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Koji Nakamuraが人生を通して追求し続ける、サウンドへのこだわり

Rolling Stone Japan / 2020年10月26日 17時0分

Koji Nakamura

長年にわたって芸術の分野で表現し続ける者たち。本業も趣味も自分流のスタイルで楽しむ、そんな彼らの「大人のこだわり」にフォーカスしたRolling Stone Japanの連載。学生時代にノイズをテープに録音していた少年が、スーパーカーでのバンド活動を経て、現在も様々なプロジェクトやソロ活動を通じて自身の音への探究を続けている。終始自分のペースでサウンドの深部を追い求めるKoji Nakamuraの活動に迫る。

Coffee & Cigarettes | Koji Nakamura

自身が生み出すアンビエントでノイジーなサウンドに全神経を集中させる佇まいからは、音への並々ならぬこだわりが感じられる。

CUBE六本木にて40名限定の2部制で行われたインプロビゼーションライブ『THE CHILLOUT TIME』の演奏を終えると、ナカコーことKoji Nakamuraは最低限の機材の電源を切り、トークイベントの席に座って自身の音のこだわりについて静かに答えていった。

「演奏していて自分が好きなポイントを探すまでの最初の5、6分はチューニングみたいな感じ。毎回そのポイントは違うんですよね。やってみて今のは良い音だなと思ったら、それを伸ばしていくという感じです」

音への人並ならぬこだわりと、自分のペースで物事を行うマイペースさ。寡黙さと独特の雰囲気を纏ったナカコーは愛煙家でもある。ライブを終えてからの中打ち上げでも、タバコを片手に静かにスタッフたちと語り合っている姿が垣間見えた。家で楽曲制作をするときもタバコは手放せないという。

「タバコを吸う頻度はかなり高いですね。ヘビースモーカーで、家ではエリアを分けて吸っています」

そんなナカコーが生まれ育ったのは青森県。寺山修司、三上寛、人間椅子といった個性溢れる表現力の強いアーティストたちを数多く輩出している土地だ。

「当時東北はわりと孤立していて、関西みたいなカルチャーの繋がりみたいなのが少なかったんですよね。でも、横の繋がりを持っていない人たちが多いからこそ個性があるというか。関西も関東もバンドや音楽をやる人が多いから理解してもらいやすいけど、東北ではなかなか理解はされないと思っていて。東京に出ればおもしろい人いるんじゃない? と思って自分も出て行ったんですけど、実際は東京だろうと、どこだろうと自分がやっていることはあまり変わらないですね」



ナカコーは地元にいるときから音に対する興味関心が強く、テープにノイズを録音するなど、自分の中でサウンドの追求をしていたという。

「僕が中高生の頃には中原(昌也)さんなど海外で活動している方が多く、日本のノイズシーンが海外ですごく評価されていたんです。それを間接的に見て、最初は自分もノイズとかをテープに録っていました。その後バンドが始まって、自分でやったことのない「普通の曲を書く」ことをやってみようと思って高2の時にバーって曲を書いたんです。それを録音したデモテープをソニー・ミュージックのオーディションに応募から返事がきた。運が良かったんですよね。デビューするまで早かったし、そこからデビューするまで曲も書かなかったから」

ノイズに興味を持ち音にこだわりを持っていた少年が、メロディのあるポップソングを作曲する。それが初期スーパーカーの原点となっている。いわゆるギターポップとしての顔を見せつつ、2ndアルバム『JUMP UP』では1曲目の「Walk Slowly」からノイズがかったサウンドスケープではじまり、随所にノイズが垣間見えるなど、早期から音へのこだわりの片鱗は随所に見てとることができる。



「スーパーカーはバンドとしておもしろかった。自分の中で、当時の日本のバンドはアンダーグラウンドのバンドは海外のバンドと同じ空気を持っていたけど、メジャーでやっているバンドは自分とはちょっと違う世界だと思っていた。だったら、自分たちの好きな世界をやったらいいんじゃないかなと思ったんです。それがある程度達成できたところで、もう大丈夫かなと思って。自分がデビューした当時のバンドは、みんな音がおもしろかったんです。今だとちょっとおかしな音だと言われるような音を使っていたし、それを自分も普通に受け入れていた。自分もそういうものだろうなと思って作っていましたね」

2000年発売の3rdアルバム『Futurama』からはエレクトロニカを取り入れるようになり、以後は砂原良徳や益子樹といったサウンドメイキングに深い造詣と愛情の深いプロデューサーを起用。耳に残るメロディとダンスミュージックやエレクトロなサウンドメイキングを融合した唯一無二なバンドとして、今も多くのミュージシャンたちに多大な影響を与え続けている。

スーパーカー解散後は、ソロプロジェクト「iLL」やアンビエントプロジェクト「Nyantora」を立ち上げて活動。フルカワミキ、田渕ひさ子、牛尾憲輔と共にバンド「LAMA」、ダークロックユニット「MUGAMICHILL(ナスノミツル、中村達也、ナカコー)」としても活動している。最初こそ名義ごとに作るサウンドや音楽の方向性を分けていたというが、だんだん分ける必要もないと思うようになっていったという。

2014年にはソロ名義で、その名前の通り傑作アルバム『Masterpeace』をリリース。スーパーカーをも彷彿とさせるポップスと電子音などのサウンドスケープの融合した作品で高い評価を得た。しかし、同作品はナカコー本人が意図して作ったというよりも、リリースのオファーがあって作っていったというのが驚きだ。



