「自分がまず幸せになったら、今度は困っている人を助けてほしい」医師・中村哲に心酔した高校教師(49)の問い 「人はなぜ学ぶのか」生徒の答えは・・・
RKB毎日放送 / 2024年12月4日 19時26分
アフガニスタンで人道支援に力を尽くした福岡市出身の医師・中村哲さんが凶弾に倒れてから5年となります。
現地で共に活動した経験を持つ教員(49)は、中村さんから学んだ大切なことを生徒に語り続けています。
アフガニスタンで6年間一緒に人道支援
杉山大二朗さん「きょうの特別授業のテーマは、人はなぜ学ぶのか」
福岡県宗像市の東海大学付属福岡高校で社会科の授業を受け持つ杉山大二朗さん(49)。
杉山さんは2011年までのおよそ6年間、福岡市のNGO「ペシャワール会」の現地代表だった中村哲さんと共にアフガニスタンで人道支援に携わりました。
「めちゃめちゃ変わってる先生」
杉山さんの印象を生徒に聞いてみると・・・
Q杉山さんの印象は?
「変わってますねめちゃめちゃ。だいぶ変わっています」「杉山先生は、いろんな人生歩んできたんだなみたいな。とてもためになる話ばかり」「アフガニスタンのこと学びました」
最初は「よこしまな動機で行った」
元々、漫画家を志していた杉山さんは、海外を放浪する中でペシャワール会の存在を知り、2005年にアフガニスタンに渡りました。
杉山大二朗さん「困っている人を助けたいなんてそういう高尚な目的はなかったです。打算的な。1本描ければいいかなという感じでいいかげんと言いますか、よこしまな動機で行ったのは事実です」
当初は、軽い気持ちで向かったアフガニスタン。
しかし、中村さんと共に用水路の建設などに取り組む中で、紛争や飢え、感染症で命を落とす人たちを見て考えが大きく変わったといいます。
杉山大二朗さん「アフガニスタンという国でこういった命の尊厳っていうのはいつも突きつけられるんです。生と死がいつも交差しているというか、いつなんどき昨日まで元気だった人がきょうは違った姿になるなんてのはもう日常茶飯事なんですよ。6、7年近くずっといたのは、中村先生がずっと見捨ておけんっていう、素朴な良心をずっと見ていたからでしょうね」
治安悪化と中村哲さんとの別れ
現地で活動を続けていくつもりでしたが、治安が悪化したことから中村さんから説得され帰国を余儀なくされました。
杉山大二朗さん「恋する乙女じゃないですけども私を必要としないんですかみたいなね。先生は最後にはもう足手まといや理解しろ分かれ、みたいな感じで。私も若かったんで嫌な別れ方しちゃったんですよ」
漫画とエッセーで回想記
5年前の12月4日、アフガニスタンで凶弾に倒れた中村哲さん。
杉山さんは、中村さんの思いや功績を伝えたいとエッセーと漫画で描いた回想記を出版しました。
中村哲さんから学んだこと
さらに、去年から母校の高校で教壇に立つようになりました。
この日、授業で問いかけたのは、「人はなぜ学ぶのか」。
グループに分かれて話し合った生徒たちは、それぞの意見を発表します。
生徒「幸せになろうと」
杉山大二朗さん「どうやったら幸せになりますか?」
生徒「社会の色んな事を知って自分の知識をあげていくこと」
生徒「幸せに生きるためです」
杉山大二朗さん「他にはどんな話が出ました?」
生徒「異文化との交流をするためとか、社会に出て恥がないように、自分が恥ずかしい思いをしなくていいように学ぶ」
「自分の幸せ」を願う生徒たちに対し杉山さんは、中村さんとの活動から学んだ大切なことを伝えます。
杉山大二朗さん「この先生、中村哲さんね、50歳60歳過ぎてもずっと勉強しているんです。難しい仕事、設計図、そして監督全てこの先生は独学でやったんです。自分がまず幸せになったら今度は社会にいる困っている人を助けてほしいんですよ。そのために勉強しているんです。この先生は自分の幸せのためというよりも人が幸せになることが何より嬉しいんです。そんな人がいるんです、世の中に」
戦乱と干ばつに苦しむアフガニスタンで医療支援を続けながら、25キロ以上にもおよぶかんがい用水路を完成させた中村哲さん。
その思いは、生徒にも届いたようです。
生徒「自分で努力して行動できる人はすごいなと思います。自分は消防士になりたいので、色んな知識を入れて多くの人を助けたいと思います」
杉山さんは、「人の幸せ」を願って努力を重ねた中村さんの姿をこれからも語り継いでいきたいと話しています。
杉山大二朗さん「ごく身近に見てたらそこら辺にいるごく普通のおっさんというか、九州のおっさん。そんなおっさんでも努力して命がけで命を削ってまで深夜寝ないで設計図にらんで。中村哲も一人の人間であり、また非常に人間っぽかったというか、でもあの人は努力で切り開いていった、あれだけの人を助けたということは伝えたいですね」
杉山さんはそんな中村哲さんの功績を伝えようと当時の体験を元にした本を出版。
現在は、新たな書籍の発行に向けて執筆作業を進めています。
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