【マツダ CX-80 新型試乗】鈍重さは皆無、コスパなら「素のディーゼル」が一番…中村孝仁
レスポンス / 2025年1月15日 12時0分
昨年末、満を持してマツダが投入した3列シートの大型SUV『CX-80』。既に試乗会での味見は済ませているので、今回はじっくり2週間近く試乗させてもらった。
2列シートの『CX-60』は、デビュー当初からいくつかのネガ要素が散見されて、販売も低迷。今後のマツダの運命を左右する重要なモデルだけに、いわゆるラージ商品群は失敗が許されない。既にネガを指摘されたCX-60も改良型が投入されることになっており、今回のCX-80共々これなら…という商品にしたいところである。
味見の段階ではCX-80は、CX-60が持っていたネガをだいぶ潰した印象があって、特にリアからの突き上げ感や、トランスミッションの発進初期のギクシャク感などは修正が入っている。具体的にリアはサスペンションの見直しを行って、かなり柔らかめの設定にしたということだ。
自動車というのは厄介な乗り物で、路面の不整が入力された時にそれをサスペンションが吸収して衝撃を和らげてくれる。しかし、それが取り付けられているシャシー側だったり、あるいはボディ全体、即ち骨格そのものがしっかりしていないと、サスペンションの効果は半減どころか、下手をすれば悪い方向へのベクトルになることがある。
◆剛のボディに「柔」のリアサス、その効果は
90年代と言えばまだほんの30年ほど前の話だが(ほんのではないか)、アメリカの自動車メーカーが謳っていた文言の多くは、このサスペンションの取り付け剛性の強化で、数値にすると100%アップ、即ち倍に剛性を上げたなどと言う記述があったりしたものだ。つまり、スプリングやダンパーだけいじっても、肝心の骨格にそれを受け止めるだけの力量が無いと何の役のもたたないということである。
一方でその骨格がとつてもなくがっしりとした場合、柔らかい足を取り付けても受け止める側が強すぎて、その柔らかさを感じ取れないような場合もある。CX-80のボディ剛性は素晴らしく強固であると感じる。いわゆる「剛」の骨格だ。これにスポーティーな足回りを装備すれば、当然ながら硬いと感じる足回りができる。CX-60で感じた足の作りはそんな状況だったように思う。CX-80はその剛のボディに「柔」と言っても良いリアサスペンションを装備した。
では、その柔が効果を発揮したかと言うと、確かにCX-60で感じたようなリアからの突き上げ感は消えている。しかし、日常的に長く乗ってみると、必ずしも適正とは思えない場面にも遭遇する。確かにリアは柔らかくなった。ところが、今度は一度入力されたショックを一回で収束させることができていない。つまり揺れ戻しが来てしまうのである。
CX-80は最大7人乗車ができる。今回は最大で子供2人を含む5人乗車だったので、いわゆる空荷のトラックのようなもので、荷物を載せればそれで適正な足回りの機能を発揮するのかどうかは不明であるが、空車時のサスペンションセッティングはリアのダンパーをもう少し強化した方が良いように感じた。
◆3列シートの鈍重なクルマという印象は皆無
今回試乗したのは3.3リットルのディーゼル搭載車「XD Sパッケージ」。MHEVではない素のディーゼルで、これは初試乗である。少なくとも「音」というキーワードで話をすると、この素のディーゼルが一番良い。もちろんディーゼルの透過音は確実に室内に届くが、決して不快なものではない。
一番良いとする理由は、PHEVにしてもMHEVにしても電気的なものか、あるいはそれを組み込んだことによる副次的なモノかは判別できないが、高周波で耳障りのする音が発進時と停車直前に入り込むからである。その点、素のディーゼルはエンジンノイズだけでトランスミッションからの不快な音はほとんどない。
全長4990×全幅1890×全高1710mmというかなり大柄な車体にもかかわらず、運動性能は非常によく、比較的頻繁に使った狭い道でも、見切りが良いからか、そのサイズ感を感じることはほとんどない。そして予想以上にキレッキレの走りも見せてくれるから、3列シートの鈍重なクルマという印象は皆無。同じようなサイズ感の大型ミニバンなどよりははるかに運転が楽しい。
◆コスパは「素のディーゼル」が一番
新しいラージ商品群は、マツダの専務執行役員である廣瀬一郎氏によれば、合計4種あるラージ商品群SUVを一括開発し、それによってモデルベース開発の適用で、試作車の台数、段階を減らし、開発費をフェーズ1の時代よりも25%減らしているという。
メーカーとしては、如何に少ない投資で大きな成果をあげるかということは至上命題であることは解るのだが、すでに北米市場などに展開されている『CX-70』や『CX-90』では、日本のCX-60で発生したようなユーザーからのコンプレインはないということだから、ベースとしたクルマが、実がよりワイドボディを持つCX-90やCX-70で、それを日本市場用のCX-60やCX-80に展開したのではないかとも思えてしまう(試作車の数を減らすという意味で)。
まあそれはともかくとして、その堂々たるアピアランスでは他の日本製SUVの追随を許さない。少なくともバランスの良さだったり美しさ(個人的感想)という点では、CX-80は非常によくまとまっている。インテリアの上質感にしてもそう。
そのうえで、試乗車の価格は465万3000円である。これには26万9500円のオプションも含まれるから、車両本体は438万3500円である。もっともオプションは、セーフティー&シースルービューパッケージとパワーリフトゲートパッケージで、後者はともかく前者には12.3インチのディスプレイや安全対策のスマートブレーキサポートなども含まれるから、これは外さない方が良いかもしれない。
いずれにしてもコスパはこの素のディーゼルが一番である。
■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。
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