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【VW パサート 新型試乗】10年ぶりに「らしい」VWが戻ってきた…中村孝仁

レスポンス / 2025年1月31日 20時30分

やっとフォルクスワーゲンが帰ってきた。まさに2015年のディーゼルゲート以来10年ぶりに「らしい」VWが戻ってきた。出直しの第1作は『パサート』である。


このクルマ、VWの歴史を紐解くと、新世代のVWとして、VWが初めて作った(その前のK70はNSUの開発だったので)FWDの駆動方式を持つモデル。同時に貿易風を意味するパサートと名付けられたいわゆる「風」シリーズの最初のモデルである。だから、出直しとしてパサートが選ばれたのは、けだし真っ当なチョイスであったと言えよう。


◆室内に入ってみると、明らかに新しい


何をもって「VW is back」というかと言うと、かつてVWというブランドは、地味ながら堅実で、誰に選ばれても間違いのないチョイスと言える輸入車のエントリーモデルを作り続けてきた。ところがそんなVWがへまをやらかした。それがディーゼルゲートである。


そこから一気に電動化へ舵を切ってみたものの、その方針転換は失敗。日本市場でも改めてICE(内燃機関)を中心としたラインアップに戻してみたものの、クオリティは低く、地味はそのままに値段だけが上昇して、誰にでも薦められるブランドから転げ落ちてしまった。そして、最近はようやくクオリティこそ向上してきたものの、かつてのVWらしい面影は影をひそめてしまった印象が強かったのである。


しかし、新しいパサートは違う。相変わらず地味な装いで、外観だけを見ると顔立ちこそ『ゴルフ』風に変化したものの、その姿は先代とさして変わらず、単なるマイナーチェンジ風に見える。ところが室内に入ってみると、明らかに新しい。


センターのディスプレイは12.9インチだそうだが、実に大きく立派に見える。インパネの作りも上質感が漲り、安っぽさはどこにもない。メータークラスターにはデザインこそ代わり映えはしないものの、フルディスプレイに変わり、現代風にその表示も変更できる。シートはエルゴ・アクティブと名付けられたマッサージ機能の付いたシートが全グレードに標準。アンビエントライトも全30色が用意されて、気分に合わせて変えることができる等々、いわゆるハイエンドのモデルが使うような装備はほぼすべて用意されている。


◆かつてないほど良い乗り心地


とにかくその乗り心地はかつてないほど良い。これを実現しているのがどうやら新しいDCC Proのようである。DCCはダイナミック・シャシー・コントロールという、いわゆる電子制御可変ダンピングサスペンション。これにステアリングの重さや、エンジンのパワーマッピングなどと統合制御して、スポーツ走行やコンフォート走行に対応するものだが、今回はそれがProに進化した。


具体的にはカヤバが供給する伸び側と縮み側を独立して制御するダンパーの効果である。しかもそれは4輪独立して可変制御するのだというから、素晴らしい乗り心地と正確なステアリングフィールをもたらすのだと思う。


ドライバーは例えば、コンフォートモードとかスポーツモードなどを任意にチョイスできるが、以前だとスポーツにすると結構顕著に硬い足になることが実感されたが、今回の場合確かに硬めにはなるものの、顕著ではない。ところが、それでいながら、スポーツモードに相応しいステアリングの切れ味やコーナリングフォースを体感できる。


コンフォートにしておけば見事なほどフラットライドを実現するのだから、DCC Pro、恐るべしで eTSIの場合Rラインなら標準となるが、今回は試乗したエレガンスにそれが装着されていた。装着タイヤはRラインと違って18インチだが、日本の速度域だと、18インチで十分。むしろ快適さは増すのではないかと思える。


◆「仕事きっちり」まとめ上げた逸品


もう一つ気に入ったのは7速のDSGである。ステップATが進化した今、ツインクラッチのトランスミッションはオワコンかと思っていたが、今回のパサートに装備されるそれは、渋滞中の尺取り虫走行でも気になるギクシャク感もなく、発進は非常になめらか。そして変速自体もほぼATレベルだから、ドライビングを楽しむ時はやはりATよりも楽しく、これまではネガ要素だった極低速走行時のギクシャク感が消えたから、またステップATに対してアドバンテージを得たような気がする。


また、このクルマ、かなり頻繁にエンジンを休止する。低負荷時には2気筒になる可変気筒システムも備えるが、街中の走行で精々40~50km/hで走っている時も、アクセルを戻すとすぐにエンジンが止まり、アクセルを入れれば瞬時に復帰するのだが、その際の違和感もほぼない。


クルマは正直かなりデカくなった。古い駐車スペースだと白線内に止めるのがぎりぎりだし、前方向はだいぶ飛び出してしまう。たまたま地下駐車場で旧型のパサートに遭遇し(ただしセダン)たのだが、あちらがきっちりと柱の手前に収まっていたのに、こちらは柱からノーズがだいぶはみ出ていた。


今回のパサート。マイルドハイブリッド仕様だから、完全なICEだけとは違うが、BEVとは違ってメカニカルな要素(最大の例がDCC Pro)をふんだんに含み、そのメカニカルな部分の進化が著しく、堅実で地味ではあるけれど、VWらしい「仕事きっちり」にまとめ上げた逸品。久しぶりにVWの底力を垣間見た。


■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★


中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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