スポーツネイキッドの王道か「7kg」の軽さか? 100万円で買える大型バイク、スズキ『SV650』とホンダ『CL500』を乗り比べてみた
レスポンス / 2024年12月11日 12時0分
2気筒エンジンを搭載したミドルクラスのスポーツバイク、スズキ『SV650』とホンダ『CL500』に試乗し、その軽やかな走りを堪能した。それぞれのモデルにはどんなよさがあり、なにが違うのだろうか。
◆100万円以下で手に入れられる大型2車種
たとえばもし、「乗り出し価格は100万円以下に抑えたい」、「エンジンは鼓動感のある2気筒が好み」、「スーパースポーツ系やストリートファイター系よりもオーソドックスなデザインがいい」といった条件でロードスポーツを見渡した時、そこに当てはまる大型二輪が、スズキSV650とホンダCL500だ。
これ以外となると、国産ならSV650の兄弟モデルである『SV650X』くらいしかない。先の条件は、かなり現実的かつ需要がありそうなものながら、実際の選択肢は案外少なく、貴重な存在なのだ。
SV650とCL500は、いずれも心地いいエンジンフィーリングとリラックスしたライディングポジションを持ち、日常的な使い方から郊外のツーリングまで幅広くカバー。エントリーユーザーが選ぶ最初のビッグバイクとしても、ダウンサイジングを考えるベテランの次の一台としても、もちろんその中間に位置する多くのライダーにとっても薦められる2台だ。
下記は、主なスペックの違いである。
◆スペックの違いとエンジンのフィーリング
SV650/CL500
・エンジン:Vツイン/パラレルツイン
・排気量:645cc/471cc
・最高出力:72ps/8500rpm/46ps/8500rpm
・最大トルク:6.4kgf・m/6800rpm/4.4kgf・m/6250rpm
・車重:199kg/192kg
・シート高:785mm/790mm
・全幅:760mm/830mm
・価格:80万3000円/86万3500円
ご覧の通り、排気量にはかなり差がある。したがって、最高出力も大きく異なるわけだが、低中回転域の吹け上がりとレスポンスはCL500の方が軽やかで、交通の流れをスイスイとリード。アップライトな上体姿勢のおかげもあって、気負うことなく走らせることができる。
その点、SV650のエンジンは、それ単体だと十分にスムーズな回転上昇をみせるものの、CL500比での吹け上がりは、どちらかと言えば重厚な印象だ。SV650はクランク位相0度、点火タイミングが0度-270度-720度となるVツインを搭載。CL500はクランク位相180度、点火タイミングは0度-180度-720度のパラレルツインである。
一般論として、CL500のエンジン形式は、中高回転域にメリットがあるとされるが、低回転を多用する場面でもなんら不足のない力強さと扱いやすさを披露。ストップ&ゴーを繰り返してもストレスはない。
同じ状況下におけるSV650も、ローRPMアシストの効果もあって、高いフレキシビリティをみせてくれる。ただし、クラッチレバーに重さを感じるライダーがいそうだ。操作力を補ってくれる機能が珍しくなくなり、実際、CL500にはアシスト&スリッパークラッチが標準装備されているため、左手の安楽さならCL500が勝る。ただし、クラッチの切れと繋がりのダイレクト感は、SV650の方が断然スポーティでわかりやすく、これは好みが分かれるところだ。
◆「7kgの差」が生み出すもの
では、根本的な軽さや重さの元となる車重はどうか。SV650が199kg、CL500が192kgを公称し、この7kg差が体感的に結構大きい。SV650の取り回しや引き起こしには、そのぶんの手応えがきっちりあり、CL500よりもハンドル幅が狭く、位置が低いことも不利に働く。
とはいえ、街中において、CL500が全面的に優位かといえば、そうとも限らない。SV650で好印象なのはシート周辺のライディング環境で、停車時の足を降ろしやすさと、ニーグリップ時のフィット感が抜群にいい。下半身の動きを妨げるものがなにもなく、車速0時の足つき性からペースを上げた時のホールド性まで幅広くカバー。股下で車体を操れる一体感の高さはスズキの得意分野で、SV650にもしっかり引き継がれている。CL500も足つき自体は悪くないが、シートの角と内股、もしくは、ステップとふくらはぎとの干渉が時折気になる。
また、微細な部分ではあるが、SV650のブレーキレバーに調整機構が設けられている点を評価しておきたい。こうしたアジャスター類は、そのモデルのポジショニングや価格が反映されやすく、簡略化されても不思議ではないが、5段階の中から選択できるようになっている。
◆SV650とCL500の決定的な違い
そして、SV650とCL500の決定的な違いが質感だ。CL500はスクランブラーにカテゴライズされるモデルゆえ、意図的にそれが抑えられているのは確かである。なぜなら、ダート走行も想定するなら、きらびやかな塗装やパーツは似つかわしくないからだ。
その意味で、モデルのコンセプトに沿った作り込みがなされているわけだが、SV650の艶やかな燃料タンクやフレームのパイプワーク、存在感のあるエンジンを前にすると、いかにも分が悪い。それでいて、車体価格は6万円以上もリーズナブルなのだから、もとより定評あるスズキのコストパフォーマンスの高さが、存分に発揮された格好だ。
さて、ではどう選べばよいのか。SV650はスポーツネイキッドの王道を望み、普遍的なスタイルと上質さを求めるユーザーに向いている。そして、CL500はバイクならではの軽やかさを欲し、思いつくまま自由に走っていたいというユーザーの衝動に応えてくれる存在だ。いずれのモデルも、そのシンプルな佇まいの中に、ファンライディングの要素が詰め込まれている。
伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト
1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。
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