まだ知らない? ECUチューンで解放される“隠されたパワー”の真実~カスタムHOW TO~
レスポンス / 2024年12月17日 6時30分
ECUとはENGINE CONTROL UNITのこと。その名の通り、エンジンを制御するパーツでパワーも燃費もECUが握っている。
現代のクルマのチューニングはECUがもっとも重要。ECUがエンジンを制御していて、いくらマフラーやターボを変えても、ECUセッティングを変えなければきちんとしたパワーは出ないし、エンジンチェックランプが点灯して通常の走行もままならなくなってしまう。
古くはこの役割はキャブレターが担っていて、アクセルを開けた分だけ空気がエンジンに吸い込まれ、そのときに負圧でガソリンも吸い込まれていた。ところがECUが制御するようになってからは、インジェクターからガソリンを噴射するようになり、その量や点火タイミングなどを緻密に制御するようになったのだ。
◆ECUチューニングはエンジンの余力を安全なラインギリギリまで使い切る!
現代のクルマではガソリンの噴射量や点火タイミングだけでなく、ターゲットとする空燃比マップがあったり、さまざまな制御がされている、その数値を打ち替えることでより出力を出そうというのがECUチューニングの基本だが、「ECUチューンによってパワーが出る」というのはそもそもちょっと違う。
本来エンジンの排気量とポートの形状、圧縮比などから出せるパワーは限られている。そのパワーが絞られている部分を最適化することで本来のパワーを出そうということが狙いで、ECUチューンでパワーが出せるわけではない。本来のパワーを出すというのが正しい表現になる。
ある老舗チューナーに言わせれば「セッティングはノーマルの状態で合っている。それをマフラー交換やタービン交換などでズレてしまう。そこでECUを書き換えてセッティングをきちんと戻してあげる」のだという。
完全にノーマルの状態でもECUチューンは効果がある。この場合は、封印されているパワーを開放してあげるという認識に近い。最近のクルマでは加速騒音や燃費規制などにおいて意図的にパワーが封じられている部分がある。その部分を最適化するイメージ。
また、ターボ車であればブースト圧をそういった制限から下げられている部分を、少しだけ上げてやることで本来のエンジンユニットが持つパワーを発揮させることができる。そのためエンジンECU書き換え=安全マージンを削るチューニング、という考えは異なる。
◆ECUチューンは何を変えてパワーを引き出しているのか
これはキャブレター時代の考えから来ていて、キャブレター時代は燃料をギリギリまで薄くしたほうが吹け上がりが軽くなり、メインジェットなどをここぞ一番は絞っていた。ところが燃調が薄くなるので燃焼室温度も高くなり、エンジンブローと紙一重だった。
そんな考えからECUチューンも安全マージンを削ると考えられがちだがちょっと違う。たしかにターボエンジンではノーマルの1.5倍以上ものパワーを出して、全開走行を繰り返していたらコンロッドやピストンに大きな負担が掛かる、そこからエンジンが壊れる可能性は高くなる。
しかし、ノーマルから数十馬力アップで乗っている分にはエンジン自体の寿命にはほとんど影響がない。実際これまで筆者もECUチューンしたNA車、ターボ車ともに10万km近く走ったがトラブルが起きたことはなかった。
だが、たしかにやりすぎればエンジンが壊れる可能性があるのもECUチューン。信頼できるパーツやチューナーを選んでECUチューンを行いたい。
もっとも普及しているタイプはHKSの「フラッシュエディター」だ。これはOBDポートからECUを書き換えるタイプで、すでにチューニングデータが本体に入っていて、それをクルマのECUにインストールするだけ。HKSがあらゆる状況を想定して作ったデータなのでその信頼性は高い。逆に言えば汎用性の高いデータなので、まだ少し積める余地が残されている。そこでHKSではパワーライター店と呼ばれる認定を受けたお店でのみ、さらに1台1台に合わせたECUの調整である「現車合わせ」をできるようにしている。
ほかにもチューニングショップや大手量販店でもECU書き換えチューニングが提供されている。最近では粗悪なECUチューニングは減ってきているが、きちんと実績あるお店を選んでチューニングするようにしてもらいたい。
また、最近では『GRヤリス』を筆頭にECUチューンがまだ広まっていない車種もある。これはECUチューンによって書き換えられる領域に制限があり、大きなパワーアップができない場合があるから。そこで現在GRヤリスでは圧力センサーに装置を噛ますことでの簡易ブーストアップチューンが主流。それでも30ps程度はパワーアップができ、信頼性も高いことから人気を集めている。この手法は20年以上前に行われていたが、現代になって再び注目されているのだ。
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