「あの頃はあまり自分で何かを作りたいと思う時期ではなかったので、作ってみない? とレコード会社のスタッフから提案してもらって、どういうのを作ればいいの? という話をして作っていくパターンが多かったんです。機会をもらってじゃあ、みたいなことが多いですね」



そんなナカコーの実験的な企画が、2017年4月よりスタートした”Epitaph”プロジェクトだ。CDリリースやダウンロード販売を想定せず、ストリーミングのみをターゲットに、ナカコーの新作であるプレイリストは彼の気分でバージョン、曲順すら変わっていく。1ヶ月に1度2~3曲アップロードされ、DAW+アクセスモデル時代の新しい表現のトライとなった。

当時「CDを出す事とに今興味がないって話をしていたら、Spotifyでなにかおもしろいことをやりませんか? と言われて。どんなことができるんですか? って訊いたら、曲を変えてもいいですって言われたんです。それはおもしろいし、まだまだ可能性あるなと思った。今は、YouTubeで聴いた曲が、その人にとってのオリジナルだったりする。ある人にとってはそれがレコードだし、ある人にとっては海賊版に入ってる曲かもしれない。スタジオ録音という発想が壊れてくるんじゃないかなと感じていたんです。いまやウェブにあった音楽が、その人にとって最初に出会ったオリジナルな音楽だということも十分にあると思うんです。そういう現象がたぶんもっと起きると思ってやってみたんですよね」

音楽の入れものである媒体や環境さえもフラットに考えているナカコーは、同じく2014年よりCD-Rのみで販売する『Texture』という施策も行ってきた。エレクトロニカ、アンビエント、ドローンなど、彼のサウンドメイキングの断片が収められ、2020年5月時点で全20枚211曲に及ぶ作品が発表されている。まさにナカコーのアイデア集の集積がリアルタイムで発信されてきた。

「曲を作っている時に断片がよくできあがってくるんです。その断片を後々いろいろな作品に入れるのがアイデア的にいいなと思って。素材の元を残しておけば何にでも入れられるというか、仕事が来た時にその断片を使って曲を作る方が早い。それもあって録りためていったんです。そしたら断片が溜まってきて、この断片を売ってもいいなと思い始めて売り始めたんです」

2020年には20作品から1枚1曲ずつ収録した『Texture Web』を配信。その配信の理由も、スタッフから「キャンペーン中だよって言われたから配信することにした(笑)」と笑って話してくれた。

そんな自分のペースで音楽活動を行っているナカコーは、コロナ禍によって制作環境やライブ活動にどんな影響があったのか。そう尋ねると、変わらないペースでこう語ってくれた。

「コロナ前と今とで制作の現場は変わっていないですね。ライブをやりませんか? と言われたらやりますし、音源制作も自分のペースで勝手にやっていくと思います。コロナだから何かを変えようという気は全然ないですね。これからも普通にやっていこうと思います」

終始自分のペースで、自分の音への探究心で活動を続けてきたナカコー。そのこだわりから生まれるサウンドは、今後も我々のもとに思わぬ形で届いてくることだろう。

【Koji Nakamura×Rolling Stone Japanイベントのオンデマンド配信が決定】
コロナ禍によってSTAY HOMEやソーシャルディスタンスが叫ばれる中、目に見えないストレスや不安を抱えている人々に対し、音楽がもつ”役割”を表現・提示するべく『リラックス』『チルアウト』『瞑想』をテーマにRolling Stone Japan企画のもと開催されたKoji Nakamuraのインプロヴィゼーションライブのオンデマンド配信を行う。

キャンドルアーティスト「AKARIYA」による幻想的な会場装飾とVJによるライブ同期映像演出も行われる。

高音質な音楽と映像によるアンビエント、ドローンミュージックのもたらす音楽体験はこれからの時代の音楽表現の新しい価値観となり得るだろう。

ベッドルームやリビングで電気を少し落とし、リラックスできる状態で、まるで夢を見ているような映像空間に没入いただきたい。


<イベント情報>
THE CHILLOUT TIME feat. Koji Nakamura
開催日時: 2020年11月6日(金)20:00~22:00 配信視聴チケット価格:1500円
※配信チケットご購入者様は映像アーカイブを3日間ご覧いただけます。

配信チケット購入リンク:https://thechillouttime.zaiko.io/

MUGAMICHILDREN 2 リリースツアー

MUGAMICHILL are
ナスノミツル (electric bass & devices)
中村弘二 (electric guitar & samples)
中村達也 (drums, percussions & madness)

2020年11月12日(木)名古屋 得三
open 18:30 / start 19:30
adv ¥5000 / door ¥5500(50名限定・要予約)
※配信予定あり。後日発表いたします。
https://bit.ly/36WNg7C
予約:
http://www.tokuzo.com/schedule/2020/11/12/

2020年11月13日(金)和歌山 LIVE SPACE MOMENTS
open 18:30 / start 19:00
adv ¥5000 / door ¥5500(+1d)(50名限定)
https://bit.ly/3lAqbLL
LIVE SPACE MOMENTS
https://moments-wakayama.tumblr.com/

2020年11月14日(土)京都 磔磔
open 18:00 / start 18:30
adv ¥5000 / door ¥5500 / 配信チケット ¥2500~
https://bit.ly/34MbvCG
配信チケット:
https://eplus.jp/mgmcl1114/
磔磔
http://www.geisya.or.jp/%7etakutaku/future/sonoato.htm

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