「備えることを忘れるな」地図記号になった先人からのメッセージ”自然災害伝承碑”全国に2100基以上
RKB毎日放送 / 2024年7月11日 9時25分
昔から多くの被害をもたらしてきた自然災害。これを後世に伝えようと先人たちが建てた石碑が、分かっているだけでも全国に2000以上存在しています。
『備えることを忘れるな』という先人の声を活かそうと、国土地理院が定める地図記号にも追加されました。
まだ認知度は低いものの、災害から身を守るヒントが詰まっています。
「自然災害伝承碑」
民家も立ち並ぶ山の麓に、ひっそりと佇む石碑。懐中電灯の光をあてると、小さな文字がきれいに浮かび上がりました。
文字
「堤防決潰五箇所」
井浦憲剛さん
「こうすればきれいに災害の状況、概要が読み取れます。堤防決壊した場所が5か所だ、と書いてある」
うきは市の元職員・井浦憲剛さん(74)が案内してくれたのは、78年前に現在の福岡県うきは市吉井町で起きた災害を刻んだ「山潮記念碑」。
土石流による堤防決壊など、当時の被害状況が克明に記されています。
井浦さんは、旧吉井町の町史などをたどり「山潮記念碑」を「自然災害伝承碑」に登録する申請に携わりました。
「自然災害伝承碑」とは過去に発生した洪水や土砂災害の被害状況などが記されたモニュメントのこと。
自治体が国に申請し、承認されれば、国のホームページに公開されます。
井浦憲剛さん
「吉井町の歴史を記録した冊子が1巻から3巻まであって1巻に災害の記録が残っていました。その中に記念碑が載っていてそれを参考に調べました。歴史は繰り返すというか、災害も繰り返すから自然災害伝承碑に書いてあるように、災害に備えるのは非常に大切なことだと思います」
現在は全国620市町村で2100基あまりが「自然災害伝承碑」として確認・登録されています。
RKB 小松勝 記者
「これまでに大雨などの被害を受けてきたうきは市には複数の自然災害伝承碑が設置されています」
江戸時代の石碑に”穀物を蓄えよ”
実は福岡県内で最も多い7基が確認されているうきは市。中には江戸時代に発生した災害を記したものもありました。
井浦憲剛さん
「『儲』『穀』と書かれていますけど、穀物を蓄えるという記念碑です」
1720年に発生した土砂災害を記録した自然災害伝承碑には、被害状況だけでなく災害時には米など食糧の備蓄が必要だというメッセージが残されていました。
こうした石碑は全国でも珍しいと井浦さんは分析しています。
井浦憲剛さん
「今でも3日分の食糧を備蓄することが必要だと言いますが、江戸時代から災害に対しては穀物を蓄えておくことが必要だと。私もいろいろ記念碑を調べていますが、江戸時代に穀物を蓄えていたという記念碑は全国的にもほとんどないのではないか」
地図記号になったけれど・・・知らない人が多い
防災への関心を高めてもらおうと、国は2019年、自然災害伝承碑を地図記号に追加しました。しかし、その存在はあまり知られていません。うきは市民に聞くと、首をかしげる人が少なくありませんでした。
Q何の地図記号か分かりますか? うきは市民
「これがですか?ちょっとピンと来ませんね、分かりません」
うきは市民
「分かんない、分かりません」
パンフレットを作成して周知
井浦さんは自然災害伝承碑について知ってもらおうと、パンフレットにまとめて周知する活動も行っています。
井浦憲剛さん
「伝承碑が建っているだけでなかなか見て防災意識を高める役を果たしているかというと、ちょっと疑問な点はあるから、そこをうまくまとめて全世帯に配布しました。小中学校の防災の資料にもなるように学校にも配っています」
新たな石碑を発見!
最近、うきは市吉井町にある神社で1953年の西日本大水害について記された石碑を見つけたという井浦さん。
自然災害伝承碑への登録を目指して、市の職員と調べていた際、隣に置かれた石碑に気付きました。
井浦憲剛さん
「これは私もちょっと見過ごしていました。隣の石碑ばかり気になっていて」
調べてみると、1921年の洪水に関する記録が残っていました。
うきは市は今後、別の石碑1基とともにあわせて3基を国に自然災害伝承碑として申請する方針です。
『備えることを忘れるな』先人からのメッセージ
井浦憲剛さん
「記念碑を建てたのは『ここでこういう災害が起きたんだ』ということを後世に伝えるためだと思うんです。『ここでこういう災害が起きたから次の世代に住む人も災害に備えることを忘れるな』という。これが記念碑を建てた意義ではないでしょうか」
石碑に刻まれた「先人たちの記憶」。
そこには繰り返し起きる自然災害から身を守るヒントが記されていました。
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