図がよくわかる。SPならではの専用装備は、なんといっても高性能な足まわりで、KYB製のフルアジャスタブルサスペンションなどを備えるのは従来型と変わらないが、バネレートが強化されていたりダンピング特性の見直しが新型ではおこなわれている。


◆SPならではの豪華装備


ピッチングモーションが大きめで軽快性が際立つノーマルに対し、SPはスピードレンジが上がっても落ち着きを失わない。多岐にわたるSPならではの専用装備は以下の通りだ。


■MT-09SP 専用装備(足まわり)


■KYB製スペシャルサスペンション(DLCコーティングインナーチューブ)
減衰調整機構(圧側減衰調整追加:低速/高速で別々の調整が可能)
通常の2倍以上の調整幅を持つ高性能サスペンションを特別にチューニング


■オーリンズ製フルアジャスタブル/リモート調整式プリロード・モノショック採用
通常の10倍以上の調整機構を持つ高性能サスペンション
より柔軟で追従性に優れ、スポーティな走りにも対応


■ブレンボ製モノブロックキャリパー(Stylema)
大型ピストン採用で制動力向上。Fサスに新作アクスルブラケットを採用


そして、MTシリーズといえば、いつの時代もトルク&アジャイルを突き詰めてきたストリートマシンであるが、新型SPではその可能性を広げようと5インチTFTディスプレイ(3.5インチから大型化した)でサーキット走行を想定したTRACK YRCモードにも設定できてしまうのだ!


幅広いシーンに対応するMT-09の走行モードは「SPORT」「STREET」「RAIN」の3種がプリセットされるほか、カスタマイズ枠を2パターン設けられているが、SPではさらにトラック1~4までを加えている。


SPORT:エンジンレスポンスが高まりワインディングやサーキットに適する
STREET:幅広い環境と路面をカバーし、市街地に適する
RAIN:出力特性がマイルドになり、雨天など悪化した路面状況に適する
CUSTOM(2モード):PWR/TCS/SCS/LIFの各種介入度などを好みで選択


YRC(ヤマハ・ライド・コントロール)はバンク角も反映したTCS(トラクションコントロールシステム)、旋回性をサポートするSCS(スライドコントロールシステム)、前輪の浮き上がり傾向時にライダーを支援するLIF(リフトコントロールシステム)を備えているが、SPには車体がバンクしている途中の横滑りを検知しブレーキ圧力を制御するBC(ブレーキコントロール)、滑りやすい路面での減速時やシフトダウン時のスリップやロックを抑制する制御システムのBSR(バックスリップレギュレーター)をさらに搭載している。


◆R1に匹敵か少し上!?


冒頭でお知らせした通り、ストレートからのコーナーへの進入がよりスムーズになり、フルバンクからの立ち上がりもとても上手くいく。「さすがはSP!」と、ピットへ戻っていく。


「安心して急減速でき、コーナーへアプローチしていける。ブレーキングはスポーツライディングの醍醐味であり、難しさでもありますから、そこに一線級のパーツが顎られているのだから、乗り手も巧く操れますよね」と、まだなにもわかっていない筆者が、そうプロジェクトリーダーの津谷さんに報告すると、BCやBSRの働きが隠されていることを教えてくれる。


「SPに搭載されるBC(ブレーキコントロール)はブレーキ圧力を制御することで最適なブレーキングを実現するもので、エンジンブレーキを的確に制御するEBM(エンジンブレーキマネージメント)と相互に連動します」(津谷さん)


なんと、スリッパークラッチが機械的にエンブレの効きを逃す一方で、BCやBSRがより緻密にブレーキをより扱いやすく電子制御していてくれたのだ!!


「自惚れるんじゃないぞ」と、ランバ・ラルにアムロ・レイが言われたかのごとく、筆者はショックを覚えるのだが、と同時に「MT-09SPで良かった」とも実感する。「次はもっとイケる!!」と、思い返せば無茶なコーナーへの突っ込みもしていた気がするものの、こうした賢い電子制御に大いに助けられていたことを考えると、YRC(ヤマハ・ライド・コントロール)には頭が上がらないし、オーナーになったらもう手放せなくなってしまうに違いない。


高機能6軸のIMU(イナーシャル・メジャーメント・ユニット/慣性計測装置)が搭載され、車体姿勢を瞬時に検知するYRC。出力特性や電子デバイスの介入度を選択できる新型MT-09/SPは、ヤマハ・スーパースポーツ最高峰のYZF-R1と比較しても「内容としてはほぼそれに近いか、R1よりも少しパラメーターが多いくらいかもしれない」と、津谷さんは同社における最新鋭であることも包み隠さず話してくれた。


■MT-09SP 専用装備(電子制御その他)


■YRCモード追加
より細かく制御を調整できるTRACK1~4を追加


■電子デバイス
ABS(リア)OFF機能追加


■スマートキー採用
■SP用特別カラー&リアアーム、アルミバフ&クリア塗装


◆まるでヤマハ最新技術の博覧会


新型MT-09/SPはスマートフォンとつながる機能を持つ5インチメーターや、ユーザーインターフェイスを刷新した新作のハンドルスイッチも見どころのひとつで、「ボタンの数が増えていく中で、いかに直感的に操作できるかを考えました」と、津谷さんが教えてくれる。


4代目となり飛躍的に進化したMT-09/SPだが、デザインについては「従来より落ち着きを持たせ、どちらかといえば初代に戻った感じで、カタマリ感のある中から必要のないところを削ぎ落とすオーバーハングしたフォルムにこだわりました」と、津山さんは車体を見ながら言う。


また、シャープなキャラクターラインを実現する新製法の高意匠プレスタンクも見て欲しいと、会場には展示されていた。ヤマハは軽量・スリム・コンパクトであることを重要視し、軽さが扱いやすさや運動性能にもダイレクトに関わっていくる。


新型MT-09は従来モデル比で約4kg軽くなり、SPの車体重量はわずかに1kg増しの194kgでしかない。燃料タンクは14リットルの容量を確保しつつ、全高を抑えてハンドル切れ角を28→32度へと片側4度ずつ増やし、取り回しをしやすくした。


金属タンクならではの“本物感”を漂わせながら、シャープなエッジの効いたデザインは、樹脂成形でもあるかのような角の尖った複雑な見た目。これは今回から新たに投入されたプレス成形技術による賜物だ。


レーシングスーツを着替えた後も会場をくまなく見て回り、取材を進めていると1日でいろいろなことを知ることができた。筆者は最後にたまらず、ヤマハの担当者に言う。


「国内ではテレビや新聞が扱い、海外からもジャーナリストたちが押しかけるノンクラッチ技術のY-AMTを初披露しつつ、サーキットにまで守備範囲を大きく広げたMT-09SPがあって、さらにそれを支える新たなプレス成形技術も公開してしまうなんて、今回の試乗会はものすごく盛りだくさんですね!」


「そうでしょう」とニンマリ、広報担当者は胸を張って答えた。たしかに、すごいぞヤマハ。その勢いを強烈すぎるほどに感じる1日であった。


青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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