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【ルノー アルカナ MHEV 新型試乗】マイナス90kgの軽さが生み出すキビキビ・ヒラヒラ感…中村孝仁

レスポンス / 2024年12月16日 20時0分

「E-TECHハイブリッド」に続いて、ルノー『アルカナ』のMHEV仕様(マイルドハイブリッド)をお借りした。比較的試乗期間が近かったせいもあって、両者の比較が良くできた。


乗り出しではそれほど感じなかったのだが、乗り込んでいくにしたがって「あれぇ?なんか違うぞ」という印象が頭をもたげ、乗り終わるころには「なんかだいぶ違うぞ」に変化していた。それはともかくとして、初めに断っておこうと思うのは、恐らく個体差によるものと信じたいが、EDCと呼ばれるツインクラッチの7速DCTの制御が、どうもエンジンとマッチしていなかったことである。


E-TECHの場合、そのトランスミッションはドッグクラッチを用いて何速だか忘れたが、とにかく十数速(編集部注:実質12速)を機械側で受け持ってくれる。人間に介入する余地はなく、当然ながらパドルシフトや、マニュアルモードなど存在しない。対してMHEVモデルは7速のEDCが受け持つ。こちらは人間が介在する要素を残していて、パドルシフトが備わる。


ところが、そうは言ってもいわゆるマニュアルモードは存在せず、パドルを使っても時間がたてばすぐにDモードに戻ってしまうから、ここで、こういうシフトをしたいというドライバーの願望は中々叶えられない。


◆E-TECHより90kgも軽いMHEV


エンジンの差はMHEVが1.3リットル直4ターボ。モーターは実質的にジェネレーター替わり程度で、エンジンをアシストするほどの力はない。エンジンパワーは158psである。E-TECHはというと、エンジンは1.6リットルながら、こちらはNAでパワーも94psしかない。ただ、モーターは36psながら205Nmものトルクを持つから、日常的にはほとんどモーターで走り、エンジンがアシストをするという感じであるから、フィーリングはそもそもだいぶ違う。


EDCとエンジンの相性がイマイチであることは前述した。どういうことかというと、トランスミッション側のクラッチが、言葉は悪いが少々トロイのである。だから、信号待ちから発進する際など、ペダルを踏みかえてアクセルにぐっと力を込めても、どうしても一拍遅れて加速が始まる。


ここにホールドモードをかませると、アイドリングストップからエンジンをかけて、その後でクラッチを繋いでどっこしょ…という感じだから、一拍どころか1.5拍ぐらい遅れる。信号グランプリのようにちょっと先に出たいと思ってアクセルを強めに踏むと、アクセルに対して実際のパワーが反応してくれるのが遅れるため、簡単にいうと突然背中をけ飛ばされたような加速になってしまう。だから、途中からホールドモードを使うのをやめたほどだ。


実際のパフォーマンスの差はどちらも似たようなものと感じたが、すいすいと走る様はMHEVの方が上である。元々素晴らしいステアフィールを持ったクルマであるところに持ってきて、E-TECHよりも90kgも軽いからキビキビ感はこちらの方が強い印象だ。


◆日産ノートと同じプラットフォームでも大きな違い


それにしてもCMF-Bとよばれる日産と共同開発したプラットフォームで、日産では『ノート』や『オーラ』に使われているプラットフォームなのだが、走りのしなやかさでは段違いでルノーが上である。単に乗り心地の問題ではなく、その軽快感や運動性能、ステアフィールなど、こと走りに関して言えば、残念ながらすべてルノーが上だ。決して外車(懐かしい言葉だ)礼賛ではなくて、乗ってみてそう感じてしまうのだから仕方がない。


装備関係の違いはほとんどない。そしてお値段はピッタリ40万円違いで、MHEVは459万円である。これに燃費の違いが加わる。E-TECHではリッター20km近い値を出すのはそれほど難儀ではないが、今回およそ250kmほど走ったMHEVの燃費は、10.8km/リットルである。1.3ターボのクルマとしては少し不満な燃費ではある。ただ、どちらもハイオクガソリンを必要とするから、所有している間に40万円をランニングコストで吸収するには5年ほど持っていればよい。


E-TECHによるスムーズで静粛性が高い走りを所望するか、はたまたよりひらひら感が強いMHEVにするか、迷いどころである。因みにアルカナは日本デビューから今年で2年。その2年前の価格が429万円であったことを考えると実に2年で70万円値上がりしたことになる。


■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★


中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来47年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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