「黒パンと塩汁が毎日 ずっと空腹だった」16歳で経験したシベリア抑留 若い人に言いたい「平和に勝るものなし」
RKB毎日放送 / 2024年8月12日 17時54分
敗戦後、旧満州などにいたおよそ57万5000人の日本人が旧ソ連に連行された「シベリア抑留」。
寒さと空腹、そして過酷な強制労働により5万5000人もの人たちが現地で命を落としました。
16歳~18歳まで極寒の地に抑留された95歳の男性は、自らの経験を語り「してもいい戦争はひとつもない」と言いきります。
14歳で旧満州へ→ソ連の捕虜に
今年で95歳になった佐藤隆さん。
「シベリア抑留」の経験者です。
1943年、当時14歳だった佐藤さんは、「満蒙開拓青少年義勇軍」の一員として旧満州、現在の中国東北地方で働き始めました。
佐藤さんの旧満州での暮らしは、2年も経たないうちに終わりを迎えます。
佐藤隆さん(95)
「飛行機がバーっと斜めにおりてきて、バリバリバリって。それで、あ、戦争が始まったって」
1945年8月9日、「日ソ中立条約」を破棄したソ連が、旧満州への侵攻を開始。佐藤さんは、ソ連の捕虜となり16歳の若さでシベリアでの抑留生活が始まりました。
2メートルの雪がつもるシベリアで強制労働
強制収容所で暮らしながら、木材の伐採や運搬などの過酷な労働を強いられたといいます。
佐藤隆さん(95)
「林は2mくらいの雪に全部埋まっているんですよね。
ノコがひけるくらいの幅まで雪をどけて、ちょっと上のところからわっしょわっしょ引いて、寒いのに」
食事は、「黒パン一切れ」と具がない「塩汁」のみでした。
佐藤隆さん(95)
「うどん、天盛り、巻き寿司、考えるのは、そればっかり。
ずっと空腹なんですよね、黒パンと塩汁一杯、最後までそれだったから」
引き揚げ船を下り「お帰りなさい」に涙
佐藤さんは、1947年、およそ2年にわたる「シベリア抑留」を終え引き揚げ船に乗って京都の舞鶴港に到着しました。
舞鶴の婦人会の女性たちに「ご苦労様でしたお帰りなさい」と出迎えられた時、帰国を実感したといいます。
佐藤隆さん(95)
「桟橋を歩き始めると、舞鶴の婦人会の方々が『ご苦労様でした、お帰りなさい』って、歩く私を出迎えてくれました。ロシアの残酷な生活を2年間送って、小突き回されてですね、死ぬか生きるか、それで帰ってきて、その姿を見た時に涙がでました、帰ってきたなって」
「平和、これに勝るものは何もない」
佐藤さんは、95歳となった今も「シベリア抑留」の経験を語り継ぐ活動を続けています。
佐藤隆さん(95)
「戦争はしたらいかんっていうのと、していい戦争は一つもない。今の若い人に、言いたいです。
平和です、これに勝るものは何もない」
5万5000人が命を落とした
およそ57万5000人もの日本人が連行されたシベリアでは、抑留中に5万5000人が命を落としました。
遺骨の収集は今も続けられていますが、このうち、遺族のもとに遺骨がかえってきたのは、約2万人にとどまっています。(厚生労働省・2024年2月末時点)
80年ぶりに遺族の元へ戻った遺骨
今年6月、佐賀県吉野ヶ里町に住む西村正紘さん(83)の元に、80年ぶりに叔父・壽弥男さんの遺骨が届けられました。
西村正紘さん(83)
「父にも祖母にもゆっくりと報告したいですね、みなさんありがとうございました」
壽弥男さんの遺骨は、2002年にロシアのイルクーツク州にある埋葬地で収容されDNA鑑定によって身元が特定されました。
シベリアに連行された後、21歳で栄養失調のため亡くなったとされる壽弥男さんの遺骨。
戦後79年となった今年、ふるさとにある西村家の墓にようやく納められました。
「地球上から戦をなくしたい それを強く叫びたい」
西村正紘さん(83)
「夢にまで見た故郷だと思うので、こちらも壽弥男さんにゆっくり休んでくださいと声をかけたいですね。
戦争を知らない世代が多くなりますけども、絶対におこしてはいけない。
人の命を奪うし、財産を壊してしまいます。
地球上から戦を無くしたいですね、それを強く叫びたいです」
戦争の愚かさを身をもって語る体験者や遺族。世界では、今なお各地で紛争が続いています。
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