愛車を守るつもりが逆効果?知られざる暖機運転の落とし穴と正しい方法~カスタムHOW TO~
レスポンス / 2025年1月7日 12時30分
寒いこの時期、少しでもクルマを労りたいと暖機運転をしていないだろうか。実は暖機運転は愛車を傷める大きな原因になっているかもしれない。正しい暖機運転を知って、クルマのダメージを最小限にしておきたい。
◆冷えたエンジンは故障の原因?暖機運転は必要なのか
クルマはエンジンの熱で暖房を効かせている関係で、寒い季節にエンジンを始動してもすぐに暖房は効かない。そこで雪国ではエンジンスターターを使って、遠隔操作でエンジンを始動。暖房が効いた頃に乗り込んで走り出す人も多い。また、純粋にエンジンを始動して温まってから走るという人もいる。だが、実はそれらはエンジンを傷めている可能性があるのだ。
たしかに暖機が必要な場面はある。エンジン内部にオイルを行き渡らせ、金属同士が摩耗しないようにしてから負荷を掛けたほうがエンジンのダメージは少ない。エンジン始動直後にいきなり全開走行をしたら、まだ潤滑しきれていない部分に大きく負担が掛かって、内部が摩耗してしまうこともある。
そこでエンジンを始動して待つわけだが、実はアイドリングでかけっぱなしは良くない。その理由はエンジンオイルの油圧が低いから。オイルポンプはエンジン回転すると比例して動いて、各部にオイルを圧送している。エンジン始動直後はオイルも冷えていて、油圧も高いので問題ないが、徐々にエンジンが温まってくるとオイルも柔らかくなり、徐々に油圧も下がってくる。
クランクシャフトやカムシャフトなどは、メタルベアリングで支持されている。これは油圧によってシャフトを浮かせていて、オイルの中でクルクルと回転している仕組みで、だからこそ摩耗せず何十万kmとエンジンは壊れずに回ることができる。
ところが油圧が低くなるとオイルの中にクランクシャフト、カムシャフトが浮いていられなくなり、メタルベアリングとシャフトが接触してしまう。これが繰り返されるとダメージが蓄積され、メタルブローと呼ばれる状態になってしまう。
◆長時間のアイドリングはエンジンへのダメージも大きい!
実は長時間のアイドリングはエンジンにとって厳しい状態なのだ。では、正しい暖機運転はどうすればいいのか。それはまずエンジンを始動したら静止するのは数十秒で十分。オイルが循環を始めたらゆっくりと動き出す。そこからはゆっくり走り、少しずつペースを上げていく。走り始めの5分ほど少しペースを落として走ればそれで問題はない。
こうすることでオートマチックトランスミッションやマニュアルトランスミッションなどの内部も徐々に温まっていく。ブレーキやサスペンションなども徐々に温まって本来の性能を発揮できるようになる。タイヤもわずかにだが温まることで少しずつグリップ力が高まっていく。クルマ全体を温めるイメージで丁寧に走り出してもらえればいいのだ。
長時間のアイドリングがエンジンに好ましくないのは暖気時だけに限らない。エンジンを掛けたままの仮眠なども、油圧が低い状態が長く続くのでダメージを与えやすい。それでも国産車ではそういったシチュエーションも想定して作られているだろうが、輸入車の場合あまりそういった使い方を考慮されていないようで、長時間のアドリングはエンジンにダメージを与えやすい。
実際、ドイツ車でエンジンの油圧に起因するメタルトラブルが頻発したのは、街乗りばかりの個体と寒い地方で長時間の暖機運転をしていた個体が多かったという話もあるのだ。
また、どうせ乗ったらある程度油温が上がるまでは乗ってもらいたい。とくに冬場はエンジンオイルの温度が上がりにくい。その状況で短距離移動を繰り返していると、エンジン内部で結露した水分がオイルに混ざり、それが撹拌されて乳化しやすい。コーヒー牛乳のような状態になってしまい、エンジンオイルの性能を大幅に落としてしまう。そうなると交換するしかなくなる。
定期的に油温が100度近くまで上昇すれば、オイルに含まれた水分は一旦蒸発する。その状況で撹拌されても乳化しにくい。数kmの短距離通勤に使っている車両だと、エンジンオイルが乳化してしまうことも珍しくない。できれば、たまには30分程度走ることでオイルの中の水分を飛ばすことができるので、そういった走りをするようにしてもらいたい。
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