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【マツダ3 SKYACTIV-X 新型試乗】「スカイアクティブX」は一体何を残したのか…中村孝仁

レスポンス / 2025年2月7日 12時0分

先月末、日刊自動車新聞電子版で、「マツダ、SKYACTIV-Xエンジンの開発と生産の打ち切り」が報じられた。


SKYACTIV-X(スカイアクティブX)は2017年に発表、2019年に『マツダ3』に搭載されてデビューした。デビュー当時は180ps、224Nmだったパフォーマンスも、今は190ps、240Nmにアップしているが、出た時に思い描いたディーゼルのトルクと、ガソリンの軽快さを併せ持つという期待は、正直言うと明確に裏切られた印象だった。「火花点火制御圧縮着火」(SPCCI)と呼ばれた実現不可能と思えた技術を実現してしまうあたりは、流石ロータリーをものにしたマツダらしい。


開発も止めてしまうというから今後のさらなる熟成はない。そして、2027年には新開発の「SKYACTIV-Z」と呼ばれる新エンジンが投入されて、そこに引き継がれるのだろうが、ではスカイアクティブXはいつまで販売されるのだろうか?ということで、惜別も兼ねてこの道半ばで消えゆく運命のエンジンに試乗してみることにした。


◆実は進化していたSKYACTIV-X


パワーアップされたのは、誕生から1年を経た2020年11月のこと。その新しくなったスカイアクティブXに試乗した時、当時のマツダ3の主査である谷本智弘氏に、「スカイアクティブXのゴールはどこですか?」と尋ねてみたものの、「数値的なゴールはお答えできません」とのことだったが、まだまだ日々進化させていることだけは教えてくれた。つまり、あれからすでに4年少々の月日が流れているのだが、進化し続けていたと解釈してよいのだと思う。ただし、数値的な変化は2020年以来無い。


このパワーアップは2021年2月から始まったMAZDA SPIRIT UPGRADE(マツダ スピリット アップグレード)によって、それ以前のモデル、即ち初期モデル(2019年11月8日~2020年11月27日生産のe-SKYACTIV X搭載車)でもエンジンとATの制御プログラムを変えるサービスを受けることによって、新たなパフォーマンスを得ることができた。と言ってもその当時試乗はしてみたものの、10psと16Nmのレベルアップを体感するまでには至らなかった。


2021年10月にはエンジンサウンドの作り込みが行われ、同時に燃費を改善したことにより、e-SKYACTIV X搭載車のすべての機種が、2030年度燃費基準における減税対象となるなどの変更を受けている。少なくともニュースリリースから読み取れるスカイアクティブXの変化はこれだけだ。


◆SPCCIは一体何だったのか?


では今回改めて乗った感想は?ということになるのだが、少なくともマイルドハイブリッドを仕込んだガソリンエンジン車としては、とてもスムーズだしパワーバンドも広いという印象を受けた。


最後に試乗したのは2022年のことで、その時はたまたまホンダ『シビック』と乗り比べをした。そして両車は拮抗した性能を持っていることが確認できた旨記しているのだが、方や夢のSPCCI技術のエンジン、此方既存のごく普通のICEで、その性能差が無いことが確認できてしまったわけだから、ではSPCCIは一体何だったのか?ということになってしまう。


燃費にしてもやはりと言うか想像通りだったが、今回は総平均で12.3km/リットルである。ほとんど一般道に終始したので、高速を走れば燃費が伸びたことは想像に難くない。しかし、圧縮比を16.3という極限まで引き上げた、恐らく血の滲むような努力の賜物としては、やはり失望で、これはユーザーのみならず技術者にとっても同様の結果なのではないかと思う。


◆理想的ICEの礎を「Z」に受け継ぐ


今、2027年登場を目指して開発が進められているというスカイアクティブZは、マツダ毛籠社長の言葉を借りれば「低回転から高回転まで広い領域での超希薄燃焼(スーパーリーンバーン)を目指す」というが、実は同じようなことはすでにスカイアクティブXでも実現している。ということは、スカイアクティブZはより広い領域で、スカイアクティブXで実現した燃焼をさせるのではないか?という推論が成り立つ。


だから、確かに我々が思い描いていたような理想的エンジンをスカイアクティブXでは実現できなかったが、その開発の過程で別な手法も取り入れて、その理想に近づける技術を見つけたからこそ、敢えてスカイアクティブXを捨て、スカイアクティブZとして投入するのではないか?と想像してしまうのである。つまり、スカイアクティブXは次につながる理想的ICEの礎を作り上げた、と見ることも出来るわけである。


現行のスカイアクティブXを搭載したマツダ3は、とても良くできたガソリンエンジンを搭載したモデル、という評価で終わってしまう。2027年と言えば、現行マツダ3誕生から8年が過ぎて、モデルチェンジのタイミングと言っても良い時期だ。だからこそ次期マツダ3に期待してしまう。


◆次期マツダ3に期待するのは


MTの現行モデルは、ロータリースイッチを用いたセンターディスプレイコントロールを持っているが、MTとの相性は良くない。何故なら肘をセンターコンソールにおいてシフト操作をしていると、腕が気付かぬうちにロータリースイッチを押して、センターディスプレイの表示が変わるからである。一週間ほど乗っていると、そうしたところに気が付く。


マツダのコックピットレイアウトは、最新モデルでも結構伝統というか、過去にとらわれたデザインで新鮮味に乏しい。ドイツ車のようにとは言わないが、メーターディスプレイと、インフォテイメントディスプレイが一体化した巨大ディスプレイが今のトレンドだと思うので、そちらにシフトしてもらいたいものである。


■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★


中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来48年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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