【スズキ フロンクス 新型試乗】有段ATはセールスポイントに、乗り心地は4WDに軍配か…諸星陽一
レスポンス / 2024年11月19日 12時0分
スズキの新型SUV『フロンクス』の試乗会が千葉県の幕張で開催された。今までにはなかった新しい名前が与えられたフロンクスの実力を探っていく。
◆『エスクード』の実質的後継モデル
フロンティアとクロスオーバーを掛け合わせた車名が与えられたスズキの新型SUVフロンクス。車名として見ると初のお目見えだが、実質的には『エスクード』の後継モデルにあたる。日本ではエスクードの販売は終了となるが、海外ではそのまま継続される地域もある(ビターラの車名を使う地域もある)。4代目エスクードはハンガリー工場で製造されていたが、フロンクスはインド工場での製造となる。
1988年に登場したエスクードは直線基調の無骨なデザインを採用していたが、そのコンセプトはクロスカントリー性能を持ちつつも都市でも使いやすいアーバンクロスカントリーというもので、現代のSUVに通じるものであった。
さてフロンクスだ。フロンクスはクーペSUVという呼ばれるジャンルに属する。最近マイナーチェンジされたルノー『アルカナ』、トヨタ『C-HR』、ホンダ『ヴェゼル』などもクーペSUVに分類される。先代モデルにあたる4代目エスクードも初代に比べるとずいぶんスッキリしたスタイリングとなり、クロスカントリーモデルという雰囲気はかなり薄くなっていたが、フロンクスはそうした流れをさらに加速。ルーフをテールに向かってなだらかに傾斜させ、リヤサイドのグラスエリアも減少、よりスタイリッシュなシルエットとなった。
ボディサイズは全長×全幅×全高は3995×1765×1550(mm)、ホイールベースは2520mm。パワーユニットは1.5リットル直4のガソリンエンジンを核としたマイルドハイブリッドシステム。駆動方式はFFとビスカスカップリングを用いた4WDの2種。エンジンスペックは駆動方式によって若干異なり、FFが101馬力/135Nm、4WDが99馬力/134Nmとなる。モーター出力は駆動方式に関係なく3.1馬力/30Nm。
◆有段ATはセールスポイントに、乗り心地は4WDに軍配か
まずはFFの印象から。走り出しはスムーズでストレスがない。フロンクスのトランスミッションは国産コンパクトに多く見られるCVTではなく、有段ギヤの6AT。筆者はCVTに対して悪い印象を持っていないが、CVTを嫌う方も多いのでこの有段ATであることは1つのセールスポイントでもある。変速時のショックもほとんどなく、よくできたATであるという印象。
モーターは60Nmと発生トルクも少ないので、その恩恵は少ない。とはいえ、無駄を減らすという面では十分に役立っている。システムを強化し電池を大きくすればそれだけ重くコストも上がる。ちょうどいいところでバランスを取っているのがいかにもスズキらしい選択である。そして、ハイブリッドという言葉のもつ商品力は絶大だ。
乗り心地は若干硬めで走行音もノイジー。とくにタイヤノイズが大きく、もう1ランク上のタイヤを選んだほうが印象がよくなるのでは?と思うほど。生産工場がインドであり、タイヤチョイスにも限界があったのではないかと感じてしまう。
4WDに乗り換えるとクルマの動きに少し落ちつき感が出てくる。前後重量バランスや重量そのものの差がクルマに好印象を与えているのだろう。運動性能や燃費という面を考えるとクルマは軽ければ軽いほど有利だが、乗り心地というものは不思議なもので重量が重くなるといいことが多い。とくに足まわりのセッティングと重量とのバランスがよくなると、乗り心地は一気に向上する。フロンクスにもそうした効果が出ているのだろう。
◆質感の高いインテリア
室内の質感なども高いものでレザー調素材を使ったシートやアームレストや光沢を抑えたパールブラック塗装も上質。インパネには高輝度シルバー塗装のパーツも用いられているが、この輝度も適度で室内に不要なギラギラ感などもない。ただし、ステアリングスイッチは私を含めて何人かが操作したために付着した皮脂でテカリが出てしまっていた。こうしたテカリは商品性を大きく落としてしまうためちょっと残念。
リヤシートにも座ったがクーペスタイルであるにも関わらず居住性はさほど悪くない。Cピラーが内側に寝ているぶん、若干の圧迫感を感じるが、クラスを考えれば十分であろう。ラゲッジルームは定員乗車状態で210リットル、ラゲッジボードを外せば290リットルに拡大する。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。
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