タイトル学校のBBQで18歳生徒が焼死 消された「危ない」の声 危険性を指摘した生徒を理事長が無視か
RKB毎日放送 / 2024年7月8日 17時11分
去年5月、福岡県柳川市の美容専門学校で、生徒4人がバーベキューの火で死傷した事故について、第三者員会の調査報告書がまとまった。
ワンマン経営の理事長に誰も意見ができない体制が浮き彫りになっているが、事故直前、アルコールの投入を発案した理事長に、会場にいた生徒のひとりが危険性を指摘していた可能性が明らかになった。
事故後初めて会見を行った理事長は、「別の会議」を理由に途中退席し、説明責任が果たされたとはえいない状況だ。
このまま幕引きとなるのか。
消毒用アルコール1リットル投入し炎上
事故が起きたのは去年5月24日。福岡県柳川市にある「ハリウッドワールド美容専門学校」では正午過ぎから全校生徒約470人が参加したバーベキュー大会が開催されていた。
大会開始から約20分後、火の炭が入ったコンロの火力を上げるため、20代の男性職員が約1リットルの消毒用のアルコールを注ぎ、爆発的に炎上。
近くにいた生徒4人に燃え移り、当時18歳の男子生徒が死亡したほか、3人が全治1週間から3か月ほどのやけどを負った。
事故の原因などを調べるため、去年8月から6人の有識者で作る第三者委員会が立ち上がり、教職員や生徒など学校関係者への聞き取りや現地調査を実施。
事故から1年余りが過ぎた7月4日、報告書がまとまったが、事故をめぐる学校のずさんな対応や、歪んだ経営体質などが浮き彫りになった。
発案は理事長「肉を早く焼くため」
報告書によると今回の事故の原因となったコンロにアルコールを投入するという、「非常識な発案」は、古賀英次理事長が「熱中症や食中毒の予防や肉を早く焼くため」に行ったものだった。
この時、多くの職員が危険性を感じていたものの、「理事長には何も言えない」「何を言っても無駄」という意識が作られていて、質問や意見すらできなかったという。
生徒が危険性を指摘していた
生徒の保護者も「“裸の王様”で誰も意見できない体制があった」と話す。
さらに今回の調査で、当時、生徒が理事長に対しアルコール投入の危険性を指摘していた可能性が明らかになった。
報告書より
職員
「火起こし隊の生徒が、理事長に危ないと言ったが、知らんふりをされたと聞いた。」
第三者委員会は報告書に、職員への聞き取り内容を引用して記載。
結局、アルコールの使用は断行されてしまった。
事故の背景に“ワンマン経営” 誰も意見できない
事故の背景にあったのが長い間続いてきた“ワンマン経営”だったという。
この学校では古賀理事長が先代の母親の後を受けて、35年以上、実質的に理事長を続け、息子が副理事長、妻が学園長を務める、「家族経営」が行われていた。
アルコールを投入した職員 直前に理事長から叱責
報告書では理事長による日常的なパワハラ的な行為の可能性も指摘された。
職員たちの証言によると、事故の約1週間前に、コンロにアルコールを投入した20代の男性職員が遅刻し、理事長が「退職届を書かんね」などと大きな声で叱責した。
報告書より
職員
「男性職員は何も判断がつかない状態まで追い込まれていた様子だった」
男性職員自身も「バーベキューの時に自分たちのクラスで食べるのが遅くなって、怒られるのが嫌だった」と話している。
ほかにも「怒鳴られて退職を考えた」「理事長は時期によって“ターゲット”を決める」などと、理事長によるパワハラ行為を伺わせる内容が列挙されていた。
会場には万一に備えた”水がなかった”
さらに問題だったのが、学校側のずさんな対応だ。
「ハリウッドワールド美容専門学校」ではすべての学校に作成が義務付けられている「学校安全計画」や「危機管理マニュアル」も作成されておらず、教職員への研修も行われてこなかった。
当日の会場にも水を入れたバケツは用意されていなかったうえ、水道も開栓ハンドルが取り外されていて使える状態ではなかった。
調査に加わった医師は、「大量の水をかけて冷やすことができれば、男子生徒の命を救えた可能性もあった」と話す。
報告書より
医師
「直後に大量の水を冷やすことを行えば、重症化を防ぎ救命できた可能性もあったかもしれない。組織としての未熟さを現す実態は枚挙にいとまがない」
理事長は「まるで接待でもしているかのような対応」
また、第三者委員会は保護者や生徒への対応にも問題があったと指摘。
亡くなった男子生徒が全身にやけどを負い、ドクターヘリで搬送されたが、保護者は病院に到着するまで、学校側から命の危険があるとは知らされていなかったという。
病院で理事長と面会した保護者は、「まるで会合の接待でもしているかのような対応」で謝罪の意は感じられなかったと話している。
また事故後も警察や消防による現場検証を行われる中でも約50分間にわたってバーベキューは続行され、生徒を移動させるなどの適切な対応を取らなかったと批判された。
最終的に第三者委員会は、理事長による「強権的な経営体質」が変わらない限り、同様の事故が再発する危険性が極めて高いと結論づけた。
理事長 事故後初の会見も会議理由に途中退席
7月4日、第三者委員会の報告書を受け取った古賀英次理事長が事故後、初めてとなる記者会見を開いた。
会見の冒頭、用意した紙に目を落としながら、約10分間にわたって、謝罪と後悔の言葉を繰り返し、最後に辞任を表明した。
この後、質疑応答が行われたが冒頭の謝罪などが疑われるような内容だった、
Q「事故の原因は?」
A 古賀 理事長「男性職員がコンロにアルコールを注いだことが原因」
Q「『退職届を書け』などという発言がパワハラにあたるとは感じていないのか?」
A 古賀 理事長「感じていない」
Q「理事長の言動が男性職員を追い詰め、事故に影響したと感じるか?」
A 古賀 理事長「感じていない」
Q「責任逃れのように見えるがその後の体制はどうするのか?」
A古賀理事長「まったく決めていない」
そして、会見から35分が経過したタイミングで、学校側は「次の予定がある」として打ち切ろうとした。
記者から質問の声が上がり続けている中で、まったく納得がいかなかったため、「何の予定があるのか」と糾弾したところ、理事長は「会議がある」と返答。その後、数問の質問に答えたものの、結局、会見は打ち切られた。
会場を後にしようとする理事長に、「この会見より大事な会議があるということか」と質したが、返答はなく、足早に立ち去っていった。
RKB毎日放送 記者 野島裕輝
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