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「妹は死刑でいい」法廷で証言した実の兄 姉に対する強盗殺人に問われたホームレスの妹 失踪後の家族の生活、裁判で明らかに

RKB毎日放送 / 2024年7月13日 17時1分

知人の女と共謀して姉を殺害し通帳などを奪ったとされ強盗殺人などの罪に問われているホームレスの妹。姉妹の兄が法廷に立ち、「死刑でいい」と証言した。

兄が語ったのは、妹に翻弄されてきたこれまでの家族の人生だ。

5人きょうだい 突然、失踪した妹

起訴状などによると、辻和美被告(52)は去年6月2日、知人の岡村恵美被告(47)と共謀して、福岡県水巻町の町営住宅で姉の辻つぐみさん(当時52)の首を圧迫して殺害し、通帳3冊と印鑑を奪った強盗殺人などの罪に問われている。12日の公判では、亡くなったつぐみさんと和美被告の兄が証人として証言台に立った。

兄は、5人きょうだいの長男。その下に、亡くなった長女のつぐみさん、次女の和美被告(52)、次男、三男(1999年に死亡)と続く。

兄や検察によると、高校卒業まで水巻町の実家に暮らしていた和美被告は、就職して福岡県外で暮らすようになった。その後結婚し、男の子と女の子を出産。

1998年に再び地元の福岡県水巻町に戻り、夫(当時)と子供2人で住んでいたという。しかし2008年、突然、和美被告の行方が分からなくなった。

失踪後「子供を引き取ってうちで面倒みました」

検察官 なぜ行方不明になったと思いますか。

兄 ーみんな見当がつきませんでした

検察官 被告の子供は?

ー近所で浮浪児みたいになって。つぐみと私たちの母とで迎えに行きました。うちで引き取って、子供2人が高校を卒業するまで面倒をみました。当時、長男が14歳、長女が13歳でした。

検察官 あなたと母、つぐみさん、和美被告の子ども2人、の5人で暮らした?

ーそうです。

検察官 主に誰が育てたんですか。

ー母とつぐみです。私は給料を渡していました。

和美被告の夫(当時)は長距離トラックの運転手で県外に出ていることがほとんどで、残されて街をさまよっていた2人の子供をつぐみさんときょうだいの母が迎えに行った。子供が住んでいた家は、家賃が滞納されたうえに、「散らかっていてすごい状況だった、と聞きました」。

行方不明になっていた和美被告は、2014年6月26日、北九州市内で保護された。迎えに行った家族が「何をしよんか」と尋ねても、和美被告は黙っていたという。その当時の状況を質問した検察官に、兄は感情をあらわにして大きな声で答えた。

検察官 その時、和美被告は、「申し訳ない」とか子供の安否を尋ねることはありましたか?

ーいっさい、ありませんでした。母親も怒っていました。

検察官 そしてまた行方不明になった?

ーはい

亡くなったつぐみさん「出歩かず、コツコツ貯金するタイプだった」

亡くなったつぐみさんは、高校卒業後、建設会社に勤めたあと和裁関係の会社へ。2013年から亡くなるまでは、近くの清掃会社でパート勤務をしていた。主に役所や病院の清掃を行っていたという。

兄によると、真面目で几帳面、コツコツお金を貯めるタイプで、1人でいることを好んだ。買い物に出る以外は外を出歩くこともなく、週に1度の休みには家で本を読んで過ごしていたという。

検察官 つぐみさんは外食はしていましたか?

ー極力していませんでした。

検察官 無駄遣いは?

ーいえ、安いやつを見つけてくる方です。

検察官 休みの日は?

ー基本自宅で本を読んだり、インターネットで小説を探して読んだりしていました。

そうした暮らしぶりもあったのだろうか、つぐみさんの最近撮った写真がみあたらず、兄は葬儀を出す際、警察が持っていた「免許証の写真」を遺影にした。

検察官に葬儀を終えた時の気持ちを尋ねられると、「やるせないですよね。金のないところに入らなくてもいいのに」と、肩を落とした。

見つかった借用書

12日の公判では、和美被告が長年にわたり姉のつぐみさんに金を無心していた状況も明らかになった。兄の証言によると、つぐみさんから金を借りたことを示す借用書が見つかったという。額は230万円から240万円。

検察官 和美被告はつぐみさんに、子供の制服代という名目で10万とか言って借りていた?

ー実際、(制服代というのは)嘘やったと、腹をかいた(怒った)、とつぐみから聞いています。

弁護人 なぜ和美被告はつぐみさんから借金したのですか?

ー「友達の子どもがどーたらこーたら、私が立て替えないけんけん」という話を一回聞いたことがあります

亡くなったつぐみさんから届いたメール

兄がつぐみさんに最後に会ったのは、亡くなる2か月ほど前の去年4月。つぐみさんから「母の体調が良くない。年内かも」とメールで連絡があり、その日の夜、兄はつぐみさんを訪ねた。

「病院代は大丈夫か。いくらか渡せるよ」と言うと、つぐみさんは「金のことは心配せんでいい。母の年金と自分の給料とで、どうにかなるから」と話したという。

きょうだいの母は、去年10月に亡くなった。

検察官から和美被告への気持ちを聞かれた兄は、質問にかぶせて即座に、意を決したように答えた。

兄「もう死刑で良いと思います。人殺すぐらいだから」

兄の言葉を、和美被告は、目の前にある机の一点をじっと見つめて聞いていた。表情が変わることはなかった。

なぜ和美被告は、家族のもとから失踪し、知人の岡村恵美被告とその家族に19年間で5800万円もの金を送金したのか。和美被告への被告人質問は、7月16日に予定されている。

RKB毎日放送 記者 浅上旺太郎

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