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折り目がつけにくい→開きやすい 投票用紙の開発は逆転の発想で 今では当たり前の即日開票が可能に

RKB毎日放送 / 2024年10月23日 18時53分

選挙で使う投票用紙、紙のように見えて、実は紙ではないことをご存知でしょうか。

今回の衆議院選挙は10月27日に投開票されます。

今でこそ、即日開票が当たり前となっていますが、かつては開票作業に時間がかかるため、投票と開票は別の日に行われていました。

即日開票を可能にしたのは、紙ではない投票用紙が開発されたからでした。

開票作業に多くの時間がかかっていた

「せ~の」

今から41年前、1983年に行われた衆議院選挙の開票作業。

折り曲げられた投票用紙を職員が1枚1枚手で開いて仕分けしています。

そのため開票作業には多くの人と時間を要していました。

その10年後に行われた1993年の衆議院選挙の開票作業。映像を見ると、投票用紙は折れ曲がっていません。

比べてみると一目瞭然、仕分け作業もスムーズです。

この10年の間に何があったのでしょうか?

投票用紙を開発した企業

ユポ・コーポレーション 鹿野民雄 部長
「開票時間をもっと短縮できないかと。選挙事務機器メーカー、選挙管理委員会の方から課題を解決してほしいと依頼があって」

合成紙メーカーのユポ・コーポレーション。

今回の衆院選で使用する投票用紙の原紙を製造しています。

ユポ・コーポレーション 鹿野民雄 部長
「紙のように見えるけど、フィルムなんですね。ポリプロピレンというプラスチックでできています。」

「折り目がしっかりつかない」欠点をいかして

もともとは屋外ポスターや山地図などに使用されていた合成紙の「ユポ」

プラスチックが原料のため、水に強く、破れにくいという特性がありますが、折り目がつけにくいという欠点もありました。

ユポ・コーポレーション 鹿野民雄 部長
「重しをしないと折り目がしっかりつかないのがユポの特徴なんですけど。逆転の発想ですね。投票箱に入れた瞬間にパッと開く、開票作業が省力化できる。」

福岡市長選挙で初めて採用

「折り目がつけにくい」という特性を、逆に「開きやすい」という発想に転換して開発されたユポの投票用紙。

実はこの投票用紙を全国で初めて採用したのは、1986年に実施された福岡市長選挙でした。

折り曲げられた投票用紙が投票箱の中で自然に開くため、「紙を開く」という職員の作業がなくなり、効率よく仕分けができるようになりました。

福岡市選挙管理委員会・事務局 廣瀬隆 選挙課長
「こちらが実際の投票に使う投票用紙と同じ素材でできている模擬投票用紙になります。特殊な素材で折り曲げても開きますし、破れないようにできています。」

RKB 三浦良介記者
「こうやって四つ折りにして、投票しても・・・あっ、すぐ開きますね。」

福岡市選挙管理委員会・事務局 廣瀬隆 選挙課長
「開票した段階ですでに紙が開いていますので、紙を開く作業がなくなり効率的になったと考えています。」

また、表面に目に見えない細かい凹凸を施し鉛筆の芯がしっとりと吸い付くような独特の書き心地にもこだわりました。

さらに、表と裏で摩擦係数を変えたことで、計数機での読み取りもスムーズになりました。

2倍のコストが課題だった

全国に先駆けて福岡市が導入し、投票日の翌日に行っていた開票作業をその日のうちに可能にしたユポの投票用紙ですが、当初は費用面が課題でした。

当時の福岡県の選挙管理委員会・担当者
「確かにユポ紙は「開票の時に便利だ」という話は聞いておりますけど、2倍以上コストがかかるということで、今回については従来通りの投票用紙を採用します」

ただ、作業の効率化に加え、職員の深夜手当などの費用を削減出来ることもあり、今では国政選挙だけでなくほぼすべての自治体でユポの投票用紙が使用されています。

ユポ・コーポレーション 鹿野民雄 部長
「全部で6種類ございまして、突然の解散に備えまして、常に一定量の在庫を持っています。当社は特段影響はございませんでしたが、印刷会社とか選挙管理員会は、今回は非常に大変だったと思います」

内閣発足から8日という戦後最短の解散で選挙戦に突入した今回の衆議院選挙。

福岡県選挙管理員会は「選挙のスケジュールがタイトで、投票用紙の印刷や発送作業などがいつになく大変だった」と話しています。

前回の衆院選 約半数の投票用紙が使われなかった

前回の衆議院選挙の投票率は55.93%。

福岡県は全国平均を下回る52.12%で、約半数の投票用紙は使われないままでした。

ユポ・コーポレーション 鹿野民雄 部長
「有権者の意思が今後の日本の方向性を変える。みなさん是非投票所に足を運んでいただければなと思います。」

使用済みの投票用紙の行方

使用済みの投票用紙は、その選挙で選出された議員または首長の任期が終了するまで、市区町村の選挙管理委員会で保管しなければなりません。

選挙後に訴訟が提起された場合などに備えるためです。

ユポの投票用紙はプラスチック素材のため焼却もできますが、約2割の自治体がリサイクルしています。

投票用紙を回収してリサイクルしているのは、NPO法人・選挙管理システム研究会。

回収した投票用紙からクリップや輪ゴムなどを取り除き、機械で粉砕した後、溶解してペレット化しています。

ペレットは農業や土木の資材などに活用されています。ただ、8割の自治体は、焼却処分しているということです。

現在、九州の自治体でリサイクルしているところはありませんが、今回、福岡県北九州市が初めて投票用紙のリサイクルを検討しているということです。

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