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メガサプライヤーが狙うアフタービジネスとは? アイシン、ボッシュほか…アウトメカニカ フランクフルト2024

レスポンス / 2024年10月7日 11時15分

世界最大規模の自動車アフターマーケット国際見本市「アウトメカニカ フランクフルト2024」が9月10日から14日にメッセフランクフルトで開催された。本稿では、事前に話題を呼んでいた中国自動車メーカーの出展とその背景について、また、勢ぞろいしたメガサプライヤーの出展を通して、彼らが狙うアフタービジネス、カーLTV(Life Time Value)ビジネスとは何かを報告する。


中国自動車メーカーの顔見世興行


アウトメカニカは自動車アフターマーケット向けの展示会なので、自動車メーカーは参加していないのだが、今年は中国の自動車メーカーだけが複数出展し、ひとつのホールを占拠していた。それで注目が集まることになった。


実のところこれは、別の展示会を同じ会場内で併催していたもので、中国国際貿易促進委員会が開催するElectric Vehicle Expoに、BYD、吉利汽車集団、AVATR、紅旗、CATLが出展していたということだ。ただ別の展示会とは言うものの、それらしい看板やゲートの類は一切なく、来場者でそれに気づいた人はほとんどいなかっただろう。


出展内容は、特にニュースになるような新しい発表や新型車の公開はなく、すでに発表したモデルのお披露目的な展示であった。恐らくは、公的機関である中国国際貿易促進委員会が中国のメーカーを取りまとめて、自動車アフターマーケットへの顔見世興行として参加したのではないか、と考える次第だ。


中国メーカーにとって足場のない欧州市場に切り込んでいくためには、新車の販売体制はもちろん、修理やメンテナンス、部品供給の体制も整えないことには買ってくれる人もいない。その意味で、アウトメカニカ フランクフルトは、アフターマーケットのキーマンが欧州中から集まるこれ以上ないマッチングの場でもある。会場内外で、中国メーカーと欧州のアフター事業者が顔合わせの面談を繰り広げていたことだろう。


メガサプライヤーが狙うカーLTVビジネスとは


アフターマーケットとメガサプライヤーは、一見あまり関係がないように思えるが、アウトメカニカにはメガサプライヤーが勢ぞろいしていた。ボッシュ、ZF、デンソー、アイシン、コンチネンタル、シェフラーといった具合だ。


メガサプライヤーのアフタービジネス、カーLTVビジネスとはどのようなものか、アイシンを例に挙げて説明しよう。


アイシンはプレスカンファレンスを開催し、そのなかで、アフター向けの部品供給は利益率が高いこと、現状では売上全体に占める割合は数%にとどまるものの、今後の成長が期待される分野であるとした。注力するものとして挙げたのは、クラッチ、ウォーターポンプ、そしてトランスミッションのリマニファクチャリング(再製造)である。


特にマニュアルトランスミッション用のクラッチディスクにおいては、同社がシェアの約7割を占めているが、今後はアイシン製以外のトランスミッションにも対応する製品の開発を進め、市場シェアのさらなる拡大を目指す方針。端的に言うと、アイシンのOE向けの部品をアフターに供給するだけでなく、他社のトランスミッション用の補修部品など、新しい部品を作ってアフターで販売していくということだ。


この言葉を裏付けるように、アウトメカニカが終わった後、9月20日から開催されたオートアフターマーケット東北2024において、アイシンは、タイヤや塗料などアフター向けの新商品群を発表した。


電動車向けのソリューション


一方地元のボッシュは、EVバッテリー修理のための新たなデバイスを発表した。バッテリーモジュールごとに充放電が可能な個別充放電器、バッテリーセル間の電圧偏差を診断し、セルのバランスを取って補正するセルイコライザー、およびバッテリーハウジングや冷却システムの気密性を確認するためのリークテスターだ。


担当者によると、EVバッテリーの修理ニーズは、事故や寿命によるものだけでなく、初期不良に近い瑕疵も多いそうだ。今のところ、モジュールがひとつでも不調になるとバッテリーパック全体を交換することになるが、モジュール単位で交換することができれば、費用を抑えられるしサステナブルでもある。このような市場のニーズに応えるためのボッシュの新デバイスということだ。


同様の話はe-Axle(eアクスル)にもある。内部のベアリングが不良だった場合、現状ではe-Axleを分解することができないので全交換になってしまうが、ベアリングだけを交換するための特殊工具「E-DRIVE STATOR LIFT」がシェフラーのブースに展示されていた。


この特殊工具は、ドイツの工具メーカー「ゲドレー」が開発したもので、シェフラーはe-Axleのベアリング補修キットを用意し、両社で提携して普及させていくとのこと。これも前述のバッテリーと同じように、サステナビリティと低コストを両立するソリューションだ。


EVバッテリーの認証ソリューション


EVの普及に関して、前項のような整備コストの削減とともに必要なのが、中古市場の正常化だ。中古EVの価値は必要以上に低くなってしまっているが、その価値を正しく評価することができれば、今よりも相場が安定し、新車販売にも多少の貢献になるだろう。


オーストリアのスタートアップ企業「AVILOO」は、ポータブル型中古EVバッテリー検査装置を展示した。車両のOBDポートに接続することで、3分でバッテリーの状態を検知することができるデバイスで、内蔵されたSIMで車種別のデータベースに接続し、同じ車種のバッテリー状態との比較が可能だ。


また、テスト結果は一種の認定証としても機能しており、リースアップしたEVの査定や中古車の買い取り時に活用されている。


12月にアウトメカニカ上海が開催


アフタービジネスを狙うメガサプライヤーの視点、EV時代に対応する新たなソリューションなど、今回は収穫の多い取材となった。アウトメカニカは世界14都市で開催されており、12月に開催されるアウトメカニカ上海は、日本からも近く、また開催規模もフランクフルトと並んで世界最大規模だそうだ。興味がある向きは、現地に出向いてビジネスのヒントを探してみてはいかがだろうか。


<取材協力:メッセフランクフルト>


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