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五輪選手への誹謗中傷に松尾潔が警告「指先で人命奪う実例見ているはず」

RKB毎日放送 / 2024年8月7日 16時11分

パリオリンピックに出場している選手たちに向けてSNSなどで誹謗中傷が相次ぎ、日本オリンピック委員会(JOC)が声明を出す事態になっている。音楽プロデューサーの松尾潔さんは8月5日に出演したRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で、「指先で人の命を奪う実例を見てきたはず」とコメントした。

「ここまで言わせるな」という体温を感じるコメント

3年前の東京オリンピックのときにも問題になりましたが、パリオリンピックに出場している選手に向けた誹謗中傷が止まず、8月1日、JOCが異例の声明を発表しました。

「TEAM JAPANを応援いただく皆様には、誹謗中傷などを拡散することなく、SNS等での投稿に際しては、マナーを守っていただきますよう改めてお願い申し上げます。」

言われるまでもなく守らなきゃいけないことですが、「ここまで言わせるなよ」という体温みたいなものが行間からにじみ出ています。実際のメッセージはもっと長くて、例えば「体操競技では、自身の演技が終わった後、ライバルが演技を開始するにあたり、口に指をあてて、観客に静かにするよう求める選手がいました」「柔道では、試合の時には納得がいかないことがあっても、競技後に互いの健闘をたたえ合う選手がいました」など一つ一つ事例が書いてあります。

これはJOCの公式サイトに載っています。「こういうことを言わせるなよ」と思ってしまいます。「なぜこういう誹謗中傷をしてしまうのか」ということについて改めて考えてみます。

匿名で面識のない人を叩く流れはディストピアに向かう

東京都知事選が終わった後、再選を決めた小池知事ではなく、2位、3位の人たちを叩く状況がかなり長引いて激しくなっているように、今回のオリンピックに関しても、負けた選手、特に「勝つ」と言われていた、もしくはそう期待されていたのに負けた人に対して、声のボリュームが大きくなっているような気がします。

細かく分析しているわけではありませんが、言っていることに正当性があるかのような誹謗中傷が多く見られるそうです。これはネットの匿名性というところに乗っかりすぎだと思います。例えば、自分の身近な友達、同級生とか近所の方で、一生懸命スポーツをやっていて、試合に負けたときに、面と向かって叩く人っていますか?

目の前で叩かない、知り合いは叩かないとなると逆のことが分かりやすく浮かび上がります。つまり、実際に会うことがない人、知り合いじゃない人を思いっきり叩いているということですよね。もっと言うと、それまであなたの人生に何か関係ありましたか? 関わりがありましたか? という人です。これは本当に国を挙げて、こういう悪習を排除しなきゃいけないと僕は思います。でないとこの国はディストピアに向かってしまいます。

しくじった人を軽視する自分の気持ちに気づいても決別する機会に

人間というのはもちろん完全な生き物ではないので、意地悪なところや弱いところがあらかじめ備わっています。これはもう人間が人間であることのリスクなのかもしれません。聞くところによると、スポーツ以外にも、例えば進学や就職、結婚や恋愛、こういったことに残念ながら失敗というかしくじってしまった人をどうしても軽視してしまうという心理傾向は珍しいことではないそうです。

オリンピックやスポーツで「勝って当然」と思われていたような人が、そうではない結果に終わったとき、そこに加速度がついてしまうといいます。自分にもそういうところはないだろうかと考えてしまうんですが、その結果、心当たりがあることを恥じることもないと僕は思うんです。

そう思ってしまう「気持ちの発露」と、「実際に口にする」ことはすごく距離があるので、思ってしまったときにそれを恥じる気持ちがあって、そこでぐっと飲み込めば、もしかしたらその人はむしろ新しいステージに行けるかもしれません。「自分の中にこういうところがあったんだ。じゃあ、この芽を潰さなきゃ」と思う機会、そういう自分と決別するいい機会とも言えなくはないので。

指先で人の命を奪う実例を見ているはず

言葉にすればするほど、その言葉が自分の邪悪な気持ちをどんどん呼び起こして、ディスのためのディスみたいな感じになっていくというのが恐ろしいところです。そしてSNSは、いい具合に、いや悪い具合に、いくらでも受け皿になってくれるんですよね。

僕自身も自分が名前を出して仕事をしているということで、SNSでありがたい賞賛を受けることもあれば、自分の親がこれを知ったら悲しむだろうなというようなことを書かれたりすることもあります。

著名人たちにも、もちろん誹謗中傷してはいけないんですが、とはいえ僕たちは職業選択をした時点でまだ覚悟しやすい立場にいるとは思うんです。ただ、アスリートはそんな準備を普段やっていない。もうスターになって久しい人は別ですよ。例えばサッカーのロナウドのようなスーパースターはそういう危機に晒されてからの方がすでに長いのかもしれませんが。指先で人の命を奪うというのも、我々は実例をたくさん見てきているじゃないですか。

アスリートに国家を背負わせてはいけない

オリンピックが閉会式を迎えるころには「前半あたりは(誹謗中傷が)酷かったけど、途中で治まったね」というふうに、この国全体の空気を持っていきたいなと思います。SNSに書き込むだけじゃなく、仲間内の会話でも、特定の選手を指して「あれ惜しかったね」というのはいいけど、「あいつバカじゃねえの」とか言っている方がいたら、ちょっと一言添えて「それは言い過ぎじゃないのか」というような身近でできることからやっていきませんか?

社会学者の上野千鶴子さんが8月14日、Xに「マスメディアの報道はオリンピックばかり。うんざりする。アスリートに国家など背負ってほしくない。彼らがだんだんエゴイストに見えてくる。」とポストし、これがちょっと話題になっています。

7月29日のこの番組でも話しましたが、僕はオリンピックの開会式についてはオタクと言ってもいいくらいですが、競技はそんなに興味がなくなって久しいです。それでも、もちろん「選手たちは今頑張っているな」とは思うわけです。

上野千鶴子さんがXにポストしていた「国家を背負って欲しくない」というのはすごく考えるヒントを与えてくれると思っています。背負わせているから憎しみの芽にしてしまうんじゃないかなと思います。

「自分と同じ国籍を有する人が不甲斐ないことをやった」というような誹謗中傷は、国家を背負わせてしまっているが故に、無理やり当事者意識的なものを芽生えさせているから、酷いことを言わせてしまっているのかなとも思うのです。自国の選手が敗退したときに選手を攻撃したくなる気持ちが生まれる人は「そう思わせるオリンピックってそもそも何だろう」と再考してほしいです。

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