【マツダ CX-30 新型試乗】劇的に改善された乗り心地に「もう、ネガな要素はない」…中村孝仁
レスポンス / 2024年11月17日 18時0分
去る7月18日、マツダの『CX-30』が商品改良を受け、その試乗車が追加されたというアナウンスがマツダからあった。
デビューしたのは2019年のことだから、すでに5年の歳月が流れている。昔だったらとっくにフルチェンジである。しかし今はクルマのライフスパンが伸び、同時にユーザー側の買い替えスパンも伸びたので、5年経ってもちっとも陳腐化せず、クルマによってはまだまだ進化の過程にあるものが多い。
その最たるクルマが、マツダで言うならば『CX-5』である。現行モデルは2017年に投入され、昨年も商品改良が施された。しかも今もマツダ車中2番目に売れているクルマだそうであるから、まさにマツダをけん引しているのがこのクルマであることは一目瞭然。後発で、本来後継モデルと目されていた『CX-60』を、遥かに凌駕している。そして、このCX-5に次いで売れているのがCX-30なのだから、マツダとしても丁寧に育てる必要があるクルマということになる。
7月に改良された点は、機種体系の刷新、セットオプションの充実、コネクテッドサービスの提供機能拡充、室内安全装備の強化という4点で、(私が)期待していた改良は含まれていなかった。
私が何を期待していたかというと、これまでCX-30というクルマは、サイズ感的に日本の路上にとてもよくフィットし、取り回しが良く、室内のサイズもそこそこで、さらに価格的にもこなれていて、一番チョイスしやすいクルマであるはずなのに、その乗り心地の悪さで個人的にはチョイスの対象外となっていたもので、ここの改善を期待していたのである。
◆劇的に改善された乗り心地
ただ、多くのメーカーがそうであるように、大きな変更をしない場合は敢えて変更したことを公表しない。例えばサスペンションのストローク量を変えたり、ブッシュ類の硬さを変えるといった、目に見えない変更点の場合は、商品改良と言っても文言にならずスルーすることが多いのである。
そして、試乗して感じたのはこのスルーの可能性が現実のものであったということである。つまり、乗り心地は劇的に改善されていて、完全に自分の購入チョイスの対象内に入ったクルマに仕上がっていた。
以前(と言っても3年前)ガソリンモデルとの乗り比べをしてみたのだが、ガソリン車の乗り心地が少なからずまともだったのに対し、ディーゼルの方はというと、突き上げ感が強く、その揺れ具合も棘のあるというか、癇に障るような揺れ具合で、どうしても好意的には見ることができなかったのだが、今回のモデルでは突き上げ感がほぼなくなり、棘のある揺れ具合も角が丸くなって、完全に許容範囲に収まっている。
もちろん完璧というのはまだまだだが、これでフラット感のある乗り心地になれば文句はない。
◆力強いトルク感とこの燃費にやられてしまう
運動性能については元々この車高を持ったクルマ(全高1540mm)としては、優れたハンドリングだと感じていたので、さらに進化させるとしたら、より正確なステアフィールが欲しいくらい。
マツダはディーゼルエンジンに最も力を入れているメーカーで、世界的にも今もって開発の手を緩めていない唯一のメーカーである。そんなわけで1.5リットルこそ消滅するとのことだが、CX-30に搭載される1.8リットルは今も健在で、これは性能的にも音振的にも十分に満足のいくエンジンである。
今回は700km弱、おおよそ670km程度を走行したが、高速区間がほとんどだったということもあって、燃費は19.2km/リットルと、素晴らしいスコアを出してくれた。仮に同じ燃費としてこれがハイオクだった場合、少なくとも我が家の近くのガソリンスタンドでの違いは、支払い額の差が1200円近くになる。ガソリン車に対して車両価格が高いから、それをランニングコストで吸収するには相当な距離を走らなければならないが、力強いトルク感とこの燃費にはどうしてもやられてしまうのである。
◆この価格帯では「ベスト」な内装の仕上がり
内装の仕上がり具合は、今もってこの価格帯ではベストと評してよい。強いて挙げるならインフォテイメントのディスプレイが縦方向に小さすぎることと、ナビ設定の使いづらさで、この辺りは世代が完全に変わらないとあまり大きな期待はできないので、現状は致し方なしといったところだろうか。
ネガ要素が無いと言ったのは、少なくとも走りに関してであり、最近は一番重要視されているADASやらインフォテイメント系にはネガ要素があるが、この部分の進化は自動車の進化の速度よりもはるかに速い速度で進む世界なので、OTAでのアップデートができるようになるまでは、年次の商品改良で追従するしかないのだろう。
お値段は試乗車の場合387万6791円であった。オプション価格34万5791円を含む。しかもこれは4WD車であるから、FWDをチョイスしてさらにオプション無しならば329万4500円で、コスパはかなり高いと感じる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来47年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。
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