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生理だから…諦めてしまう世界の女性たちを「吸水ショーツ」で救いたい たった1枚のショーツがもたらす大きな変化

RKB毎日放送 / 2025年1月8日 17時6分

生理時にショーツそのものが水分を吸収してくれる「吸水ショーツ」。
日本ではほとんど認知されていなかった5年前、いち早く開発に取り組んだ女性がいる。
当時、さほど需要があるとは思われず、協力企業探しには難航したが、販売後は予想以上に反響があった。

女性特有の悩みを技術力で解決する「フェムテック」。
たった1枚のショーツは、教育を受けられない少女たちや、貧困にあえぐシングルマザーを救う可能性を秘めている。

「吸水ショーツ」で我が家に起きた”生理革命”

「もっと早く使えば良かった」「生理ナプキン替えなくていいとか感動!」

昨年秋、私のスマホに娘たちからこんなメッセージが届いた。
そう、我が家で”生理革命”が起きたのだ。

女性の健康課題をテクノロジーの力で解決するフェムテックの市場が広がっている。
中でもここ数年さまざまなブランドから商品化が相次いでいるのが「吸水ショーツ」だ。
ナプキンを貼り付けるための下着ではなく、下着そのものが水分を吸収するというものだ。
3000円~7000円程度の物が多く、少々値は張るが、洗って繰り返し使えるため、長い目で見ると経済的で、何といってもごみが出ない”エコ”が嬉しい。

福岡の放送局に勤める筆者は、番組の取材で「吸水ショーツ」の存在を知った。
早速購入し、2人の娘たちにプレゼントした。
数か月後、娘から興奮気味に冒頭のメッセージが届いたのだ。

個人差はあるが、通常生理2日目など経血の多い日は、あっという間にナプキンは容量をオーバーする。
一日に何度もナプキンを交換しなくてはいけない。
ところが吸水ショーツを体験した娘たち、「一日中履いていても気にならなかったよ」「これ、ゴミが出ないし画期的!」「次の生理が楽しみ」と絶賛する。
正直、半信半疑でプレゼントした。
年齢的に私自身は試すことができないから、娘たちはいわば実験台。
しかし、彼女たちの言葉から「吸水ショーツ」の良さは容易に想像できた。
「へー、そんなにいいの?私も使ってみたかったな」と羨ましく思いつつも「いや、これ尿漏れにも使えるかも」と、近い将来やってくるかもしれない更年期に少しワクワクした。

国内で先駆けの女性開発者、きっかけはアメリカでの出会い

「吸水ショーツ」が日本ではほとんど認知されていなかった5年前、いち早く開発に取り組んだのが、Be-AJapanのCEO高橋くみさん(50)だ。
高橋さんは、2016年にアメリカで「ピリオドショーツ(生理ショーツ)」に出会い、ショーツ自体が経血を吸収するというコンセプトに衝撃を受けた。
さっそく商品を購入し実際に使用してみたところ、経血が漏れてしまったという。

高橋くみさん
「コンセプトには感動しました。でも、実際に使用してみると、
簡単に経血が漏れてしまう。
アメリカの場合、タンポンやピルの使用率が高いため、
吸水ショーツは他のアイテムと併用する補助的役割のものが多かった。
色々なメーカーのものを試しましたが、単体で使うことを想定していないと
感じました。
であれば、タンポンやピルの使用率が低い日本の女性のために、
より吸水力の高いものを自分たちで作ろう!と決意しました。」

一筋縄ではいかない国内開発…しかし集まった支援金は1億円!

しかし、開発は一筋縄ではいかなかった。
パートナーとなる工場を20社ほどあたったが断られ続けた。
当時日本では吸水ショーツに対する抵抗感が大きく、「消費者に受け入れられないのでは?」という懸念から二の足を踏む会社がほとんどだったという。
協力してくれる工場をなんとかみつけ、約2年半かかって理想に近い商品を完成させた。
その後、クラウドファンディングでの資金調達を募ったところ、開発の苦労とは裏腹になんと1億円以上が集まった。

高橋さんが開発した吸水ショーツは、高度な吸水ショーツの縫製技術などが評価され、その技術が国連工業開発機構(UNIDO)に認められている。
2020年の販売開始以降、これまでに18万枚を売り上げた。

