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【三菱 アウトランダー 新型試乗】最後の最後までエンジンが目覚めることはなかった…中村孝仁

レスポンス / 2025年1月5日 12時0分

今回投入されたモデルは、言わば大掛かりなマイナーチェンジが施されたモデルである。つまり2021年に投入されたモデルの第2世代。


先代がデビューした時に 「その上質感、その性能、その走りそして見た目の存在感などすべて、三菱のフラッグシップに相応しいモデルに仕上がっている。」と書いた。つまり、十分に良い仕上がりだと感じたわけだが、それをさらに上回るのが今回のモデルというわけである。


『アウトランダー』の歴史は2005年に始まり、PHEVが登場したのは2代目のモデルから。そして3代目では少なくとも日本市場では全モデルがPHEV化されている。PHEVモデルとしての歴史はトヨタ『プリウス』次いで長く、基本をシリーズハイブリッドとするシステムのモデルとして、独自の境地を切り開いているモデルである。確かデビュー当初のPHEVは、12kwhのバッテリー容量。それが3代目デビュー時に20kwhとなり、今回はさらに大きな22.7kwhに拡大した。


バッテリーを大量に搭載すればBEVとしての走行距離は伸びるが、一方で車重は重くなり、ガソリン車としての燃費は落ちる。果たしてどの程度のバッテリー容量が適当なのか?という点に関しては、各自動車メーカーそれぞれの考え方があるようで、少なくとも今回ミツビシのエンジニアに聞いた限りでは、「100kmをBEVとして走れることができる」というのがミツビシ的PHEVに対する答えのようである。


◆マイナーチェンジで変わったポイント


今回のマイナーチェンジをまとめると、まずは冒頭で述べたバッテリーを刷新して出力、航続距離を伸ばしたこと。次に全体の質感を向上させ、若干のフェイスリフトを断行したことなどである。


外観の変化としては、フロントグリルのデザインがわずかながら変更され、従来はボンネット側についていたグリル最上部を、ボンネットから切り離した。これに伴って従来はアルミ製だったボンネットは、鉄製に改められている。また、リアのコンビランプはLED化された。


インテリアでは新たにフレームレスのデジタルルームミラーが採用されたり、大型の12.3インチセンターディスプレイが投入されるなど、最新の自動車トレンドに即応した対応がなされている。もっともデジタルミラーは遠近両メガネ使用者にとって非常につらく、正直使えない。


内燃エンジン自体は先代と変わらず、2.4リットルの4B12型である。


◆試乗中、エンジンがかかることは一度としてなかった


車両を受け取り一般公道に乗り出してみる。今回も試乗時間70分程度なので、まあ味見の領域を出ないことをあらかじめお断りするが、その音もなくスルスルと走り出すさまはまさしくBEV。今回はさらに、かなりアクセルを踏み込んでもエンジンがかかることはない…というメーカー側の説明を受け、「ならばエンジンかけてやろうじゃん」と勢い込んで、加速のできるところでは結構踏み込んでみたものの、エンジンがかかることは一度としてなかった。


少なくとも通常走行の領域から、加速のためにグンとアクセルを踏み込むような状況では、一般道を走る限りまずエンジンが目覚めることはない。だから、結構な電池容量が残った状態で借り出したクルマは、最後の最後までエンジンが目覚めることはなかったのである。


今回はメーカーの説明によれば上質感をさらに一段高めたそうだ。とはいえ、マイチェン前と顕著に異なったのは、センターディスプレイのサイズと、従来2トーンに別れていたダッシュボードをモノトーンに仕上げたことや、シートのダイヤモンドステッチを座面背面の一部から、座面背面すべてに施したことなどで、以前も十分に上質な印象を受けたが、細かい部分でさらにブラッシュアップしたということのようだ。


◆一段アップグレードした感触は十分に伝わる


そして特に力を入れて説明されたのが、オーディオ。ヤマハと共同開発したという新しいオーディオシステムが、静粛性の高いPHEVとのマッチングが良いとのことだ。確かに音質は素晴らしいし、最上級モデルはこれが標準装備になるというのだから、マニアにとっては嬉しい限りだろうが、所詮自動車の車内である。リスニングルームとは異なるのだから、メーカーがやることはほどほどで良いのではないか?と思ってしまったりする。


今回はバッテリー容量が増えたことで必然的に車重が重くなり、それに伴ってサスペンションのストロークを僅か5mmだが引き上げて、車高が5mm上がっているが、これによる大きな変化は感じ取ることができなかった。3代目からは明確にオンロードを意識したハンドリングに変わっているアウトランダーのステアフィールは、しっかりと中心付近の動きが明確で個人的には好ましい。


いずれにせよ一段アップグレードした感触は十分に伝わるモデルである。


■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★


中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来47年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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