全国で2番目に混雑する鉄道が開業100年 黄色い600形は廃車へ 「悲運の鉄道」は今、再開発ど真ん中の注目路線に
RKB毎日放送 / 2024年5月23日 19時3分
朝の通勤時間帯。全国で2番目に混雑する鉄道が九州にある。100年前の大正時代「宮地嶽線」として開業した西鉄貝塚線だ。昭和の大恐慌や戦争で当初の延伸計画がことごとく頓挫し「悲運の鉄道」と呼ぶ人も。そして今、わずか2両編成の小さな鉄道は、今再開発のど真ん中を走る注目の路線に変貌している。
黄色い600形が走る11キロ
西鉄貝塚線は、福岡市の東部・東区箱崎の貝塚駅から福岡県新宮町の西鉄新宮駅まで11キロをつなぐ鉄道。全部で10駅ある単線で、2両編成の黄色い600形が始発駅から終点までの約20分を走る。
国土交通省の調査によると、貝塚線の名島駅から貝塚駅までの朝の通勤時間帯の混雑率は154%。東京都の日暮里・舎人ライナー(赤土小学校前~西日暮里)の155%に次ぐ混雑率だ。
100周年を記念したラッピング列車
23日、開業から100周年を迎えラッピング列車がお目見えした。出発式には地元の保育園に通う園児らも参加した。
子供と参加した母親
「キャラクターがとてもかわいらしくて早く乗ってみたいなと思います」
「運転席が先頭車両だと見えるので、運転手の方が頑張っているところを子供といつも見て応援しています。」
3つの異なる路線と接続 利便性は抜群
多くの人が利用する理由のひとつは、約11キロの間に3つの異なる路線と接続していて乗り換えがとても便利なこと。起点となる貝塚駅で福岡市営地下鉄箱崎線に。途中の和白駅ではJR香椎線に、そして千早駅ではJR鹿児島線が接続している。
開業は大正時代「三社参り」が売り
西鉄貝塚線が開業したのは、今から100年前の大正13年=1924年で、当初は、福岡市の新博多~和白間で運行を開始した。1951年には福岡県福津市の津屋崎まで開通、このころは「宮地岳線」と呼ばれていた。(1950年ごろまで表記は宮地嶽線だった)
研究を続ける福岡鉄道史料保存会・理事長の吉富実さん(69)は、こう話す。
福岡鉄道史料保存会 吉富実理事長「太宰府・筥崎・宮地嶽の三社参りを宣伝して、昭和40年頃までは、お正月は三社参りの切符を売るとか、そういうことをして乗客を誘致していました」
恐慌と戦争で「悲運の鉄道」に
西鉄の元社員でもある吉富実さんによると、開業当初は壮大な計画があったそうだ。
福岡鉄道史料保存会 吉富実理事長「昔から、福岡と(炭鉱で栄えていた)飯塚を結ぶ鉄道計画は博多の財界の悲願だったので、飯塚まで伸ばすのが宮地岳線の最初の計画。ところが昭和の恐慌で頓挫をして。さらに、北九州の折尾と福岡を結ぶ急行電車の計画もあって、計画を昭和12年(1937年)に申請をしたんですが、半年後くらいで日中戦争がはじまって軍事目的以外の投資を抑制されたので結局なくなってしまいました。貝塚線は一人前にできないまま今まで来ている、ちょっとかわいそうな路線であります。そういう意味では悲運の鉄道なんです」
その後1979年、福岡市内を走る電車の廃止に合わせて千鳥橋~貝塚間の福岡市内への乗り入れ区間が廃止。採算ラインの半分程度の利用しかない状態が続いていた西鉄新宮~津屋崎間も2007年に廃止され、路線の名称は現在の「貝塚線」に変更された。
利用者が増加に転じた「再開発」の波
一方、貝塚線の沿線では1990年代初頭から都市開発計画が進み、人口が増えている。香椎地区を副都心に、という福岡市の計画の一環で、東区の千早から西鉄香椎駅前までの約1.3キロが高架化された。住環境が向上したことで、周辺には多くのマンションが建設され、特に千早駅周辺はファミリー層を中心に人口が増加し、西鉄千早駅の乗降者数は1日平均6055人と、高架化された2006年から倍増している。
千早駅周辺の住民「住みやすいです。西鉄もJRもあるから便利です。すぐ天神にも博多にも行けるから。」
千早駅周辺の住民「子供がいてもすごしやすいですね。西鉄貝塚線は乗りやすくて、よく使ってます。」
千早駅前の「スポーツガーデン香椎」跡地には、民間が運営する公園を併設した複合商業施設「ガーデンズ千早」もオープンし、多くの人で賑わっている。
「まちづくりの中心になる鉄道に」
ガーデンズ千早 中村和央副館長「元々、ここではボウリング場、ゴルフの練習場、スポーツクラブをやっていましたが、施設の老朽化で建て替えが必要になりました。立地としては駅から近いこともありますし、東区は非常に人口が増えている地域で、地域のみなさまに憩える場を提供するとかちょっとした充実感を味わえるような場所を提供したかった」
2006年4月に約27万4600人だった福岡市東区の人口は、2023年12月には約33万2800人まで増加。貝塚線の利用者は確実に増えている。福岡鉄道史料保存会の吉富実さんは期待を込めてこう話す。
福岡鉄道史料保存会 吉富実理事長「九大跡地の再開発がほとんど見えてきましたし、遊園地の「かしいかえん」跡地も広大な敷地がありますから。貝塚線には新たな福岡の東のまちづくりの中心になる鉄道になって欲しいと思います。」
沿線の遊園地 跡地は?高まる期待
1956年に開園した遊園地「かしいかえん」は入園者数の減少に加え、新型コロナの影響で業績が悪化したことで、3年前に閉園した。現在、跡地は再開発されるまでの期間限定で、キャンプやアスレチックが楽しめるアウトドア施設となっている。
地域の住民「かしいかえんがなくなってすごい悲しい。もう1回何かテーマパークみたいなのができて欲しいなと思います。」
「マンションとかが建つということを聞きました」
「子供が遊べるような、みんなが集まれるような。イベントをやって欲しいです」
また、西鉄貝塚線の起点となる貝塚駅周辺では国内最大規模とされる九州大学箱崎キャンパス跡地が2030年を目処に再開発される計画だ。住友商事を筆頭に、西鉄やJR九州が参加するグループが分譲住宅2000戸のほか、次世代通信技術を活用した最先端のまちづくりを目指している。
西鉄鉄道・事業本部長 松藤悟常務「貝塚線の沿線では香椎や千早などの駅周辺の開発、また、これから九大箱崎キャンパス跡地の再開発事業などによってさらなる発展が見込まれるエリアです。貝塚線の役割もますます重要になってくるのではないかと考えています。」
「直通化」の期待も試算では赤字
貝塚駅では福岡市地下鉄箱崎線との直通化の議論が長年の課題となっている。3年前に福岡市が行った試算では「初期投資に約155億円かかり、整備事業の収支が年間約2億6000万円の赤字。市は、直通化の「実現は困難」とした。ただ、当時の議事録によると「今後も検討していく」としていて、箱崎の再開発に合わせて議論が再開されるかどうかも注目されている。
一方、JR九州は、貝塚駅の東側に新駅を新設する計画で、利便性の向上が期待されている。
黄色い600形の後継車両は
西鉄貝塚線で運行している黄色い600形。長年親しまれてきたが、老朽化のため来年度から2027年度にかけ廃車となることが決まっている。後継として、西鉄天神大牟田線で使用していた車両を改修して導入する予定だ。
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