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「まさか発電所が建つとは」住民説明会ないまま着工 健康被害尋ねる質問に、事業者は「回答差し控える」 国には”飲食店で顔見せ”で「理解得られた」と報告

RKB毎日放送 / 2024年7月10日 17時29分

住民説明会が開かれないままバイオマス発電所の建設が着工し、周辺住民の不安が高まっています。

住民が煙や排水などによる健康被害について「公開質問状」を送ったところ、事業者から返ってきたのは「回答を差し控える」。

発電所は年内にも完成する予定です。

住民「とにかく説明してほしい」

バイオマス発電は、間伐材や木くずなどを燃料とするもので、化石燃料を使わないことからクリーンな電源とされています。

そのバイオマス発電所の建設をめぐって問題が起きているのは、福岡県田川市。

住民たちは、早朝に「建設反対」ののぼり旗を掲げる運動をおよそ2年にわたって続けてきました。

反対する住民の一人・花石恵子さんは「たくさんの人に知ってもらい、自分ごととして捉えてほしい」と訴えます。

花石恵子さん「とにかく住民説明会を開いて、私たちの不安事項を払拭するような説明をしていただきたい」

住宅地から700メートル 3年前に着工

花石さんは田川市の中心部に近い星美台地区で区長を務めています。

RKB 西尾健佑 記者「閑静な住宅地が広がるこちらの地域、川の奥にみえるのが、現在建設中のバイオマス発電所です」

発電所から星美台地区の距離は700メートルほどです。

花石恵子さん「造成工事が始まったのは、2021年6月だったと思います。まさか発電所が建つとは思っていなかったですね」

2021年始まったバイオマス発電所の建設工事。

その2年前に花石さんや他の区長らが事業者と集まる場が一度、設けられたということですが・・・。

飲食店に集められ「顔見せ」のはずが・・・

花石恵子さん「市内の飲食店に近隣の区長が集められて、『計画を考えています』と言われました『これは何の会ですか?』って聞いたら『顔見せです』って。『こういうことを考えている。まだ決まりではないです』って感じではおっしゃっていたんですけど・・・」

田川市の飲食店で「顔見せ」と称して事業に関する説明が行われたというのです。

花石恵子さん「事業者は『まだ案の案なので、口外しないでください』って言いました。住民説明会であれば『口外しないでください』ってことはまずおかしいと思います」

国には「丁寧に説明し理解得られた」と報告

しかし、この飲食店で開かれた説明をもとに、事業者は、住民に対し、「丁寧に説明を行い理解を得られた」と国に報告していました。こうした姿勢が問題視される中、星美台地区の住民向け説明会は、工事着工からおよそ5か月が経ってから開かれました。

着工から5か月後の説明会「するつもりなかったんでしょ?」

花石恵子さん「結局工事の造成工事が終わってしまってから初めて住民を集めた説明会が開かれたんですけれども、工事ありきで説明をしてもらったところで、住民はかなり憤慨されて」

住民たちの知らないところで発電所の建設が進められたとして説明を求める声が相次ぎました。

説明会でのやりとり(2021年11月)

2021年11月27日

住民「説明会が求められたからするんでしょ?するつもりなかったんでしょ?」
事業者「どこかのタイミングでは」

住民「もう敷地も何も工事に入っているのに、それは言い訳でしょ?」
事業者「そうですね」

住民「住民説明会終わりましたということになっとるんやないと?」
事業者「理解を得られたという書き方をしているところがございました。それに関しましては書き方がよくなかったなと」

住民「理解が得られているわけないやろ、説明会をしてないんやから」
事業者「そうですね、順番が間違っていると思います」

RKBの取材に事業者は「落ち度だった」

飲食店で行われた区長らへの説明をもってなぜ住民の理解が得られたと考えていたのか?

RKBは、事業者である鹿児島市に本社を置く南国殖産のグループ会社・田川バイオマスエネルギーに質問しました。
田川バイオマスエネルギーは「心配な点や素朴な質問なども含めた質疑応答を行い明確に反対といった意見はありませんでした」と回答。説明会を実施したのが着工後になったことについて、事業者は「落ち度だった」としています。

ただ、建設現場の周辺には星美台地区含め合わせて3地区ありますが、住民全体への説明会を開く予定はなく、建設現場にある事務所で希望者に対して随時行っているとしています。

健康被害は?「回答差し控える」

住民団体は、今年2月煙や排水、騒音で健康被害が出ないかなどを尋ねる「公開質問状」を事業者に送りましたが、返ってきたのは「回答を差し控えさせていただく」というものでした。

条例の制定求め市に要望書

住民に十分な説明が無い状況が続いているとして、住民らでつくる「田川バイオマス発電所を考える会」は6月、田川市に再エネ発電に関する条例制定を求める要望書を提出しました。

田川バイオマス発電所を考える会 岡部康紀 代表「私たち市民の安全安心な暮らしを守るための願いを早急に実現いただきますよう、お願いいたします」

条例案には、再生可能エネルギー事業者が住民に対して説明会を開くことなどが盛り込まれています。

市長「住民の思いを形にする」

田川市 村上卓哉 市長「私の公約の中にも田川の自然を守っていくというものが入っております。みなさんの思いをきちっと形にすべく受け止めさせていただきます」

発電所を巡っては、田川市議会でも議員から質問がありました。田川市議会(6月)

佐藤俊一 議員「市長にも市として事業者に近隣住民との合意形成をはからせるために早急に住民説明会を開催させることを求めてきました。その状況をお尋ねします」
市長「事業者の南国殖産とは2度協議しています。住民説明会開催に向けての道筋が少しできたのかなという思いはしていますけれども、現在のところ明確にスケジュールをお示しできるのには至っていないのが現状」

発電所は年内に完成予定

再生可能エネルギー発電所の建設をめぐって各地で問題が起きていることを受け、今年4月再エネ特措法が改正され住民に説明会を開くよう事業者に義務づけています。

今年12月末までの完成を予定している田川バイオマス発電所。十分な説明がない限り事業に対する住民の不信感は拭えそうにありません。

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