トヨタが液体水素エンジンのボイルオフガスを有効活用する技術コンセプトを発表、実現に向けて開発仲間を集う…スーパー耐久 第7戦 富士ファイナル
レスポンス / 2024年11月17日 8時30分
ENEOS スーパー耐久シリーズ 2024 Empowered by BRIDGESTONE(スーパー耐久)の 第7戦 S耐ファイナル 富士が11月16日、富士スピードウェイ(静岡県)で開幕した。トヨタは「#32 ORC ROOKIE GR Corolla H2 Concept」(液体水素エンジンGRカローラ)で参戦。走行中に発生するボイルオフガス活用を想定したコンセプトモデルを展示し、ともに技術開発に挑戦する仲間を募っている。
液体水素エンジンGRカローラの燃料タンク部は魔法瓶構造になっておりマイナス253度の液体水素を保温しているが、外からの熱を受けて少しずつ気化してしまう。これがボイルオフガスと呼ばれるもので、気体水素に比べ多くの燃料を搭載することができるものの、燃料の一部に無駄が生じてしまうという課題がある(現在は活用されることなく大気中に放出されている)。ボイルオフガスは、車両が停止状態でも少しずつ発生しており、走行中はタンク内の燃料が暴れるためその量はさらに増える。
今回、そのボイルオフガスを上手く活用する手段として、新たなコンセプトモデルが展示された。
まず、重要なのはボイルオフガスの発生量自体を抑えることだ。現在はモーター&ポンプユニットがタンク上部から刺さっている状態だが、どうしても接続部分から大気の熱を受けて気化してしまう。それを防ぐために、モーター&ポンプユニット自体をタンク内に入れてしまおうという発想で、超電導技術を活用する技術チャレンジを行っている。超電導技術は、極低温になると電気抵抗がゼロになるというもの。トヨタは、マイナス253度という液体水素の温度環境を利用し、出力(パワー)を維持しつつ軽量小型の「超電導モーター」を実現するという構想を2023年5月のスーパー耐久第2戦富士24時間レースで発表していた。この取り組みは、東京大学、京都大学、早稲田大学との共同研究として進められている。
ここからが今回の発表内容になるが、ボイルオフガスを有効活用するために、トヨタが取り組んでいるのが三段階の技術開発だ(「3WAY処理」)。第一段階では、タンク内の液体水素から発生したボイルオフガスを自己増圧器(外部からのエネルギーに頼らず圧力を高める装置)に送ることで、再利用できる燃料を作り出す。発生するボイルオフガスは非常に圧力が低い状態なので、そのままエネルギー活用することは難しい。 自己増圧器は、ボイルオフガス自体が持つ圧力を操作することで、新たなエネルギーを要することなく約2倍から4倍に増圧し、再利用燃料を生成することが可能。インジェクター等に活用することで、効率性をアップする。
第一段階で余ったボイルオフガスは、新たに開発中の小型燃料電池パッケージ(FCスタック)に送り、水素を化学反応させて発電する。これによって発生した電力は、液体水素ポンプ用のモーターなどの動力としての活用を想定しているという。実現すれば本来オルタネーター(小型発電機)での発電量に相当する電力をボイルオフガスから補うことが可能になり、エネルギー効率の向上が期待できる。
そして、この2つの工程で使いきれなかったボイルオフガスは、これまでと同様に触媒を通じて水蒸気に変換し、車外に安全に放出する。
このシステムが確率すれば、液体水素のロスを低減し航続距離を伸ばすことが可能だ。また、オルタネーターの使用にはエンジン動力が利用されているため、その分を小型FCスタックでまかなえればエンジンパワーをフルに使うことができ走行性の向上につながるとのこと。
「増圧器は工場のコンプレッサーなどに搭載されているが、基本的には空気を使用するもので、水素用というものは現時点でない。技術的に難しい部分があり、仲間がほしいと考えている。また、パワートレインユニットとしてのFCスタックは『MIRAI』や『クラウンFCEV』などで知見がありトヨタが得意とするところだが、今回のような小型ものに関してはまだまだ開発段階。オールジャパンで世界で戦っていきたいという思いもあるので、多くの企業に参加してもらい一緒にを実現を目指したい」(開発担当者)としている。
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