【インタビュー】デビューから25年で今もっとも研ぎ澄まされたバンド「人間椅子」 ギター・ボーカル和嶋慎治

ロケットニュース24 / 2013年8月6日 11時0分

【インタビュー】デビューから25年で今もっとも研ぎ澄まされたバンド「人間椅子」 ギター・ボーカル和嶋慎治

2013年5月、千葉・幕張でロックイベント『オズフェスト』が開催された。国内外のアーティストが多数参戦するなか、もっとも注目を集めたのが日本のロックバンド「人間椅子」である。

・メジャーデビューから約25年にしてますます活発
メジャーデビューから約25年。四半世紀にもおよぶ活動を続け、現在も精力的に作品を発表しツアーを行う彼ら。まったく衰えることなく、いやむしろ、ますます活発に活動をする彼らを支えるものは何なのだろうか?

・通算21枚目のアルバムをリリース
8月7日に通算21枚目のアルバム『萬燈籠(まんどろ)』をリリースするに当たって、メンバーの和嶋慎治氏にインタビューを行った。和嶋氏のお話の前に、人間椅子について簡単に紹介したいと思う。

・人間椅子とは
メンバー:和嶋慎治(ギター、ボーカル)、鈴木研一(ベース、ボーカル)、ナカジマノブ(ドラム、ボーカル)。1987年に青森県立弘前高等学校の同級生だった和嶋氏と鈴木氏により結成。89年に「三宅裕司のいかすバンド天国」(TBS系)に出演し一躍脚光を浴び、90年にメジャーデビューを果たす。ドラマーの度重なる交代を経て04年よりナカジマ氏が正式メンバーとなる。

・穏やかではなかった道のり
5月の『オズフェスト』で、和嶋氏が人気アイドルグループ「ももいろクローバーZ」のサポート参加したのを機に、バンドに注目が集まっている。新譜のツアーは即日完売し、ライブチケットは入手困難になりつつあるようだ。しかしここまでの道のりは、決して穏やかではなかった。

・メジャーの契約が切れてもやめる気はなかった
和嶋「4枚目のアルバム『羅生門』まで作って、メルダック(レーベル)と一回契約が切れました。今思えば、4枚も出せずに消えていったバンドもたくさんいましたからね。契約は切れたけど事務所はまだ残ってて、(活動を)やめる気持ちはなかったですね」

・いつまでやるんだろう……
記者「それ以降もやはりやめようとは思わなかったんですか?」
和嶋「いや、何度か(やめる気持ちが)芽生えましたよ。いつまでやるんだろうって。三十代半ばくらいに思いましたね。生活は相当苦しいんですよ(笑)、食えないですから。実家に戻るべきかなと悩みました」

・生きるきっかけ
その後に和嶋氏は転機を迎える。40歳を迎えるときにこれまでにない困難に遭遇し、それを乗り越えたところから、音楽活動のみならず、生き方や考え方を変える出来事があったそうだ。それを和嶋氏は「生きるきっかけ」と呼んでいる。

和嶋「結構悩みまして、そのときに自分なりの回答というか、生きるきっかけをつかんで、そこから変わりました。自分でも変わったなって思う」

・自分なりに伝えたいもの、表現したいもの
少し話がそれるが、記者(私)は20代の頃から彼らの音楽を聞いている。最近その変化がはっきりと「音」にあらわれていると感じずにはいられない。以前と比べて、はるかに前向きであり、力強さが増しているように思う。それが単純にキャリアを重ねた結果ではなく、より研ぎ澄まされたものになっていると思わずにはいれらないのだ。

和嶋「変わってからの楽曲を、「昔と違う」と思う人もいるかもしれませんね。ポジティブで説教くさいって思う人もいるかもしれない。でもそれがやりたいんですよね。それまではロックサウンドをただやりたいだけだった。そうじゃなくて、自分なりに伝えたいもの、表現したいものがやっと見つかったんですよ。40過ぎてから。だから迷いなくやれるんですよね」

・『十三世紀の花嫁』
「自分なりに伝えたいもの」、「表現したいもの」。この言葉をもっとも表現している曲が、ニューアルバムの9曲目『十三世紀の花嫁』だ。この曲は全編に朗読部分があり、ストレートな歌詞が聞く者の心を激しく打つ。そして三人編成であることを完全に忘れさせる重厚なサウンドは、大きなうねりとなって体を激しく揺さぶる。この曲については「具体的な言葉で(伝えたいことを)言ってみたかった」と説明している。

・夢
実はこの曲の誕生は、非常にまれなきっかけによるものだ。和嶋氏はこの曲を、「夢」で聞いたと話す。
和嶋「ちょっとこの話、長くなりますよ(笑)。夢をみたんですよ、時々夢を見て曲を作るんですけど。寺山修司の『書を捨てよ町へ出よう』という映画があって、あれの最初の方で観客に問いかける感じでモノローグをしゃべるんです。それをしゃべってる人は今、青森の寺山修司記念館の館長をやってるんですよ。で、夢を見たって話ですけど、夢のなかで自分が車を運転していて、カーラジオからその人の声が聞こえてきたんです。それで、「今度新曲出しました」と言って流れてきた曲がとてもかっこよかったんです。ヘビーなサウンドで詩の朗読をするみたいな曲で、カッコいい! と思ったら目が覚めて、続きが聞きたくなって、この曲を作ったんです」
記者「そうしたら、この曲は夢のなかで完成してたんですか?」
和嶋「1番くらいまでは、夢で聞いて、その印象で作りました」

・一番苦労した曲
実はこの曲の制作は、ニューアルバムのなかで一番苦労したという。
和嶋「トラックダウン(音源制作で多重録音されたものを、調整してひとつの曲にまとめる作業)の朝までレコーディングをやってましたから。間に合わなくて、ギリギリで。『オズフェスト』に出たからレコーディングの準備が足りなかったんですね。その前にも別のフェスに出てて、気持ちの切り替えができなかった。ギリギリでしたね。なかなかがんばりました」

・エンジニアとメンバーだけで
アルバム制作について、人間椅子は他のアーティスト・バンドと比べると少し特殊な状況で行われる。通常はプロデューサーがついて、アーティストと意見を交わしながら発売までの全体像を描いて行くのだが、彼らは音源だけでなくカバー(アルバムの表紙)まで全部セルフプロデュースだ。つまりは自分たちだけですべてを作り上げて行く。レーベルとの間で決まっているのは、発売日だけだ。
和嶋「自分たちでプロデュースしてるから、誰か(プロデューサーを)入れたいって気持ちにならんね。あまりいじられたくないんですよね、実は(笑)。エンジニアと僕ら(メンバー)の4人でやってますから」

・25年は一瞬ではない
5枚目のアルバム以降、セルフプロデュースを続け21枚目のアルバム発売にたどり着いた人間椅子。四半世紀にわたる活動は彼らにとって、どのように感じられたのだろうか?
記者「これまでの活動は、振り返ると一瞬でしたか?」
和嶋「一瞬だとは思わないね。長かったです、いろいろありました。いろいろ勉強しました。自分なりの成長というのもありますから」

人間椅子を見ていると、「鋼(はがね)」のように思う。鋼は鍛錬することによって強度が増す。彼らも同じように活動を通じて、表現に磨きがかかり、音も言葉もより洗練されているのではないだろうか。通算21枚目のアルバム『萬燈籠』には、四半世紀の活動のすべてが詰まっている。

執筆:ほぼ津田さん(佐藤)
取材協力:人間椅子徳間ジャパン


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