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スバルのショールームにマツダS耐マシンが展示! 航空機の再生カーボン提供や25年シーズンの抱負についてトークショー

レスポンス / 2025年1月16日 11時45分

スーパー耐久シリーズ(S耐)のST-Qクラスに参戦するスバルとマツダが技術的な協力体制を構築している。参戦の意味、協力の内容などを両チームの代表が集まって紹介するトークイベントが開催された。会場には2024年シーズンの参戦車両が展示され、2025年シーズンに向けた抱負も語られた。


「SUBARU×MAZDA スーパー耐久シリーズ 合同展示・トークイベント」と銘打たれ1月14日に開催されたこのイベントは、東京都渋谷区にあるSUBARU恵比寿ショールームにスバルはもちろんマツダの参戦車両を展示するという、思い切った企画となった(スバル車以外を展示するのは歴史的にも初の試み)。


S耐のST-Qクラスに参戦する両社はすでに技術的な協力を始めており、昨シーズンの参戦車両にはスバル航空宇宙カンパニーによる航空機の再生カーボンをボンネットやウイングに用いるなど、参戦車両への技術の協力体制がスタートしている。


◆“ワイガヤクラブ”から始まった技術協力


そもそもST-Qクラスとは何なのかをあらためて紹介しておこう。ST-QはS耐に2021年に設置されたクラスで、他のカテゴリーに該当しないスーパー耐久未来機構(STMO、旧スーパー耐久機構/STO)が認めた車両での参戦が行われているクラスであり、現在トヨタ、スバル、マツダ、ホンダ、日産の5社が参戦中だ。参戦車両はメーカーの開発車両を持ち込むというスタイルで、まさに走る実験室となるレースカテゴリー。各社の最新技術さらにはカーボンニュートラルへの取り組みなど、次世代のクルマに求められるさまざまな技術が詰め込まれた車両であり、各社がその技術にしのぎを削り、同時にレースとしてもガチンコ勝負をする点からもS耐の人気クラスに成長している。


そんなST-Qクラスに参戦するスバルとマツダがS耐での取り組みと両社の協力、そして2025年シーズンについて語る場として設けられたのがこのトークショーだ。登壇したのはSUBARU Team SDA Engineering代表の本井雅人氏、そしてマツダMAZDA SPIRIT RACING代表である前田育男氏。両チームの代表が集まってS耐を語るという興味深いイベントだ。


まずは、本井氏から両社が技術協力を始めることになった経緯が語られた。


「きっかけはS耐で実施している“ワイガヤクラブ”という会合でした。これはST-Qクラスに参戦する5社がレースの際に集まって情報交換する場として設けられた集まりです。和気あいあいだけど、かなり深い話をする会合です。ここではカーボンニュートラル燃料をどうしていくのか、レースをどうやって盛り上げるのか、人材育成を各社でどうしているのかなど、さまざまな話が交わされています。そんな中で“お互いに提供できる技術”はないのだろうかという話題が出たのが、スバル×マツダの協力のきっかけです」


ワイガヤクラブのスローガンになっているのは「共挑」、メーカーの垣根を越えてカーボンニュートラル社会に共に挑むという意味が込められている。前田氏からはその意味について紹介される。


「ST-Qへの参戦、ワイガヤクラブを通じて、さまざまな取り組みが始まっています。クルマの開発は大きな変革期を迎え、1社ですべてを開発するのではなく各社で協調して開発する必要性が出てきています。新しい素材そしてカーボンニュートラル燃料など、メーカーの垣根を越えて共に開発していける環境作りのきっかけになっているのがST-Qにおける開発、そしてワイガヤクラブです」


◆高品質カーボンの廃材が「宝の山に見えた」


そんなメーカー間の協力で、すでにスバル、マツダの参戦車両で実現しているのが再生カーボンの利用だ。本井氏がスバル航空宇宙カンパニーの再生カーボンを参戦車両に用いることができないかと模索しはじめたのがスタートだった。


「コロナ禍の時期に、私がいるスバル研究実験センターと航空宇宙カンパニーはコロナの予防接種の件で協力していました、その際に両社の密接な関係が生まれて、そこで『S耐に出るので何か協力してもらえませんか?』と提案したのが始まりです。当時コロナ禍もあって航空需要が減り、航空宇宙カンパニーではカーボンの廃材が数多く出ていたのもあって再生カーボンの利用がプランされたのです」(本井氏)


