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「その時、私は何をしていたか」はっきり覚えている特別な日のこと 日航機墜落事故から「玉音放送」まで

RKB毎日放送 / 2024年8月13日 20時27分

あなたにとって、「自分が何をしていたか」をはっきり覚えているのはどんな日ですか? 誰にでも、特別な事件が起きた日の記憶があるはずだ。体験した世代で共有される記憶を例に、RKB毎日放送の神戸金史解説委員長は、「感情を同時に共有する」ことの意味について8月13日に出演したRKBラジオ『田畑竜介GrooooowUp』で語った。

日航機が墜落した39年前の「あの日」

RKB神戸金史解説委員長:今日(8月13日)の毎日新聞朝刊に、「日航機墜落から39年慰霊、誓う安全」という記事が出ていました。私は日航機が落ちた群馬県の出身で、当時は群馬県内の予備校に通うため独り暮らしをしていました。私は子供のころからニュースが好きで、新聞やテレビのニュースをよく見ていたんですが、この日(1985年8月12日)もNHKの7時のニュースを見ていたら、速報が入ったのです。「機影が消えた」という速報だったと覚えています。それからずっと、徹夜をしてテレビを見ていました。翌朝、日が昇って状況がだんだんわかってきて、生存者がいると。

ヘリコプターに吊り上げられ救助されるシーンを、ライブで見ていました。本当によく覚えています。

神戸:この記事を見て思い出したんですが、「あのニュースが起きた時、何をしていましたか?」と聞かれた時、すぐに思い出せるような事件のニュースって、何かあります?

坂田周大アナウンサー:東日本大震災は、スタジオでニュースを読んでいる最中でした。

神戸:2011年3月11日ですね。

橋本由紀アナウンサー:(以下、橋本):その時は、習いごとに行っていた車の中でした。最近のことで言えば、安倍首相の銃撃事件(2022年7月8日)。大学生だったんですけど、料理中にテレビで速報が入って、生放送に切り替わって。急にアナウンサーのトーンが変わって、ニュース番組が一気に変わったのを覚えています。

「感情の同時体験」が起きた100年

神戸:自分がその時に何をしていたか、と思い出せるほど、そのニュースがリンクしてしまうほど衝撃的なニュースはあると思うんです。私は、阪神・淡路大震災(1995年1月17日)、アメリカ同時多発テロ(2001年9月11日)、それから東日本大震災(2011年3月11日)がすぐに挙がりました。共通しているのは、「一体何が起きているんだろう…」「これからどうなってしまうのだろう…」という不安があるなあと思ったのです。全部、メディアがライブで伝えていたニュースなのですね。

坂田:あー、なるほど。

神戸:見ながらドキドキする気持ちが、日常の時間の記憶とともに、頭の中にあるんじゃないか。僕らが体験していない時代を考えると、前の東京オリンピック(1964年)、開会式のことは年上の人からよく聞きました。それから、「浅間山荘事件」(1972年)。

坂田:あ、鉄球。神戸:過激派が籠城した山荘を、鉄球が破壊していく様子が、ずっとライブ中継されていました。

神戸:もっとさかのぼれば、終戦の「玉音放送」(1945年)。

坂田:ラジオ放送ですね。

神戸:はい。まもなく敗戦から79年ですね。さらに、真珠湾攻撃を伝える臨時放送(1941年)。これは聞いたことがあるでしょう。

橋本:はい、あります。

神戸:記憶に残ること。おそらく、「感情を同時体験している」という意識があるんじゃないかな、と考えています。

坂田:「同時」ということがポイントですね。

神戸:そうです。誰に言っても通じる体験とは、「その情報をライブで同時に聞いている」ということなんです。日本放送協会(NHK)のラジオ放送が始まったのは1925年。それからのほぼ100年は、今までの人類の歴史とは違う、「感情を同時体験できる環境になった」と言ってもいいのかなと思います。目の前で起きている衝撃的なこと。その他の地域では翌日以降に知ることが多かったと思うのです。それを同時にみんなが「どうなってしまうんだろう…」と思って聞いていく世界は、たったこの100年しかない。この前後では、人間の感覚は違うんじゃないかなという気がします。映像だけではなく、音声も含めた「放送」が人間の感覚に大きな変化をもたらしたのが、この100年の大きな出来事だったんじゃないか。考えてみたら、オリンピックの中継だって同じですよね。感情の同時体験だから興奮し、盛り上がる。これは恐怖感ではなく、ワクワク、ドキドキ、ハラハラですが。そういう時代に生きているんだなあと、日航機事故の記事を見ながら考えていたんです。

「世界」全体が同時体験する時代

神戸:先ほど言い忘れましたが、ケネディ米国大統領の暗殺がありました。1963年(11月23日)です。

坂田:世界に中継されて…。

神戸:初の日米宇宙中継、世界的な実験の日でした。一番初めに「悲しいニュースをお送りしなければならない」とケネディ大統領が暗殺されたニュースが、初めて宇宙の人工衛星を通じて、日本にライブで入ってきました。翌1964年の東京オリンピックに備えた実験だったんです。それ以降の60年、世界は「感情の同時体験をする時代」に入ったということなんじゃないかという気がします。

坂田:しかも今や、狭い地域ではなくて世界で同時に。湾岸戦争などでも、ミサイルがどんどん飛んでいく映像が…。

神戸:1991年ですね。

坂田:固唾を飲んで見守っていた記憶がありますね。

神戸:「どうなってしまうのだろう…」「一体何が起きているんだろう…」という感情をみんなで共有しながら、震えながら見る。今後、戦争でこういうことがなければいいな、と本当に思います。

◎神戸金史(かんべ・かねぶみ)

1967年生まれ。毎日新聞入社直後に雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。ニュース報道やドキュメンタリー制作にあたってきた。やまゆり園事件やヘイトスピーチを題材に、ラジオ『SCRATCH差別と平成』(2019年)、テレビ『イントレランスの時代』(2020年)、映画『リリアンの揺りかご』(2024年)を制作した。

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