「これは“走るミニバン”だわ!」静かでパワフル! 日産セレナAUTECH SPORTS SPECが生み出す“走る喜び”とは?
レスポンス / 2024年10月28日 10時0分
日産直系のオーテックジャパン(オーテック)と、日産ワークスとしてモータースポーツを担うニッサン・モータースポーツ・インターナショナル(ニスモ)が統合し、「日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)」が2022年4月に設立された。
オーテックとニスモそれぞれの強みを活かした活動のかたわらで、かねてから両ブランドではファクトリーカスタムした「AUTECH」と「NISMO」をラインアップしてきた。どちらも走る喜びや操る楽しさ、安心感を追求した「Sports」を掲げる点では共通しながらも、NISMOが「Performance」と「Motorsports」を掲げ、速さや高揚感を訴求するのに対し、AUTECHは「Premium」と「Craftsmanship」を掲げ、上質さと爽快感を訴求する点で棲み分けている。
◆普段使いで確実に感じる違いに好印象、楽しさを感じるオーテックの走り
AUTECHは2024年10月の時点で8車種がラインアップされている。ミニバンの『セレナ』については、いちはやく「C25」型の時代から設定され、ミニバンならではの利便性や高い目線により味わえる爽快感や見晴らしのよい景色に魅力を感じるとともに、内外装デザインや走りの付加価値を求める層に人気を博してきた。
2022年11月に登場した現行の「C28」型セレナのAUTECHに、このほど新たに設定された「SPORTS SPEC」は、そんなセレナAUTECHの価値をさらに高めるべく、シャシー、パワートレーン、ボディに手を加え遮音対策を施すなど全体的にアップグレードする。オーテックと目で見てわかる違いは小さく、内外装のエンブレムと、タイヤ&ホイールのサイズと、タイヤ銘柄とホイールが表面仕上げであることぐらいだが、中身は以下で述べていくとおり多くの部分に手が加えられている。
試乗した神奈川県横須賀の追浜にあるグランドライブには、一般道路を再現しした1周約4kmのコースがあり、そこを上限100km/hの速度標識に従い、けっして攻めるのではなく、ごく普通+αで走ってみた。
高速道路では舵の据わりがよい操舵フィールと安定したレーンチェンジを、市街地ではストレスのない発進加速と雑味の無い上質な乗り心地を、ワインディングではレスポンスのよい加速フィールとコントロールしやすいステア特性を実現し、どんなシーンでも安心感のある質の高い走りを目指しているとの説明のとおり、その走りの仕上がりはなかなか妙味だった。
ストレスのない扱いやすい加速フィールについては、NMCの走りのマイスターである高澤仁氏が、「普段使いでアクセル開度50%ぐらいが一番よさを感じられるようにした」と述べるとおり、乗ると即座に違いを感じる。
ドライブモードごとの走りは、ECOモードに変更はないが、STANDARDモードは日常シーンで不満を感じないように、レスポンスを変えず加速の力強さと伸びを強化したベース車でいうSPORTモードに近い特性とされており、信号待ちからの発進でスッと他車を一歩リードできて、高速道路ではストレスのないスムーズな加速で快適にクルージングできるように味付けされている。
さらにSPORTモードでは、意のままに操れる素早い加速により、ワインディングロードでスポーティな加速で喜びと楽しさを感じられるドライビングを実現すべく、力強さと伸びをさらに強化するとともにレスポンスも強化している。
STANDARDモードだけでなくSPORTモードも、レスポンスはよくてもゲインは高くないので、乗りやすさを損なうことなく速さを体感できるようになっているところもいい。
◆ハンドリングに対して正確にトレースする接地感がと静粛性が気持ちよい
足まわりや車体は走行シーンに適応したハンドリングと快適性を念頭においてチューニングされている。高速道路では、操舵に対する応答を速めてキビキビと走れるようにしながらも、スタビリティを確保して車線変更での安定性を高めることで安心感があり、同乗者との会話が楽しめるよう静粛性にも配慮した。ワイディングロードではロールを抑えて接地感を確保し、余裕のあるコーナリングの実現を目指したという。
そのために、スプリングのバネ定数をフロント約15%、リアを約20%高めてダンパーの減衰力を最適化し、タイヤをインチアップするとともにミシュランのパイロットスポーツ5に履き替えたほか、電動パワーステアリングの特性を専用にチューニングした。
さらに、フロントのサスペンションメンバーステーおよびクロスバーを追加し、リアのクロスバーの径と板厚を上げて車体剛性を高めるとともにパフォーマンスダンパーを装着して、安定性と不整路での質感の向上を図っている。
静粛性については、フロントおよび1列目のサイドガラスの板厚アップやダッシュロアインシュレーターの追加など、セレナの最上級グレードと同等の対策を施している。
これらが功を奏して、ベース車で見受けられた、ステアリング切り始めの応答遅れが払拭され、走りがスッキリとして一体感が増していた。乗り心地については、公道で乗る機会にあらためて確認したいが、段差や凹凸や荒れた路面を走ると多少の硬さは感じるが、大きめの入力があっても響かずに振動が瞬時に収束するので、あまり不快に感じられない。
2列目ではやや振動を感じたが、それほど気になるものでもなく、このチューニングでこれだけ気持ちのよいハンドリングが実現できているのなら、それでよいのではないかと感じた。
静粛性も申し分ない。外から侵入する音だけでなく、パワートレインの音も抑えられていた。後席に乗ると、前側が静かになったことで、むしろ後方から入ってくる音が相対的に少し大きくなったように感じたほどだ。
もともとC28セレナは基本の完成度が高いので、素のAUTECHもよくできていることは重々承知しているが、SPORTS SPECはより気持ちのいい走りを実現していて、加速もハンドリングも乗り心地の快適性も、すべてが絶妙な案配に仕上がっていることに感心した。
ここまでこだわったのだから、それなりの出費を覚悟しなければならないのかと思いきや、価格は438万7000円と、素のAUTECHの420万円とは18万7000円の差にすぎないことにもちょっと驚いた。どこでも試乗できるわけではないが、興味のある人は、ぜひ探して乗ってみて欲しい。きっとここで書いてきたことに共感してもらえることと思う。
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