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【マツダ CX-80 PHEV 新型試乗】700万円オーバーのクルマとして、納得がいくか否か…中村孝仁

レスポンス / 2025年1月25日 18時0分

◆直6・FRが“売り”のCX-80、直4のPHEVは…


メディアが盛んに書くからなのか、マツダ『CX-80』の特徴は、直6エンジンやFR駆動という部分がクローズアップされている印象が強い。


事実、斜め後方から見た時(この角度からの眺めはとても美しい)のフロントタイヤを極力前方に持って行った長く伸びやかなラインや、長さが強調されたボンネットなど、エンジンルームに収まるべきは直6…というイメージが強い。


しかし、グレード展開で一番高価な設定となっているのは、直4エンジンと電気モーターを搭載したPHEVなのである。2気筒分短いのだから、さぞやエンジンルームがスカスカかと思いきや、今時のエンジンルームは臓物類が見えないように見事に覆い隠しているから、中がどうなっているのかは外からではわからないようになっている。


価格は流石に高く、試乗車は719万9500円と、700万円の大台を超えている。マツダが一連のラージ商品群を投入した背景には、明確にラインナップの上級移行化が意図されていると思う。つまり、より高級なラインナップへの転換である。少なくとも、その堂々とした佇まいや、インテリアの上質感などでそれは成功していると思う。そして直6の方は圧倒的なトルク感を持つ走りのダイナミックさで、ここでも成功している。


でも直4プラス電気モーターの走りのイメージは、個人的には期待値を少し下回った。確かに十分なパフォーマンスを持つし、メカニカルトレーンの静粛性は明らかに高い。しかし全体として静粛性の高いクルマであるかと言うと、気になる部分があって必ずしもそうとは言い切れないのである。


◆「音」と「バッテリー」


気になったのは、モーターが発生源と思われる高周波のウィーンとうなる音で、これが発生するのが、走り始めと止まる直前、即ち他の音源が鳴りを潜めた時に出るから余計に強調されてしまう。それにタービンが回るようなビューンという音も、変速の度に聞こえる。この発生源は不明だが、直6エンジンではMHEVでも出ていないので、PHEV特有のものと思われる。


電動モーターを使って走り出すPHEVやBEVの場合、走り始めや止まる直前はロードノイズも風切り音もなく、偏にメカニズムを発生源とする音に限られてしまうので、一度気になりだすと実に癇に障るのである。ましてやそれが、ハイエンドの領域に近づいた価格帯のクルマとしては、やはり問題にせざるを得ない。


次に17.8kwhと言うバッテリーの搭載量だ。PHEVはこの搭載量が大きな問題で、積み過ぎれば重くなるし、価格も高くなる。でもそれが少ないと電気で走る距離が短くて、長距離を走ろうとすると、ほとんどをガソリンで走る結果となる。三菱『アウトランダー』のようにシリーズハイブリッド的色彩が強いとあまり気にならないが、それでも22.7kwhと言う結構な量のバッテリーを搭載しているし、輸入車でも比較的最近の傾向としてはPHEVでもバッテリー容量を拡大している印象が強い。


CX-80はカタログの上では67kmのEV走行ができることになっているが、実際に1週間試乗してみて、満充電からのEV走行は40km走ればいい方という印象で、とても67kmは走れない。となると片道20kmが良いところになってしまう。


とまぁ、700万円オーバーのクルマとしては色々と気にらない点が出てきてしまうが、350kmを走行しておおよそ14.2km/リットルのガソリンでの燃費を記録したから、2120kgもある車重を考えればまあ立派な値である。そして長距離で疲れない快適な運転空間と言おうか、視認性やシートの作り、乗り心地などなどトータルの快適性はとても高い。とりわけ高速を巡航している時の快適性は非常に高い。確かにリアサスペンションのセッティングを柔らかい方向に変えた効果はきっちりと出ている。と言っても完ぺきではないのであと一歩、熟成を重ねて欲しい。


◆700万円オーバーのクルマとして、納得がいくか否か


では700万円オーバーのクルマとして、納得がいくか否かという点だが、個人的にはやはり納得しにくい。とりわけ近年のクルマの差別化は性能や高級感だけでなく、エンタテイメント性も大きな付加価値になっていると思う。その点、マツダのクルマはどれも地味なつくりになっている。


例えばBMWやメルセデスでは、センターディスプレイとメータークラスターが一体化した巨大な曲面ディスプレイを採用し、昔は単なるギミックだといったアンビエントライトなども効果的に活用している。マツダの場合は昔ながらのメータークラスターと大きくなったとはいえ12.3インチのディスプレイはとても小さく見える。だから、乗り込んで運転席に座ってみると、昭和とは言わないが平成の景色がそこにあって、新鮮味という点では損をしている印象が強いのである。


個人的な要望としては、可能EV走行距離を伸ばして欲しいことや、より新鮮味(上質感は十分だが)のあるインテリアのデザインにして欲しい。あとは余計な気になるノイズを消して欲しいといったところである。


■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★


中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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