マツダでは前出のワイガヤクラブでお互いに提供できる技術としてスバルが提案した航空機用の再生カーボンの利用に早速興味を示すことになる。


「航空機用のクオリティの高いカーボン素材は是非とも導入したい素材でした。車重が重くなりがちな当社の参戦車両なので、少しでも軽量化して旋回性の高いクルマを作りたかったのです。そんな思いもあって、すぐに両社関係が始まりました。早速、スバル航空宇宙カンパニーの工場に見学に行きましたが、そこではクオリティの高いカーボンの廃材が山のようにあり、我々には宝の山に見えました」(前田氏)


こうして再生カーボンを巡ってST-Qクラスの参戦チーム間でスバルとマツダの協力がスタートすることになる。ここでステージにはSUBAR 航空宇宙カンパニー基板技術部 関根尚之氏とマツダ ブランド体験推進本部ファクトリーモータースポーツ推進部 上杉康範氏が登壇。再生カーボンについての技術的な部分も交えた話が展開された。


そもそも再生カーボンとは何なのか、さらには具体的な再生カーボンの製造方法についてを関根氏がわかりやすく解説する。


「炭素繊維(カーボンファイバー)は、再生して何度も使うことで製造時に排出されるCO2排出の削減に寄与できます。スバルでは航空機(ボーイング787など)の中央翼などで使われるカーボンを扱っています。このカーボンファイバーは高い強度と剛性が求められます、これらの廃カーボンを再利用するのが再生カーボンです。再生カーボンを作るには廃材の樹脂部分だけを焼き飛ばしてリサイクルカーボン(再生炭素繊維)とした上で、もう一度樹脂を含浸させて成形していくという手順になります。さらに細かな廃材を使う方法としては炭素繊維だけを取りだして繊維を一方向に揃えたり、新たにより糸にして織物にして再利用する方法もあります」


これらの再生カーボンは当日展示された『Team SDA Engineering BRZ CNF Concept』のボンネット、さらには『HIGH PERFORMANCE X FUTURE CONCEPT』のリアウイング、『MAZDA3 Bio concept』のボンネットなどにもすでに利用されており、現物が紹介された。両社では今後、再生カーボンの利用をさらに拡大していくことを計画中。2025年の参戦車両にも新しい再生カーボンパーツが投入されることが予想されている。


◆航空機用カーボンファイバーのメリットとは?


ところで、航空機用の高品質なカーボンファイバーを用いることはパフォーマンス的なメリットも大きい。具体的なスペック上のメリットについても紹介された。


「BRZではボンネットフードを航空機の再生カーボンを用いることで従来比で1.5kg軽量化しています。空力的にもCL、Cdともに低減させています。非常に使いやすい素材だと思います」(本井氏)


「MAZDA3はボンネットをこの再生カーボンを利用することで、従来のカーボン素材に対して1.4kgの軽量化、さらにノーマルのスチール素材に比べると14kgもの軽量化を実現しました」(前田氏)


トークショーの終盤ではスバル、マツダ両チームの2025年シーズンへの抱負が語られた。


「スバルはカーボンニュートラル/さまざまな環境対応と出力向上の両立を図っていきます。さらに当社独自のAWD、ターボエンジンをさらに進化させるのもテーマです。今回紹介した再生カーボンファイバーはマツダ以外への供給も始める予定です」(本井氏)


「当チームの技術的な課題はCO2の吸着です。カーボンニュートラルからマイナスに持ってきたいと思っています、そのために車両が出す排気の中でCO2を吸着するシステムを組み込んで走らせたいと思っています。その際に車重増が予想されるためカーボンや空力を使って補っていく開発も進めていく予定です」(前田氏)


さらにスーパー耐久未来機構理事(STMO)の桑山晴美さんがゲストとして登壇、3月22日のモビリティリゾートもてぎでの開幕や全7戦が予定されるS耐 2025年シーズンを紹介。ST-Qクラスのますますの盛り上がりにも期待するコメントを残した。


スバルとマツダ、S耐 ST-Qクラスでライバルとして戦う両チームだが、技術面での協力が進んでいることがわかる。カーボンニュートラルに向けて各社が協力体制を整えることで、開発のスピード感はますます加速するはず。レースの世界のみならず、市販車へのフィードバックも近いと感じられた。


トークショーの会場となったSUBARU恵比寿ショールームでは1月14日から1月19日の間、S耐 ST-Qクラス参戦車両であるTeam SDA Engineering BRZ CNF Concept、HIGH PERFORMANCE X FUTURE CONCEPT、MAZDA3 Bio conceptの車両展示、さらには再生カーボンに関する技術展示が行われるのでこの機会に来場してみてほしい。

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