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人口600人の島で捕獲されるイノシシは毎年200頭 甘夏や柿など農産物に深刻な被害

RKB毎日放送 / 2024年11月22日 19時39分

福岡県で農作物の被害額が大きい野生動物をご存知でしょうか。

3位はシカでおよそ6700万円。2位はカラスでおよそ9300万円。そして1位はイノシシで被害額は2億8100万円となっています。

イノシシによる農業被害に悩まされている地域を取材しました。

福岡市の島で毎年200頭のイノシシ捕獲

ネットの中を激しく走り回るのは、わなにかかったイノシシです。

こちらには、撮影者の様子をじっとうかがうイノシシが映っています。

これらの映像が撮影されたのは、福岡市西区の能古島(のこのしま)です。

人口600人余りのこの島では、毎年200頭ほどのイノシシが捕獲されています。

甘夏の木が倒される

被害農業被害も相次いでいます。

RKB 西尾健佑記者「山間部にある農園です。こちらの地面は掘り起こされているほか、隣にある甘夏の木は倒されてしまっています」

能古島の特産品である甘夏。イノシシによって木が倒されたり土を掘り返されたりする被害が繰り返されていて農家は頭を抱えています。

明石農園 明石栄美子さん「これは1週間も経ってないかな。みかんの木ってだいたい浅いんです根が。だからこういう風にやられてしまうと枯れていく」

イノシシによる被害は年間で1トンにものぼるといいます。

夜、明石さんの農園を撮影した映像です。金属製の柵を乗り越えて、奥にある農園にイノシシが入っていきます。

壊された場所の修理「諦めた」

明石農園 明石栄美子さん「入るところをふさぐっていう作業が日々毎日。でも諦めました。やってもやっても壊されるし。能古島は甘夏が共同出荷なんで甘夏だけは守りたいんですけど」

西福岡猟友会 多々羅誠会長「これが足跡」

地元の猟師もイノシシの出没に危機感を募らせています。

島内ではこれまで人的被害は出ていませんが、住宅地の近くでもイノシシが出ることから箱わなを仕掛けるなどの対策を取っています。

西福岡猟友会 多々羅誠会長「学校周辺から住宅地に近いとこを僕はメインでわなをかけて。最近、家庭のごみをあさったっていうのがパラパラ出てきた、ということで住宅地に頻繁に出てきようっていうのがあるから。住民の被害がないように駆除をしようというのが目的」

「イノシシマップ」で注意呼びかけ

地元の公民館では、イノシシが目撃された場所に印をつけた「イノシシマップ」を作成して、島民に注意を呼びかけています。

能古公民館 田中郁子館長「11月は多いのでそれこそ気をつけておかなければいかない、夜とかはあまり遅くは出ないようにするとか、皆さん気をつけていると思います」

朝倉では柿の被害が深刻

名産の柿が収穫期を迎えている福岡県朝倉市でも、ここ数年で増えた野生のイノシシやシカに農家は頭を抱えています。

柿農家 仲山一郎さん「ここ、こんな風にして枝が折られてる。あっちもですよ。ここもここも」Q.ここに届くんですかね?「そうでしょうね、こうやって飛びついて。こんだけ太いけん、けっこうな」

朝倉市の山間部で柿を栽培している仲山一郎さんです。

収穫時期を迎え今週、柿山に入ると、枝が10本以上も折れていたといいます。

被害を聞いてこの日、地元の猟師が柿山を見に来ました。

猟師「体をこすってからまたがってきよる。あそこも来よるもん」

木の根元や葉に付いた泥などからイノシシの通り道を見定めます。

70年で初めて「わな」設置

この日、3つのわなを仕掛けましたが、仲山さんの柿山ではこれまでわなを設置することはなかったといいます。

仲山一郎さん「うちの父が大学生の時に植えたって言うけん、もう70年前から」Q70年、イノシシ被害はずっとあるんですか?「いやいやいや、ここ2~3年前からですよ」

「九州北部豪雨」後にイノシシ増加

猟師「水害が終わってからよ。水害が去って2年ぐらい経ってからやね。水害で山に人が行かんけん、それで増えて繁殖して。今まで柿も栗も人間がとりよったけど、誰もとらんけん、餌は豊富にあるし繁殖はボンボンするしそれで増えたんですね」

2017年7月の「九州北部豪雨」では、朝倉市の広い範囲で土砂崩れが発生。

山間部の道路は寸断され、立ち入ることのできない場所が今も残っています。

イノシシ駆除数5年で4割増加

朝倉市によりますと、2017年度には約700頭だったイノシシの駆除数が、2022年度には1000頭を超えていて農作物の被害額も増加傾向となっています。

平均で一度に4頭から5頭の子供を産む繁殖力旺盛なイノシシ。

野生鳥獣の生態に詳しい和田三生さんは「きちんと対策を取らなければ問題は解決しない」と話します。

農作物野生鳥獣被害対策アドバイザー(株式会社三生代表取締役) 和田三生さん「数日前も僕は朝倉に行って浮羽の方から朝倉・杷木を見ますと結構崩れた跡があります。あれだけ崩れますとエサ場も限られますし生息も限られますから、当然人里に下りてくるわけですね」「イノシシは5月6月には出産しますよという、これをずっとやるわけですから、とらなければ増えるのは当然のこと、だから増える以上に捕獲する、その技術がない限りは解決しませんね」

過疎化や農家の高齢化で耕作放棄地が増える中、拡大しているイノシシの被害。

人間と野生動物が、どう共存していくのか模索が続いています。

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