海女発祥の地の漁師が能登半島を支援 同じルーツの仲間に「義援金」贈呈
RKB毎日放送 / 2024年4月18日 19時43分
能登半島地震で被災した石川県輪島市海士町に700キロ離れた福岡県の漁師らが義援金を贈り、400年の時を超え同じルーツを持つ仲間を支援したいという気持ちが寄せられました。
◆被災地を訪れ「悲しいね。涙が出ました。来る途中に」
18日午前、能登半島地震で被災した石川県輪島市を訪れたのは福岡県宗像市の漁協や市役所、宗像大社の関係者です。
宗像漁協・八尋時男組合長「思ったよりひどいですね。これだけの船が動けないのは大変なこと」宗像市の漁師たちは「ある理由」で輪島市海士町のために義援金を集めてきました。
輪島市海士町・橋本拓栄自治会長「こんな時だからこそ助けていただいて、忘れないでいてくれたということがうれしいです」
義援金募集の中心となったのが宗像市の鐘崎地区の漁師たちです。
”海女発祥の地”鐘崎 「海の道」で能登半島とつながる
今林隆史記者「海女発祥の地とされる宗像市の鐘崎地区。能登半島と深い縁がありました」
潜水漁を生業とする海女発祥の地とされる鐘崎。「海の道」で能登半島とつながっていたのです。
良い漁場を求め各地に出稼ぎに行っていた鐘崎の海女は、対馬海流に乗って700キロ離れた能登半島にも移動していました。
海の道むなかた館・岡崇さん「山陰の方で漁をしていた人が遭難をしてですね、漂流をいたしまして、流れ着いたのがたまたま石川県輪島だったと。そこでまたその方々が漁を始めてですね、海女が潜って。獲れたアワビをまたこの九州の方に持ってくる。ということでその後ですね、冬の2月に輪島に来られて、そしてまた秋に戻ってくるということを繰り返していたようです」
およそ400年前の江戸時代には、鐘崎から輪島市海士町に移り住んだという記録が残っています。
鐘崎と海士町は、生活習慣が似ていると言われているほか、湯気のことを「ほけ」と言うなど共通している方言が複数あります。
宗像漁協・八尋時男組合長「輪島の海士町は、うちの先祖が移り住んだということを聞いて、何らかの支援をしてみらんかって考えてみらんかというのがきっかけで、皆で話して少しでも応援できる部分はしていきたい」
能登半島地震の後、鐘崎の漁師たちは同じルーツを持つ海士町の漁師を支援しようと義援金を集めてきました。
宗像漁協八尋時男組合長「漁師は漁に行って初めてやはり漁師ですからね。復旧復興が一番ですけど。その前にやっぱり漁に行けるようになってほしいと思います」
宗像漁協に漁船の提供考える漁師も
能登半島では多くの漁師が漁船を失ったことから、石川県漁協は再び漁ができるように中古漁船の情報を集めています。
鐘崎には漁船の提供を考えている漁師も複数います。
宗像漁協・権田幸祐さん「能登半島が被害で大変なことになっているということで、もしですね、使えるのであればそこに寄付しようかなと考えている」
権田さんは、共に漁を営んできた父親が去年倒れ1人で使うには17トンのこの船は「大き過ぎる」と感じるようになりました。
とはいえ、まだまだ使える愛着のある船。
手放してもいいと考えているのは、子どものころから教わってきた「能登との歴史的なつながり」が理由です。
宗像漁協・権田幸祐さん「古い漁業の歴史とか、私たちのアイデンティティーの一つでもあるんですよ。いろんなところに分派していって、村を作ったりとかというのは小さいころから習っていて。それが私たちの誇りでもあったし。実際そういった人たちが生活している地域があるじゃないですか。それはうれしいですし、同じ仲間じゃないですけど、そんな気持ちはありますね」「(船が)もし使えるんであれば、役に立てたらありがたいな」
宗像市の一行は、18日午後、輪島市役所を訪れ、輪島市海士町の自治会に対し、宗像漁協から461万円、宗像大社からおよそ100万円の義援金を手渡しました。
また、宗像市は被災した輪島市の負担を減らすためにふるさと納税の事務作業を代行した「代理寄付」1200万円あまりの目録を輪島市長に贈りました。
輪島市・坂口茂市長「こうした時に救いの手を差し伸べて頂けるのは本当にうれしい、心にしみることでありますので、市としてもしっかりとした繋がりはしていきたい」
同じルーツを持つ漁師仲間が再び海に出る日のために・・・。
鐘崎の漁師たちは、現地の意向を確認した上で、今後どのような支援が可能か考えていくことにしています。
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