高橋くみさん
「女性たちの生理に関する悩み、そして吸水ショーツへの期待は
想像以上に大きかった。
強い使命感を感じました。」

生理中は”穢れの者” 深刻なエチオピアの生理事情

国産の吸水ショーツ販売を果たした高橋さんは今、思春期の若者に向けて生理セミナーを各地で開催している。
タブ-とされがちな生理について正しい知識と、たくさんの選択肢があることを知ってほしいという思いからだ。

こうした活動は国内に留まらず、昨年12月、国連人口基金(UNFPA)と国際協力機構(JICA)による連携事業の一環として、エチオピアで生理セミナーを行った。

高橋さんが訪れたのは、エチオピア北部の都市メケレ。
2020年~2022年に起きた紛争で、多くが国内避難民になった。
夫を亡くし一人で子どもを育てる女性も少なくない。

国連人口基金によると、エチオピアでは28%の女性しか満足に生理用品にアクセスできていない。
生理ナプキンが十分に流通しておらず、価格も高く 買えるのは一部の人に限られているのだ。

流通している生理ナプキンも日本の物に比べると品質は良くないという。
生理ナプキンを長時間つけ続け、痒みやかぶれに悩む女性も多い。

生理ナプキンを購入できない人は、ボロ布を当てて過ごすため、外出もままならない。

そもそも、生理中の女性は「穢れの者」として扱われ、教会に入ることも許されない。

生理について口にすることすらタブーの女性たちへの「生理セミナー」が始まった。

生理痛 医師でさえ「胃の痛み」

女性は月に一度排卵すること。
妊娠しなかったら経血が体外に出るのが”生理”であること。
高橋さんは、日本では多くの人が学生時代に学ぶ基本的なことを伝えた。

エチオピアでは医師でさえ、生理痛を「胃の痛み」と表現することもあるほど、生理の基本的な知識が共有されていないのだ。

高橋くみさん
「最初はみなさん恥ずかしがっていましたが、次第に質問攻めにあいました。
排卵などの生理のしくみを学ぶ機会がなく、生理が終わることを知らない人も
多くいます。」

生理用品にアクセスできないエチオピアの少女や女性たちは、生理の期間中、学校に行けない、仕事ができないケースが多々あるという。

高橋さんがセミナーの最後に吸水ショーツを寄贈すると、女性たちから感謝と感激の声が上がった。
「これがあればどんなに楽になるか…」と。

国連人口基金は、日本の企業と連携し、エチオピア国内で吸水ショーツを生産するプロジェクトを開始した。
高橋さんもそこに参画している。

援助や寄付に頼らず、エチオピアの人々によって製造販売し持続可能なビジネスにすることで、女性の雇用、生計の維持、教育を受ける機会の確保にもつながっていく。

生理の貧困 日本にも

エチオピアに比べると、日本の生理事情は恵まれている。
しかし、「生理痛をがまんしながら過ごさなくてはいけない」「相談できる場所がない」「生理への知識が不足している」という問題は万国共通だ。

高橋くみさん
「日本では生理用品が買えない”生理の貧困”が問題になっていますよね。
でも、貧困は金銭的な問題だけじゃないんです。
情報・知識の貧困を解決しないことには本当に豊かな社会とは言えません。
生理期間中をもっと快適に過ごすための技術や製品は
どんどん開発されています。
日本中でフェムテックを知ってもらって、その輪を広げていきたいです」

九州で生まれ育った筆者が感じるのは、女性の健康課題や性に関する話題は地域によってはまだまだタブー視されている、ということ。
新しい技術や正しい情報に触れることで、我が家のように”生理革命”が起きる家庭が増えて欲しいと願っている。

RKB毎日放送では、
タブーに切り込む性教育バラエティー番組を
ゴールデンタイム【1月15日(水)19時】と
深夜帯【1月29日(水)23時56】に放送。

さらにBe-AJapanの高橋くみさんも参加する
九州初となる本格フェムテックイベント
「Feel!Femtech2025~あしたの私、もっとハッピーに」を
1月18日(土)19日(日)に福岡市中央区天神のレソラホールで開催する。

RKB毎日放送 プロデューサー 吉賀亜希子

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