ミズノの「歩ける」ドライビングシューズ、新登場の高級モデル『ベアクラッチL』を試してみた
レスポンス / 2024年12月21日 12時0分
スポーツ用品メーカーのミズノが、ドライビングシューズの新モデル『BARECLUTCH L(ベアクラッチL)』を12月20日に発売した。
2022年9月にドライビングシューズ市場に参入したミズノ。第一弾として主にプロドライバーに向けて発売した『BARECLUTCH(ベアクラッチ)』は予想を大きく上回る1万足を販売。年間計画を4か月で達成するほどの人気となった。一方で、ドライビングシューズにはプライベート需要も一定数あることや、カジュアル感よりも高級感を求める声があることがわかったという。
新発売となったベアクラッチLはそうした市場の声に応え、従来モデルの肝でもあるソールを採用しつつ天然皮革を新採用。デザイン、カラーを新開発し登場した。今回は、真っ先に入手することができたベアクラッチLのレビューをお届けする。
◆「ベアクラッチ」とは
そもそもミズノがドライビングシューズに参入したのは、マツダとの共同開発がきっかけだった。ミズノとクルマの接点について意外に思う人も少なくないだろうが、実はクルマ業界というくくりでいえばモータースポーツ現場で使用するワーキングシューズ(いわゆる安全靴)やウェアなどを長年手がけており、さらにトヨタの燃料電池車『MIRAI』の水素タンクに使われるカーボン素材もミズノが開発していたりする。スポーツ用品メーカーでありながら、実はクルマ業界を陰で支えている一社なのだ。
そんな中で、「人間中心のモノづくり」という共通の哲学をもつ両社が、技術交流で交わしたアイデアの中から生まれたのがドライビングシューズの開発だった。その成果は2021年に「マツダ/ミズノドライビングシューズ」としてクラウドファンディングで限定販売。ここで培われたノウハウと、歩行時の履き心地向上とダイレクトなペダルフィールを両立するソールの技術「MIZUNO COB(ミズノコブ)」を活かし、ミズノの製品として2022年に市販されたのが「ベアクラッチ」だ。
このミズノコブは、もともとアスリートのトレーニング用シューズで使われていたミズノ独自のソール構造で、ミッドソール上面とアウトソールの凹凸によって足裏に正確な情報を伝達するというもの。これによりクッション性とダイレクトなペダル操作感を両立する。かかと部分まで一体となっており、さらにラウンド形状とすることでペダルの踏み替えをかかと中心におこなうことができるので、ストレスが少ない。このあたりにはマツダからのフィードバックもふんだんに生かされているはずだ。
ミズノがベアクラッチで目指したのは、単に運転が楽になるシューズではなく、履き替えることなく街歩きも快適にできるシューズを開発することだった。運転のためのダイレクトな感度は維持しつつ、歩くのに快適なクッション性や伸縮性を犠牲にしない。土踏まずをアーチ形状にすることでグリップ性の向上も追求するなど、さまざまなアイデアが盛り込まれている。
第一弾のベアクラッチは、主にプロドライバー(タクシーやバスの運転手など)に向けたものとしていたが、カジュアルにも履きこなせるシンプルなデザインで、かつ街歩きにもそのまま使えることで、一般のクルマユーザーにも響いたのだろう。前述の通りの人気商品になり、女性用サイズも追加されている。
◆高級感へのこだわりは「色」にも
そして、より高級感のあるデザインを、という声に応えて登場したのが今回の「ベアクラッチL」だ。定評のあるミズノコブによるソールはそのままに、アッパー素材に上質な天然皮革を初めて採用。つま先に先飾りデザインをパーツ採用し、ペダル踏み込み時のシューズの変形やねじれの抑制に配慮した形状になっているのも特徴だ。シンプルなワントーンだったベアクラッチに対し、サイドにアクセントのラインが入っているのもポイントだ。
またデザインでいえば、新たに「レッド(赤)」を設定しているのも見逃せない。開発者いわく、本当は初代ベアクラッチからレッドを採用したかったが、プロユースであることを踏まえ断念。ベアクラッチLで念願の初採用となったのだという。こだわりの部分がグラデーション塗装で、つま先やかかとはより濃いレッドになっている。この濃淡によって、立体感のある深みを生み出している。
