【ドゥカティ モンスター 試乗】圧倒的に軽く、最もシンプルなドゥカティ…小川勤
レスポンス / 2024年10月3日 12時0分
◆日本仕様のモンスター+は足つき性抜群。軽く、スリムで馴染みやすい!
ドゥカティのモンスターは、シンプルであることを信念に30年以上もイタリアンスポーツネイキッドのスタイルを追求してきた。その造形は、とても個性的で美しい。最近でこそ、こうしたストリートファイター的なスタイルはメジャーだが、これはモンスターが確立してきたと言ってもいいだろう。
モンスターは、ドゥカティのフラッグシップであるパニガーレシリーズと同じ車体パッケージを持つ。ぱっと見でフレームらしきものは見当たらないが、フレームはエンジンの真上にエアボックスを兼ねる形で配置され、エンジンとフロントフォークを連結。スイングアームはエンジンに直接マウントする。
ドゥカティ伝統のVツインエンジンは、まるで単気筒のように細い。そのメリットは、サイドスタンドを払った瞬間に937ccとは思えない軽さとして伝わり、跨った瞬間に足つき性の良さとして感じられる。一般的なバイクのようにエンジンを囲うフレームがないため、とにかくスリムなのだ。
実は日本仕様のモンスター+は、ローダウンシートとローダウンサスペンションを標準装備。これによりシート高は本国仕様の820mmから775mmまでダウン。足つき性がよく、ソフトなサスペンションを持つモンスター+は、多くのキャリアのライダーに対応することで人気を得ている。
もちろん足まわりやシートを本国仕様にすることも可能だが、少しコアなファンにはモンスターSPがおすすめだ。こちらはオーリンズ製サスペンションを前後に採用し、専用シートを装着することで車高を確保。シート高を840mmとし、高い運動性を約束。モンスターを検討する際は、このあたりをきちんと精査したい。
ちなみにモンスター+は160万5000円~、モンスターSPは191万9000円となっている。
◆圧倒的な軽さは、どんなキャリアのライダーにもメリットになる
モンスター+のガソリンを除く装備重量は179kg、燃料タンク容量は14リットルだから燃料分の約10.5kgをプラスし、装備重量を190kgと仮定して様々なバイクと比較してみた。
同じくらいの排気量の並列4気筒のZ900RSは215kg、並列3気筒のMT-09は193kg、並列2気筒のGSX-8Sは202kg、ちなみに並列2気筒のCBR400Rは191kg、単気筒のCL250は172kg。こうして比較するとモンスター+は限りなく400ccカテゴリーに近いことがわかる。さらにVツインエンジンは、実重量よりも体感重量が軽く、初めて触れた方はその軽さに驚くだろう。
走り出しても軽さを活かした運動性の高さが魅力。111ps/9250rpmを発揮するエンジンは、他のメーカーのツインと比較すると高回転型。低速域のスロットル操作はある程度メリハリを与えないとギクシャクする。それでも3000~4000rpmまで回すとスムーズに加速。クイックシフトもあるので、この回転をキープするのはそれほど難しくない。
サスペンションは市街地でもよく動くことを実感でき、馴染みやすい。車体が軽いためサスペンションをソフトにできるのだ。ライダーの操作も伝わりやすく、Vツインエンジンの鼓動を感じながら、操っている醍醐味も味わえる。高速道路でエンジンを少し上の回転まで回すと、胸の空く気持ち良さに酔える。7000~8000rpmまで回した時のスッと伸びる加速感はドゥカティならではだ。
◆Vツインエンジンを搭載するもっともシンプルなドゥカティ、それがモンスターだ
モンスター+はコーナリングも独特だ。軽さを武器に、一瞬で向きを変え、あまりバンクさせなくても瞬時にカーブをクリア。旋回時間を長く取るというよりは、きちんと向きを変え、立ち上がりを重視した組み立てが楽しい。左右に連続する切り返しや、奥で回り込んでいる難しいカーブも簡単に攻略ができる。
出力特性を変化させるライディングモードは、「スポーツ」「ツーリング」「アーバン」から選択でき、基本はこのシチュエーションに合わせた設定を選べばOK。このモードに連動してトラクションコントロールやABSなどの介入度も変化するから安心感は高い。
ドゥカティVツイン特有のトラクションの良さは、コーナーの出口で格別な気持ちよさを約束。スロットル操作で後輪のグリップを引き出すような走りが気持ちいい。ただし、本格的なスポーツ性を求めると、向き変えの鋭さやスロットルを開けて曲がる感覚も物足りなくなる。やはりドゥカティを知り尽くしたベテラン、もしくはネイキッドスポーツの本質を味わいたいならモンスターSPを選ぶのが賢明だろう。
モンスターに乗るといつも思い出すことがある。「バイクに必要なのは、ひとつのエンジン、2つのタイヤ、燃料タンク、ハンドルバー、それらを取り付けるいくつかの金属だ」。これはドゥカティのスーパーバイクからカウルを剥ぎ取り、1993年にモンスターを生み出したデザイナーのミゲール・ガルーツィの言葉だ。
モンスターは時代に応じて40種類以上の派生モデルを生み出してきたが、シンプルであることは常に変わらなかった。加える物も、削る物もない。だからこそ、運動性の高さや速さ、気持ちよさといったドゥカティらしさもシンプルに伝わってくるのだ。
小川勤|モーターサイクルジャーナリスト
1974年東京生まれ。1996年にエイ出版社に入社。2013年に同社発刊の2輪専門誌『ライダースクラブ』の編集長に就任し、様々なバイク誌の編集長を兼任。2020年に退社。以後、2輪メディア立ち上げに関わり、現在は『webミリオーレ』のディレクターを担当しつつ、フリーランスとして2輪媒体を中心に執筆を行っている。またレースも好きで、鈴鹿4耐、菅生6耐、もて耐などにも多く参戦。現在もサーキット走行会の先導を務める。
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