【いすゞ エルフミオ 試乗】ごくごく普通に加速、変速ショックもほぼなしの快適トラック…諸星陽一
レスポンス / 2024年12月19日 11時0分
いすゞから普通免許対応の小型ディーゼルトラック『エルフミオ』がデビュー。東京臨海地区で試乗した。
信頼性の高い1.9リットルディーゼル×6速AT
普通免許でディーゼルトラックに乗ったことがある、もしくは現在乗っているというドライバーもいるだろうから、「普通免許対応」という言葉に違和感を覚える方も多いだろう。この「普通免許対応」は最新の免許制度での普通免許を取得した人のこと。2017年3月12日以降に普通免許を取得した人が乗れるのは車両総重量3.5トン未満、最大積載量2トン未満までだ。エルフミオはこの条件に合致、さらにミッションはATなので普通免許があれば誰でも乗れるということになる。
試乗インプレをお届けする前にエルフミオの概略を紹介しておこう。ボディタイプは平ボディがシングルキャブとスペースキャブ、ダブルキャブの3種。このうちシングルキャブはフラットローダブルタイヤ、フルフラットローダブルタイヤ、フラットローシングルタイヤの3種がある。そのほかに電動ダンプとドライバンも設定。ドライバンにはフラットローとフルフラットローがある。
ホイールベースはいずれも2500mmで全長は4690mmが基本でダンプは4685mm、ドライバンフラットローは4840mm、ドライバンフルフラットローが4870mm。全幅は1695mmでドライバンは1745mm。全高は平ボディとダンプが1960~1965mm、ドライバン・フラットローが2720mm、ドライバン・フルフラットローが2850mm。ドライバンは1ナンバーだが平ボディとダンプはすべて4ナンバーだ。
搭載されるエンジンは1.9リットル直列4気筒ターボディーゼルのRZ4E型で最高出力は88kW(120馬力)、320Nm。排ガス処理はDPD(Diesel Particulate Defuser/ディーゼル・パティキュレート・ディフューザー)とアドブルーを使った尿素SCRで行う。ちなみにこのRZ4E型はタイで販売されているピックアップトラックの『D-MAX』にも搭載されているエンジンで、高い信頼性がある。組み合わされるミッションは6速のATのみ。フロントサスペンションはダブルウィッシュボーンでスプリングは横置きリーフ、リヤはリーフ固定となる。
スルスルッと走り出す動きは乗用車と同じ
試乗車はダブルタイヤ・シングルキャブ・フルフラットローで積載量は1250kg。運転席への乗り込みはAピラーに取り付けられたアシストグリップを使ってやることで容易になる。ドライビングポジションはトラックとしては標準的だ。ステアリングにはチルト&テレスコピック機構が備わる。ステアリングは適度なサイズで乗用車ライク、ただし装着位置は寝かされていて、箱バンなどと比べてもトラック然としている。
ブレーキを踏んでイグニッションキーを回しエンジンを始動する。キーレスシステムもオプションで用意される。サイドブレーキを下ろしてブレーキペダルを緩めるとスルスルッと走り出す。その動きは一般的な乗用車と同じだ。サイドブレーキについてもレバー式ではなく電動パーキングブレーキも設定。電動パーキングブレーキの場合は、自動作動&自動解除機能も備える。
トラックの場合MTだと2速で発進することが多いが、トルクコンバーター付き6速ATのエルフミオは1速からの発進でもギクシャクした感じがない。アクセルを踏み込んでいくとごくごく普通に加速する。変速ショックもほとんどない。加速時のノイズもよく抑えられていて車内は快適である。試乗車は500kg分のウエイトを積んでいるので、段差乗り越え時の突き上げなどもあまりなかった。最小回転半径は4.4m。もちろんオーバーハング分はあるが、それでも小回りの効く設定になっているといえる。
ADAS関連は車線逸脱警報(LDWS)、ふらつき警報、誤発進抑制機能、車間距離警報、プリクラッシュブレーキが全グレードで標準装備。ブラインドスポットモニターと右左折時のプリクラッシュブレーキがオプションだ。
また興味深いのはボディカラーの設定と選択。トラックのボディカラーは白が圧倒的な人気を誇るが、エルフミオにはペールブルーという淡い青色を設定。このペールブルーが人気になっているというのだ。また、ボディタイプでもスペースキャブの人気が高く、従来白く荷台が少しでも大きいタイプばかりが注目されてきたトラックというジャンルとは異なる傾向が見てとれるという。
リスクを減らして購入ハードル下げる「ELFmioストア」
エルフミオはネット上の専用サイト「ELFmioストア」での販売にも積極的だ。この「ELFmioストア」で使えるプランがじつによくできている。エルフミオは免許の関係でトラックを運転できなかった従業員が新たに運転できるように導入するというパターンだけでなく、新しく事業を始める人たちにもスポットを当てている。
普通AT免許しかないが荷物を運ぶ事業、もしくは業務上トラックが必要な事業を始めようという人には「ELFmioストア」を利用することで、リスクを減らすことができる。7年プランや9年プランというメンテナンスリースとしては長めなプランが設定されているが、メンテナンス代金などは最初の契約のままで値上げはない。9年も経てばパーツ代やオイル代なども上昇する可能性が高いが、そうした場合も据え置きされたままだ。また解約についても自由度があり7年プランは満4年、9年プランは満5年を経過した時点から解約が可能になる。事業規模が大きくなったり、事業形態が変化した際の利便性が高い。
さらに驚くべきはリース期間中に対応する自動車保険が設定されていること。この保険は初回契約時の等級がリース期間(最長9年)に渡って持続する。期間中であれば何度利用しても掛け金が上がることがないというので、メンテナンスと合わせて車両関連費の支出を予算立てしやすくなり、急な出費を抑え事業を軌道に乗せやすいという利点がある。
エルフミオは7月24日の発表後、ほぼ4カ月となる11月末時点でリピート客1250台(大手事業者700台/一般事業者・個人事業主550台)、新規客250台(大手事業者100台/一般事業者・個人事業主150台)という順調な滑り出しを記録。現代の免許制度にあったトラックを生み出すことで、ユーザーの裾野を広げることに成功し、さらにソフト面でも事業者の立場に立っているところに感心する。商用車を扱い、産業を支えるということはこういうことなのだろうと、いすゞという企業の取り組みに感銘を受けた。
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