1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

自民党総裁選は「政治家個人をみるよい機会」ジャーナリストが解説

RKB毎日放送 / 2024年8月23日 14時57分

岸田文雄首相の自民党総裁選挙への不出馬表明を受けて、元閣僚らが次々と立候補の意向を示している。9月12日告示、27日の投開票を控えて出馬が取りざたされている候補者は10人を超える。「サンデー毎日」などを刊行している毎日新聞出版社長・山本修司氏が、8月23日に出演したRKBラジオ『立川生志 金サイト』で、この総裁選について「政治家個人をみるよい機会」とコメントした。

岸田首相を退陣に追い込んだ「批判」は政治家個人の事情

自民党総裁選は事実上、日本の総理大臣を選ぶ選挙ですが、国会議員の選挙とは違い、国民が直接選ぶことはできません。ある人からは「国民が直接選べないのに連日大騒ぎで、オリンピックが終わってネタがないマスコミが政局報道で騒いでいるだけだ」と言われました。きょうは「それは違うよ」と申し上げます。

政治そのものは私の専門外なのですが、前にお話しした「政治とカネ」ならぬ「政治家とカネ」は私のフィールドであり、その取材の過程で何人かの「政界通」と言われる人と親しくなり、いまも関係をつないでいますし、報道の世界に40年近く身を置いたことも含め、お話しする一応の資格はあるかと思っています。

また、私の持論なのですが、岸田首相が総裁選に出馬しない、またはできなくなった大きな理由は「政治家不信」です。「政治とカネ」と「政治家とカネ」の違いと同様に「政治不信」でなく「政治家不信」だと私は主張しています。つまり、日本の政治システムに国民が不信を抱いているではなく、政治家という人に対する不信だということです。

裏金事件にしても、本来派閥は、所属議員がその派閥のトップを日本の総理大臣にして国をよくしたいという集団のはずですが、その派閥にいることでお金を得たいとか、自分の存在感を高めたいなどという不純な動機で集まる議員が少なくないことが根本的な問題です。派閥そのものに問題がないわけではありませんが、根本的には派閥に所属する政治家個人の志とか資質の問題なわけですね。これは一つの例です。

岸田さんが出馬を見送ったのも、岸田さんが首相のままでは選挙が戦えない、要は自分が選挙で落ちてしまうとか、裏金事件で多くが処分を受けた派閥を中心に「何でトップである総裁が責任を取らないのか」といった恨みに似た強い批判が出たからと言われていますが、これは政治家個人の事情であって、「いま直面する国内問題、ウクライナやパレスチナなどの外交問題は岸田さんでは対処できず、もっと適切に対処できる人に変えなければならない」という天下国家からみた理由からではないのです。

政策に対する評価より「選挙の顔」かどうか

実際、岸田さんの評判はさんざんのように見えますが、例えばアメリカでは、日本の防衛力を強化することで日米同盟を深化させ、さらに日韓関係も改善させたなどと高い評価を得ています。この内容には賛否があるのでそのまま評価することはできませんが、それにしてもこうした評価を前提に、もっとよい人を選ぼうという動きが総裁選にあるようにはとてもみえません。

いま名前が挙がっている人をみてみると、元環境大臣の小泉進次郎さん、前経済安保担当大臣の小林鷹之さんが40歳代の若手、外務大臣の上川陽子さん、元総務大臣の野田聖子さん、元経済安保担当大臣の高市早苗さんといった閣僚や閣僚経験のある女性3人が特徴的でしょう。若さと清新さ、そして初の女性首相というのは重要な要素です。さらに常連の石破茂さん、河野太郎さん、幹事長の茂木敏充さん、官房長官の林芳正さんという党内きっての実力者もいます。

ただ、先ほど述べたとおりこうした人たちを、「選挙の顔」としか見ていない人たちがいます。若さや女性であることは重要な要素ではありますが、それを国民の受けの良さや人気にのみ注目して「自分の選挙に有利だから」とその人を推すことはどうかと思います。

いま国内では、少子高齢化や気候変動に伴う豪雨や地震などの自然災害、不安定な経済状況、国外に目を移せば、あのトランプ氏の再選が注目されるアメリカ大統領選やウクライナやイスラエル・パレスチナでの軍事紛争、中国の動きなど、さまざまな問題があります。こうしたことに、どう取り組んでいくのかについて、総裁選で手を挙げた政治家は首相候補として、明確に語っていく責任があります。政治家としての責任です。

「どんな政治家がどう動いたか」が見える総裁選報道

そして、どんな政治家がどんな理由で、どんな政治家を総裁として選ぶのか、また関与しているのかをつぶさに見ることも必要です。報道によれば、麻生さんは、あのトランプ前大統領から「タフネゴシエーター」と評価されている茂木さんの支援要請を、自派閥に河野さんがいることを理由に断ったとされています。最も早く立候補を表明した小林さんのもとには、派閥を超えて支援の動きが出ていますが、裏金事件の中心である旧安倍派の議員が多くいたようです。

最も注目されているのは小泉進次郎さんで、立候補の意向を固めたことがテレビ・ラジオのトップニュース、新聞各紙の一面で大きく扱われていました。菅前首相は小泉さんを推しているとされていますが、同じ神奈川県選出で親しいということよりも、小泉さんが当選することによって主流派になることを考慮していると報じられています。

小泉さんについては、毎日新聞出版が発行する週刊誌・サンデー毎日で、自民党政調会長の森山さんのインタビューを掲載しています。小泉さんが環境大臣のみの経験で、自民党三役を務めていないことをとらえて「賢明な判断をされるのではないか」と述べていましたが、森山さんにとっての「賢明ではない判断」にならないか、今後の動きが注目されます。

これらはいわゆる「政局報道」といわれるもので、外から見れば全くの政界の事情であり、国民不在の動きとみることもできます。ですから、冒頭のように「マスコミが騒いでいるだけ」と見られがちで、それみられるのも仕方がないとも考えます。

しかしながら、これによってどんな政治家がどう動いたかを見ることができます。これは秋にもあると予想される総選挙での、重要な判断材料になります。自分が住む選挙区の政治家が、どんな理由でどんな政治家を推したのか。政治家が政治家を選ぶ、つまり国民が直接投票できない自民党総裁選挙だけに、その選挙権を持つ議員を選ぶ選挙の際の判断材料にすることが重要だと思います。

9月には、野党第1党の立憲民主党の代表選も行われます。アメリカ大統領選も11月の投開票へ向け、高齢のトランプさんと50代の女性ハリスさんとの激烈な争いが進んでいます。誰がトップにふさわしいのか、を自分なりに考えながら見ていけば興味も深まってくると思います。

「政治家不信」をどう解消していくのか。個人としての政治家をみるよい機会になると思いますので、ぜひとも興味を持って報道に触れていただければと思います。

◎山本修司(やまもと・しゅうじ)

1962年大分県別府市出身。86年に毎日新聞入社。東京本社社会部長・西部本社編集局長を経て、19年にはオリンピック・パラリンピック室長に就任。22年から西部本社代表、24年から毎日新聞出版・代表取締役社長。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください