いてまえ打線のリードオフマン大村直之さんは今?~大失敗のヒーローインタビューで繋がった縁~
RKB毎日放送 / 2024年12月3日 19時38分
「ご無沙汰してますー」電話の向こうから聞こえてくる関西弁は、10年前と全く変わってなかった。声の主は、元プロ野球選手で、現役時代、近鉄・ソフトバンク・オリックスで活躍した大村直之さん(48)だ。ネットで大村さんの新聞記事を偶然見かけ、日本に帰国していると知り、久々にメールをしたら、彼からすぐに電話がかかってきた。そんな律儀なところも、相変わらずだ。
高校・プロと輝かしいキャリア
大村さんは、兵庫・育英高校時代、夏の甲子園で優勝、1993年ドラフト3位で近鉄バファローズに入団した。2001年には1番バッターとしてチームを牽引し、12年ぶりのリーグ優勝へと導いた。その後、FAでソフトバンクへ移籍。2006年には165本のヒットを放ち、最多安打のタイトルを獲得した。2009年からはオリックスでプレーしたが翌年オフに戦力外通告を受け、静かにバットを置いた。
プロ野球生活17年間で積み上げたヒットの数は1865本。名球界には届かなかったものの、巧みなバットコントロールで右に左にとボールを運ぶ姿を覚えている方も多いのではないだろうか。
第二の人生は家族のために
現役引退後の大村さんの生活はあまり知られていない。彼は野球を離れてしばらくすると、子どもの教育環境がいいからと、海外に移住するという選択をした。
では、その移住先で何をしていたのか?
「特に何もしていませんよ。お金は野球をやっている時にコツコツ貯めてたんで、普通の生活はできます。海外に行ったのは、ちょうど子どもが中学生になる時で、英語圏に行って視野を広げるのがいいかなと思ったからですわ。」
酒もほとんど飲まず、派手な遊びもしないで地道に蓄えをしてきた堅実な大村さんだからこそできるセカンドライフだった。
ヒーローインタビューの大失敗がきっかけに
そんな大村さんは現役時代、あまりマスコミとは接点を持たなかった。ソフトバンクに来てからも、職人気質で近寄りがたいオーラを出していたからか、私は彼になかなか声をかけられなかった。そんな中、大村さんへのヒーローインタビューを大失敗したことで、距離が一気に縮まった。
その日、大村選手はホームランを含む3安打猛打賞でインタビュー台に上がった。最初の質問で、私はまずホームランについて触れた。
「第2打席のホームラン、ナイスバッティングでしたね」
「いや、自分はホームランバッターじゃないんで、そういう感覚はないですね」
いきなり否定されて頭が混乱したことを、今でもはっきりと覚えている。余裕がなくなった私は、その後も的を射た質問ができず、ヒーローインタビューは終了。足取り重くリポーター席へと戻った。
失敗の理由は取材不足
翌日の練習終了後、彼のところに行き、「大村さん、きのうはうまく話が聞けなくてすいませんでした」と声をかけた。すると大村さんは「いや、あんな盛り下げるような受け答えしちゃって、申し訳なかったです」そこから、巧打者・大村直之はバッティングへのこだわりを話し始めた。
「強打者の多いこのチームで、僕の役割はホームランを打つことじゃないんですよ。だからホームランはたまたまという感覚なんですわ。普通に見たらナイスバッティグでも、僕の中でそういうものではないんです」
「じゃあ、大村さんにとってのベストな当たりはどんなものなんですか?」
「アウトコースの、ストライクゾーンギリギリに落ちていく変化球を、バットの先に乗せてレフト前に落とした時ですね」
この考えがあるから、私のヒーローインタビューでの「ホームラン=ナイスバッティング」の質問は否定されたのだ。
「だって、そんなバッティングでヒットになったら、ピッチャーも嫌でしょ」
これがプロ通算1850本以上のヒットを打った安打製造機の極意だった。
実況で彼の打撃信念を伝えた
その日を境に、大村さんと私はグラウンド内外で話をするようになり、野球についていろいろ学ばせてもらった。
私が実況している時、彼は、理想としているヒットを何度か打った。その時には「レフトの前、フラフラっと上がった打球、落ちましたー!ポテンヒットではありません。大村直之の、磨き上げた技術が詰まった、狙い通りのヒットです」と職人のこだわりを伝えた。
引退後14年、今の生活は?
海外から帰国して6年、生まれ故郷の兵庫県に戻って今は何をしているのか聞いてみた。
「特に何もしてません。自由に生きてますわ」
海外にいる時と何も変わっていなかった。
「健康には気づかってますよ。毎日、ジムに通って、サウナで汗を流す。食事は小麦粉・砂糖・乳製品・植物油は摂らない食事を心がけてます。現役時代より体重は4キロ落ちましたわ。あと、睡眠の質を高めるようにしてます。そうしたら、朝の目覚めがいいんですよ」
押し寄せる年波との戦いでも、抜かりなく対策を立てるあたりが、大村さんらしいところだ。
現役時代、唯一の心残りが・・・
そんな大村さんから、あるお願いをされた。ソフトバンクからオリックスにトレードされた時と、現役を引退する時、応援してくれていたファンの方々に感謝の気持ちを伝えられていないことが、ずっと心の隅に残っていたと言う。
「現役時代、声援を送って下さったファンの皆さん、本当にありがとうございました。皆さんの応援があったから、あれだけのヒットが打てました」
打撃職人が、残っていた最後の仕事を終えた。
RKBアナウンサー 櫻井 浩二
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