78歳男性が伝えるイノシシ捕獲の技術 佐賀県の「わなの塾」に受講生殺到 猟友会メンバーも
RKB毎日放送 / 2025年2月7日 18時50分
イノシシによる農作物の被害額は、昨年度36億2669万円に上りました。被害を減らそうと、全国から猟友会のメンバーや自治体の職員が訪れる場所が佐賀県にあります。
イノシシを捕獲する技術を教える「わなの塾」。罠の仕掛け方、仕掛ける場所、そして苦しめずに捕獲する技術まで。教えるのは、78歳の男性です。
社長室にシカ・イノシシ・クマの剥製
イノシシの罠を組み立てているのは害獣などを捕獲する罠メーカーの社長、和田三生さんです。
三生 社長 和田三生さん(78)「これは足くくり(罠)なんですね、動物の通る獣道は必ず山にあります。その獣道に仕掛けて害獣を捕獲する」
和田さんの会社ではイノシシをはじめ、タヌキやアライグマなどを捕獲するくくり罠や箱罠の製造・販売を行っていて特許も多数取得しています。
RKB 西尾健佑記者「社長室には、シカやイノシシ、クマなどの剥製があり、和田さんが罠などでとらえたものになります」
和田三生さん「このクマは北海道富良野で捕獲が禁止される前の年にとったんです」
約15年前に「わなの塾」立ち上げ
20歳のころから趣味で狩猟を始めた和田さんは今後、野生動物が増えれば被害も増加すると考え、1981年に罠の販売を始めました。
和田さんの予想通り野生動物による被害は増加。捕獲の技術を伝えるため、15年ほど前に「野生鳥獣捕獲技術研修センター三生塾」(通称:「わなの塾」)を始めました。
受講料は1日、1万4300円(税込)。このところ希望者が増え、「わなの塾」には全国から行政や猟友会の関係者が集まります。
和田三生さん「勉強されたものは地元に持ち帰って技術を、またそこで人材育成なり、農家の方が困らないようにとってあげてくださいねっていう考え方でしたね」
「捕獲率あげたい」青森県から訪れた猟友会のメンバー
この日の受講生は青森県の猟友会のメンバーです。
寒さが厳しい青森県では、イノシシは100年以上前に絶滅したとされていました。
しかし2017年度に農作物の被害が確認されて以降、イノシシによる被害は、増加傾向となり対策が急務となっています。
このため青森県は猟友会からメンバーを選抜して和田さんの技術を学んでもらうことにしたのです。
青森県猟友会 狩猟指導員 関川明さん「青森県でも南の方からシカなりイノシシなりが入ってきて農産物の被害ひどいんですよ。ぜひ、九州の方のイノシシの捕獲の技術を学ぼうと。捕獲技術を上げて青森に持って帰って、捕獲率を全部上げていこうというところですね」
罠にかかった40キロ台のイノシシ
メンバーと和田さんはまず、1週間前に仕掛けた罠を見に山に入りました。和田さんの罠には40キロ台のイノシシがかかっていました。
和田三生さん「いまちょっと見ますと小さいですね、昨年産まれて遅生まれです」
和田さんは受講生に説明しながら安全な回収方法を実演します。
和田三生さん「ここでこういう風にしてこうします」
和田さんの技を学び取ろうと受講生たちの表情は真剣そのものです。
イノシシが捕らえられたことで近くの住民も安堵しました。
周辺住民「2日間前にものすごい大きいイノシシをあそこで見て、危ないねって話してました。ありがたいです」
罠の仕掛け方「最低でも30回は練習する」
研修所に戻ったら罠の仕掛け方の実習です。
和田三生さん「大谷さんのバットを借りたからといって誰でもホームランは打てませんよ」
どんな環境でも短時間で罠を仕掛けられる技術を習得するため、平地や傾斜地といった場所で練習を繰り返します。
スポーツと同じで上達するには基礎トレーニングが重要だと言います。
和田三生さん「こういう基礎的なことを何回も練習するわけですね、最低でも30回、50回やっていただきます」
獣道を見極め、山で罠をしかける
研修所で合格したら、いよいよ山で罠を仕掛ける実習です。
和田三生さん「秋から木の葉が落ちるでしょ、そうすると獣道が分からなくなる。しかし動物はちゃんと覚えているんですよ」
獣道を見極めながら仕掛ける場所を探します。
研修所で学んだとおり塾生は罠をしかけていきますが、塾での練習とは大違いです。
青森県猟友会 中田圭武さん「塾でやるのと現地でやるの全然違うので、木の根っこがあったり、それは現場で数こなすしかないですね。数かければとれるのかなみたいなのだったんですけど、やっぱり獲るために必要な条件であったり、どこにかけるのかみたいな、イノシシの生態から、イノシシの気持ちになって」
「苦しめずに捕獲する」のが信条
和田さんは元々動物が好きで動物がなるべく苦しまないように罠の形状を工夫し、罠にかかった動物を素早く処理する技術も磨いてきました。
和田三生さん「僕は動物が大好きなもんですから、苦しめて捕まえてというのは僕の生き方として望まない」
過疎や高齢化で山の手入れが行き届かなくなったこともイノシシによる被害の増加につながっているとも言われます。
イノシシを苦しめずに人間の生活を守るため和田さんは捕獲技術を全国に伝えていきます。
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