さらに実はこのグラデーション塗装、「ブラック(黒)」と「ドレスネイビー(濃紺)」モデルにも採用されている。一見するとわからないほどの違いだが、高級感の演出のために開発者がどうしてもこだわりたかったポイントだそうだ。
サイズ展開は24.5cm~28.0cm、ミズノ公式オンラインでの販売価格は1万9800円となっている。
◆「ベアクラッチL」で運転&歩いてみた
そんなベアクラッチLを実際に試してみた。
まず最初に足を通してみての感想は「ストレスなく足がおさまる」ということ。個人的な話で恐縮だが、筆者の足は甲の高さはないが横幅がある、いわゆる“ド日本人的な足“で、それが故に横幅のタイトなレーシングシューズやドライビングシューズはもちろん、欧州系メーカーのスニーカーも履くことが難しい。デザインが気に入っても、余裕を持って履こうとすると29cmや30cmなどのビッグサイズになってしまい、今度は肝心の歩くことがストレスになってしまうのだ。
第一弾のベアクラッチでも感じたことだが、このベアクラッチLではそれがなく、ジャストサイズでフィットする感覚。これがまず好印象だ。シューズの形状(とくに内側)というのは基本となる「木型」が重要で、ここにミズノならではのノウハウがあるという。サッカーシューズなどで実績のある木型を使っており、これがフィット感を生み出している。この木型というのはリバースエンジニアリング的にコピーをしようとしてもそうそう簡単なものではなく、他メーカーが喉から手が出るほど欲しがるものだとか。このフィット感は、ぜひ一度履いて実感してほしい。
ソールについては、スニーカーやウォーキングシューズと比べれば硬い。ただクッション性がないわけではなく、コブの溝に沿って柔軟にソールが変形するので窮屈さを感じることはない。実際に運転してみると、この程よい硬さとシューズ全体の柔軟性が、ペダルの形状や踏みごたえをしっかりドライバーに伝えてくれることがわかる。アクセル、ブレーキ、そしてクラッチペダルそれぞれの感触が手に取るように(足だけど)わかるので、丁寧なペダルワークができる。
ラウンドしたかかとの形状のおかげもあって、アクセルとブレーキの踏み替えはほぼつま先の遠心力だけでおこなえるので余計な力を入れる必要がない。足の運転疲れも大幅に軽減できるから、安全運転にもつながるはずだ。
で、肝心なのが歩いてみてどうなのか、だ。ソールはそれなりの硬さがあるため、アスファルトを歩くとコツコツと音が鳴る。だがビジュネスシューズと違うのがやはり全体の柔軟性で、足そのものの動きにシューズが追従してくれるので変な力をかけずとも自然に歩くことができる。地面の感覚がはっきりわかるのに、底が薄いわけではないから疲れない。ちょっと不思議な感覚だ。
天然皮革は従来モデルの人工皮革と比べるとどちらかといえば硬いが、それで不快さを感じるものではない。時間が経てば馴染んでくるのも天然のメリットだ。お手入れは必要になるが、より自分の足にフィットしていく感覚を楽しむのもまた一興だろう。
◆「東京オートサロン2025」で試し履きができる
シューズは実際に履いてみてから選びたいもの。だが、このベアクラッチはどんな靴屋にも置いてあるというものではないのがネックだ。販売は主に、ミズノのオンラインショップとなっている。
では試す場が全くないかというと、さにあらず。ミズノは1月10日、幕張メッセで開催される「東京オートサロン2025」に出展し、ベアクラッチシリーズの試し履きコーナーを設ける。全サイズを試すことができるので、気になるドライバーは要チェックだ。
オートサロン以外でも、2月に開催される「大阪オートメッセ2025」にも今年に続いて出展予定だ。クルマ好きが集まる場で、ベアクラッチの魅力をアピールする。
快適で安全なドライブは足元から。選択肢が広がったベアクラッチ、さらに多くのドライバーのカーライフを支えることになりそうだ。
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