緊急時、窓ガラスを割って救助できない ”外国籍”理由に制限される消防団員の活動 なり手不足でも「非常勤特別職の地方公務員」がネックに
RKB毎日放送 / 2024年7月16日 16時40分
急激な人口減少を背景に、日本の社会は様々な分野で、外国人の存在なしには立ち行かなくなっています。
防災や救助など、「命」に直結する消防団員もそのひとつ。調査が始まった1955年には、194万人いた消防団員は年々減少し現在は76万人になりました。そうした中で、増えている外国人の消防団員ですが、彼らには「外国人」であるがゆえに、できない活動があるといいます。
ミャンマー出身のマウンさん(30)
福岡市から車で30分。都市部に隣接しながら自然豊かで観光スポットも多い人気のエリア・福岡県糸島市。
来日3年目になるミャンマー出身のテッミャッマウンマウンさん(30)は、市内の企業に勤めるかたわら、糸島市消防団前原分団に所属しています。
テッミャッマウンマウンさん「消防団に入ったのは、入社してからなので、3年目です。面白いです。ちょっと体使いますけど、面白いです。ちょっと大変です。」
退勤後、毎日2時間の訓練に参加
前原分団には現在自営業の人や会社員など71人が所属しています。
訓練は年間20回あまり行われ、マウンさんも、仕事が終わった後に参加しています。
テッミャッマウンマウンさん「ミャンマーにも消防団はありますが、誰もあまり興味をもたない。入ろうとしない。日本は地域貢献ということで、地域あっての私たちの仕事ですので地域の為に貢献しようかなと思って入りましたし、ミャンマーのことを皆に知ってほしいなと思って消防団に入りました」
普段は日本企業に勤める会社員
マウンさんは、ミャンマーからの技能実習生などを糸島市内の企業に紹介する仕事をしています。
この日は老人ホームで働いている技能実習生のカウンセリングに訪れました。
テッミャッマウンマウンさん「日本の生活はどうですか?」
技能実習生「ちょっと寂しいです。」
テッミャッマウンマウンさん「ミャンマーは小銭を使わないので、実習生は小銭の使い方が分からないので教えましたし、電車の乗り方とか色々教えました」
入団のきっかけは「仕事にいかす」
マウンさんが消防団に入ったきっかけは、仕事に役立てるためだったといいます。
テッミャッマウンマウンさん「消防団を通して日本人の知り合いをもっと増やしたいし、消防団の仲間もいろんな職場で働いている、もしその職場で海外人材を検討している企業があれば紹介して頂ければと思って、消防団に入ろうと思いました」
分団長の冨岡大将さんも、マウンさんの入団を歓迎しています。
糸島消防団前原分団 冨岡大将 分団長「日本人とか外国人とか関係なくきてもらえたら嬉しいし、消防団は、なかなか入る人が少ないという現状があるので、そういう方がきてくれるのはありがたいし助かっています。」
深刻ななり手不足 報酬アップの自治体も
消防団員のなり手不足は深刻で、福岡県では、県が条例で定める定数に対しておよそ3500人足りていません。
糸島市は、去年条例を改正し、消防団員の年間の報酬額を1000円アップし、3万6500円にしました。
さらに、1回の災害出動につき最大8000円、訓練では3000円を支給することにしました。
報酬をあげても確保できない
ただ、報酬をあげても、人口が減少している地域で団員を確保するのは簡単ではないといいます。
糸島市消防本部 警防課江藤亮玄 係長「市街地に関しては人口も多いし、団員になる人、対象年齢の人も多いですが、山の方の地域では団員が少なく、地域自体の高齢化もあるので消防団のなり手が少なくなっているのが現状です。大きな災害があると、団員数が少ないと活動ができないということも懸念されるので、多くの団員を確保するのがこれから必要になってきます」
外国人消防団員 3年で1・8倍に
こうした中、注目されているのがマウンさんのような外国人の消防団員です。
消防庁の統計によると、全国の外国人消防団員の数は2020年度269人から2023年度は479人に。2倍近くに増えました。
糸島市では3年前に初めて消防団に外国人が入団し、現在はマウンさん含めて3人の外国人団員が活動しています。
テッミャッマウンマウンさん「消防団に入ると同じ職場でなくても、同じ糸島に住んでいる方々とコミュニケーションがとれるし、私もここで長年働こうと思いますので、そういう意味ではここで出来るだけ知り合いを作った方が住みやすいと思う」
マウンさんは、消防団の活動についても「みんなのために動きたい」と語りました。
テッミャッマウンマウンさん「この地域に住んでいる方々の命を守るために消防団は作られたと思うので、火事や地震のときに皆さんの為に動けたらと思う」
外国人であるが故に制限される救助活動
一方で課題もあります。
消防団員は「非常勤特別職の地方公務員」であるため、日本国籍を持たない外国人には「公権力を行使」する救助活動に制限があるのです。
例えば、窓ガラスを割って救助するなど「消火活動中の緊急措置」や火災現場などから退去するように命令する「火災警戒区域の設定」はできないと考えられています。
外国人の団員ができる活動は
(1)災害時の避難誘導や通訳
(2)土のう積みなどの水防活動
(3)火災などの警戒活動
などとなっています。
増える外国人団員を背景に、消防庁は今年度中にも外国人消防団員の任務を明確にする方針を示しています。
「皆のために動きたい」というマウンさんのような熱意を、火災や地震などの緊急時にいかすにはどうしたらいいのか。
もはや外国人の存在なしには立ち行かない日本の社会。様々な分野で見直しが迫られています。
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