「決定文は人間が書いた文章ではない」元死刑囚の再審棄却に弁護団 10日抗告へ 女児2人殺害の飯塚事件
RKB毎日放送 / 2024年6月5日 12時51分
32年前、福岡県飯塚市で女の子2人が殺害された「飯塚事件」をめぐり、5日福岡地裁は元死刑囚の遺族が裁判のやり直しを求めていた2度目の再審請求を棄却した。
弁護団は、「全く不当なもの」だとして即時抗告するとの声明を出した。「理不尽な決定がなされた背景に、既に死刑が執行されており再審開始することが死刑制度の根幹を揺るがしかねないとの思惑があるものと推測せざるを得ない」としている。
登校中の女児2人が殺害された飯塚事件
1992年、福岡県飯塚市で登校中の小学1年の女の子2人が行方不明になり、翌日約20キロ離れた山中で遺体で見つかった。殺人などの罪で有罪が確定した久間三千年元死刑囚は、2008年に死刑が執行された。無実を訴える元死刑囚の遺族と弁護団は、裁判のやり直しを求めて2度目の再審請求を行っていたが、福岡地裁は5日、請求を退ける決定を出した。
ふたつの新証拠 福岡地裁「信用できない」
福岡地裁の決定を受け5日午前11時すぎ会見した弁護団は、新証拠として提出した2人の新証言をいずれも「信用できない」とした福岡地裁の決定に対し、「全く不当なものであって強く抗議する」との声明を出した。
弁護団「再審法の抜け穴を検察官が利用し裁判所は目をつむった」
会見で、飯塚事件弁護団・徳田靖之弁護士が訴えたのは、検察側に証拠開示の義務がない再審法の不備だ。
飯塚事件弁護団・徳田靖之弁護士
決定文は予想された最悪のパターンだ。読んで一番最初に感じたのは、「これは人間が書いた文章ではない」
証言した2人が30年近い年月を経て、自分とは関係のない人の無実を明らかにするために法廷に立った。
人間としての良心をかけて自分が黙っていることは人間として許されないという思いの上に、いろんな困難を乗り越えて法廷に立たれた。
それを人間として受け止めようとしない。だからこれは人間が書いた決定ではないというのが私の印象です。
それでは人間であるはずの裁判官がなぜ人間が書いた文章とは言えない決定を書いたのか。
それは死刑にしてしまっているからです。
この証言の価値を認めて再審開始することが我が国の死刑制度の根幹を揺るがしかねないという思惑の上に縛られて、2人の人間としての良心に基づく貴重な証言の価値を認めようとしなかった。きょうの決定はこれにつきるのではないかと私は感じています。
決定を読んでみますと、どうして信用できないのか、ということについて、女性の証言についてはふたつのことを言っている。
ひとつは、警察がそんな強引に調書をつくるような誘導性必要性は認められない。もうひとつは、証言にあたって弁護団に語った内容が少しづつ違っている。このふたつです。
しかし裁判所はこのような理由で女性の供述を信用できないというのであれば、女性が最初に警察から事情をきかれた時の捜査報告書を出させれば一発で決まるんです。
我々はそれを出してくれと言い続けました。
女性は供述調書を作る前に警察から事情を聞かれています。
だから必ずその時の捜査報告書が存在するんです。それを検察官が提出すれば最初の時に女性がどう述べていたか誰よりもはっきりするんです。
しかし検察官はそのようなものはないと言い続けて、裁判所は、「本当にないのだったら警察から送付されたリストを出せ」と言われた時には「そんなことを言う権限が裁判所にはない」と言ってこれを拒否しました。
私は、人間である裁判官であったらこの決定を出すなら「リストを出せ。隠しているものを出せ」という。それを見て一番最初の段階で女性が警察にどう述べていたのかということを確認すれば信用できるかどうかが一目瞭然なんですよ。
そういうことをしないでおいて、まさに人間の思いを込めて証言された女性の証言をこともなげに「信用できない」とした。
「自分のせいで久間さんを死刑にしたかもしれないという自責の念で法廷に立ったんだと弁護人は言うけれど、そんなことを考慮しても信用できないという判断にかわりはない」と平気で言うんです。
私はこの決定をみて、結局のところ”再審法に証拠開示についての規定がない”という、現在の再審法の抜け穴を検察官が徹底的に利用し裁判所はそれに目をつむった。それ以外に言いようがない。
弁護団は、10日に抗告するとしている。
再審法の改正求め日弁連が声明
刑事訴訟法の再審規定(再審法)については、日本弁護士連合会が、先月29日改正の実現を求める声明を出している。声明では再審開始決定が確定するまでに事件発生から約57年を要した「袴田事件」を例に挙げ、「捜査機関が保有している証拠の開示に関する規定が存在しておらず、再審請求事件の審理に関する手続規定もないに等しい。
そのため、再審請求事件の審理に関しては、「再審格差」とも呼ばれる裁判体による格差が生じており、再審請求人の適正かつ迅速な審理を受ける権利が保障されているとは到底言えない状況。直ちに法改正を実現すべきである」としている。
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